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専門家コラム:お伽の国、日本からの旅立ち

第6回 海外事業、わたる世界は鬼ばかり

企業はなぜ海外へ?

どうして企業は、わざわざ遠い外国に行って、苦労しながら事業を運営するのでしょうか?海外で事業を行いたいという、憧れでしょうか?

いえいえ、企業が憧れだけで多額の投資をして、必死の努力をすることなどあり得ませんよね。企業の海外進出には、とても切実な理由があります。

日本企業が海外進出を決意したり、海外事業所の拡大、外国企業との提携・合併・買収などをしたりする動機は、大まかに次の三つが多いと言われています。

  1. 得意先・親会社からの強い要請(効率化、コストダウン)
  2. 新しい市場への参入(経営体質の強化、売り上げの維持・拡大)
  3. 安い労働力の活用(国際的な価格競争力の維持)

お気付きのように、「なぜ海外へ?」と問われたら、それは「生き残るため」なのです。

危険な高揚感

企業は生き残りを賭けて海外に出て行くのですが、海外進出・拡大を決意した瞬間から、広い世界への挑戦という不思議な高揚感が生まれます。
海外進出プロジェクトに携わる経営者や担当者は、得体の知れない「不安感」で心穏やかではありませんが、一方で「会社にとって特別な仕事への使命感」と「未来への期待感」に胸が躍るのです。

「海外事業」は私たち日本人にとって、憧れを感じさせる魅力的な言葉です。しかし、荒海に乗り出していく高揚感は新規ビジネス開拓の強いけん引力になる反面、危機管理上の「心のスキ」をつくってしまう場合があります。

当たって砕けろ!は会社を滅ぼす

企業が日本国内で新規事業を立ち上げる際、事業所の立地、市場の状況、新規の取引先の信用度などを慎重に調査・検討します。条件が整わない場合や、リスクが高いと思われる場合には、プロジェクトを断念することさえあります。

ところが、海外進出については、いろいろ調べた挙げ句………
「とにかく出て行こう!悩んでいても仕方ない、当たって砕けろだ!細かいことは行ってから考えよう!みんな腹を括ろうよ!」
と、まるでギャンブラーのような企業が多々あることに驚きを感じます。

「当たって砕けろ!」は、成功を前提にした根拠のない夢物語です。
ビジネスにはリスクは付き物ですが、「腹の括り方」を間違ったら現地の悪徳コンサルタントや仲介者に資金を詐取されたり、提携先が経営不振を隠していて直ぐに倒産してしまったり、買収先企業の不正が発覚してスキャンダルになったりなど、国内事業すら揺るがすような事態になる場合があります。

海外には悪意を持った敵が日本より多く存在し、日本企業の海外進出は、現地の事情に疎い、「資金」というネギを背負ったカモに見えているということを絶対に忘れてはいけません。

まさに、海外に進出するときには「わたる世界は鬼ばかり」がキーワードです。

話し手はいつも「イメージ」を語る

海外進出時のトラブルは、事前調査の段階で既に始まっている場合があります。

現地調査をする際、「お伽の国」出身の私たちは、現地の事情に詳しいとされる人たちの言葉を、鵜呑みにする傾向があります。
しかし、現地に詳しいと言っても、「すべてを知っているわけではない」という前提に立って、注意深く話を聴く必要があります。
なぜなら話し手は、知らない部分を想像力で補完しながら「確か、そうだったと思う」という「イメージ」を語っている場合があるからです。

また、海外の提携予定先企業・買収予定先企業などの交渉担当者は、日本企業に自社の長所を伝えようと努力します。しかし、少しでも自分たちに有利な条件を導き出そうとして、実態と乖離した「良いイメージ」を語っている場合も想定しておかなければなりません。
なぜなら、「相手の日本人だって、都合の悪いことは言わないはずだから、自分たちも正直にすべてを話す必要はない」、という前提に立っている可能性を排除できないからです。

相手が語る「イメージ」は、「実態」とは無関係である可能性を想定しておかなければ、「間違い」「作り話」「隠し事」を感知することができません。

だまされないための思考回路

海外進出では、次のように「希望的観測」を可能な限り排除して、だまされないように物事を考える習慣を付けておく必要があります。

「提携先の工場は、適切に運営されていますよ」と現地の仲介役の人に言われたら、
「この人は、その工場に行ったことがあるのか?何を見て、適切だと言ったのか?」と疑問を持つべきです。

「提携先企業はコンプライアンスに力を入れていますから、大丈夫ですよ」と現地の弁護士に言われたら、「だからといって不正を行っていないという根拠にはならない」と疑います。

「先方の社長さんは、良い人で信頼できますよ」と現地のコンサルタントが言ったら、「この人は社長さんと、どの程度のお付き合いをして信頼できると言っているのか?」と考えて、社長さんとの関係を観察します。

「提携交渉先のA社は、かなり乗り気だと言っています」と部下の報告を聞いたら、「A社のどういう立場の人が、どういう場で、そう言ったのか?」と問い返します。

誰かが何かを言ったら、それが「聞こえの良い、なんとなくのイメージ」なのか「根拠のある事実の説明」なのかを、「誰も信用せず」、もう一歩踏み込んで考える思考回路と、可能な限り「現認」する用心深さが、海外事業では必要不可欠です。

しかし、どんなに慎重に調査・分析したとしても、完全に正しい情報を手に入れて判断することは不可能と言えます。
「情報は常に不完全である」という前提に立って、想定されるリスクへの対応をあらかじめ検討したうえで、「正しく腹を括る」ことが非常に重要なのです。

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※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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