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株式会社 日立システムズ

専門家コラム:お伽の国、日本からの旅立ち

第4回 突然、暴れだす従業員

「あなたも交渉の場に出てください!」

随分前になりますが、知り合いのSさんから海外駐在時の苦労話をお聞きする機会がありました。Sさんは、欧州のある国の工場責任者として駐在されていました。

Sさんの工場は、生産量が落ち込んでいました。さまざまな対策を打ちましたが効果が上がらず、止むを得ず給与体系の変更を決定しました。 
技術畑出身のSさんは労務管理の経験がなく、労使交渉が難航したそうです。とうとう苛立(いらだ)った数人の過激な組合員が従業員を扇動し、ストライキが発生しました。

Sさん「一部の過激な従業員が激高していて恐怖を感じた。正直なところ、話し合いの場には出たくなかった。ローカルの人事部長が私のところにきて、交渉の場に出てください!あなたが出ないともっと酷いことになります!と喝を入れてくれたので、腹が据わって対応できた。私は今も、人事部長に感謝している」

幸いにも、Sさんは粘り強く交渉し、騒ぎが徐々に収まって妥結することができました。

「あなたは、出てこないでください!」

 別の事例で、知り合いのTさんの話を紹介します。Tさんは、ある会社の中国工場に管理部門責任者として駐在した経験があります。

Tさんが駐在していた頃から、中国での人件費の高騰が問題になっていました。近隣の日系企業の工場で、散発的にストライキが発生しているという情報はありましたが、自社に影響が出るには、もう少し時間がかかると予想していました。

Tさん「ある日突然、給与のベースアップを要求して従業員のサボタージュが発生した。想定より早く影響が出たので、狼狽(ろうばい)した。私は人事屋だから労務管理には自信があったが、日本での経験が役に立たない場合があることを思い知ったよ」

実際のサボタージュの現場は、かなり緊迫した状況だったそうです。

Tさん「すぐに職場に戻るよう従業員を説得するために集会の場へ行こうとしたら、ローカルの人事部長と5~6人の部下たちに、とても危険だから出てこないでください!と制止された。
でも、私がやらねば誰がやる!と思って出て行った。ローカルの部下たちが体を張って私をガードしてくれた。私の説明が一とおり終わると、人事部長が必死で通訳しながら従業員を説得してくれた。彼がいなかったら、どうなっていたか分からないよ」

その後、Tさんはローカルの人事部長を中心に交渉を行い、労働争議は妥結しました。

キーマンは「ローカルの人事部長」

SさんTさんの事例は、国・地域・状況によって労働争議への適切な対応方法が違っているということを示唆しています。
海外事業所での労働争議は、対応を間違うと暴力行為に発展する場合があるので、駐在員が前面に「出る」・「出ない」の判断は非常に難しいと感じます。
また、海外事業所での深刻な労働争議は、「撤退」を視野に入れざるを得ない場合もあります。

海外に進出する企業には、「金のわらじ」を履いてでも経験豊かなローカルの人事部長を探すことを強くお勧めします。優秀な人事部長を高額な給与で雇っても、決して損はしません。彼らは現地従業員の対応に精通している場合が多く、有益なアドバイスをしてくれると思います。

「異文化理解」は重要な経営ツール

事業所内外の現状に大きな変化があると、「従業員の心」が波立ち、扇動されやすい状態になります。
たとえ経験豊かな駐在員でも、人の心は目に見えないため、「トラブルの予兆」を察知することは非常に難しいのです。

私たちは、国によって人の質が異なっていると思いがちですが、世界の人々の本質は、みな一緒なのです。
違っているのは、「どの感情」が「何に」反応するかということです。「反応」とは、その国の歴史、宗教、伝統、文化、社会環境などによって培われた「生きるための信念(考え方)」の表現と言えるかもしれません。

赴任前に書籍や研修などで現地労働者の一般的な特長を知ることはできますが、忘れてならないのは「現認」です。
着任したらすぐに、「ここで働いているのは、どういう信念(考え方)を持った人たちか?」という視点で従業員を注意深く観察し、理解することが必要です。
そのことによって、従業員のネガティブな「反応」を引き起こす外的・内的環境変化を敏感に察知し、最悪の事態を回避する対策を講じることが可能になります。

海外危機管理上の「異文化理解」は、「現地の人たちと仲良くする」というだけではなく、事業運営上のリスクを事前に察知する触覚を持つという意味で、非常に重要なのです。

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※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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