オンライン会議やチャットでのやり取りは、発言者の何気ないひと言で、意図せず相手を傷つけてしまうことがあります。勤務中とはいえ、画面越しの相手から「今まで何をしていたの?」と聞かれれば、<大きなお世話だ>と心の中で思ってしまうこともあるでしょう。ですが、ローコンテクスト文化の中で生きていると意識すれば、むしろコミュニケーションは分かりやすいものになるはずです。先の質問に対しても、「どういう意味ですか?」と聞く、あるいは文字通り受け取って、「AとBの作業をしていました」と答える。これらが当然のことのようになれば、ミスコミュニケーション(誤解)は起こらないと考えます。
しかしながら、最初は<空気を読めない人>と思われてしまうかもしれません。そこで、普段からコミュニケーションの中で感情を言語化することを、お勧めします。「一緒に仕事ができてうれしいです」、「その言われ方は嫌いです」、「こんなことになって悲しいです」、「この感覚、好きです」。感情はその人の価値観が表面化したものに、ほかなりません。価値観の多様性を知るために、まずは自分の価値観を、きちんと伝えることから始める。<空気を読み取って>黙り込んでしまうのではなく、お互いが違いに気づき受け容れられるようになれば、信頼関係は自然と積み上がっていきます。
企業にとっても、社員は全員違う価値観を持っている、という前提に立って組織を運営していく必要があります。「言わなくても分かるだろう」は通用しない世界で、「言わずもがな」という考えは混乱を招きます。その意味で、テレワークで発展したIT技術の活用には、ルール作りが欠かせません。誰がどのパートに責任を持つのか、どのツールを何の目的で、どのタイミングで使うのか。これらを明確にすることで、あいまいさは排除されミスコミュニケーションは減り、より高いレベルで集団の目標は達成されるでしょう。
ニューノーマルは言わなくても分かるというハイコンテクスト文化から、伝えなければ理解されないというローコンテクスト文化への変革を意味していました。そのために、コミュニケーションには多様性と受容性をもって接することが重要とお伝えしました。それは必然的に個人の自立を促します。
自立した人間同士によるニューノーマル時代のコミュニケーションは、今までに無かった新しい文化を形成する可能性を秘めています。例えば、見たこともない新しいサービスやシステムによって、微笑むだけで通じあい、数時間かかっていた仕事を一瞬で完成させるような世界が来るかもしれません。その日に向けて私たちが今すべきことは、課せられた変化をしっかりと受け止めて、自立を心がけることでしょう。
[高田 敬久 記]
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