ニューノーマル時代のコミュニケーションのあり方を問う前に、そもそもコミュニケーションとは何なのかについて、考えたいと思います。
集団が同一の目標達成へ向かう際に必要な行為のうち、個々のスキルとは別に構成員同士の情報共有と意思疎通ほど重要なものはありません。生きるために獲物を狩らなければならなかった集団が、言語非言語を問わず同じ目標に対して一つにならなければ、それは死を意味します。情報を共有し意思をすり合わせる行為、COM=「ともに」とUNI=「一つの」に接尾語のATE=「~にする」を合わせたものが、コミュニケーションという言葉の所以です。
コミュニケーションとは、集団がある一つの目標に向かい何かを成し遂げようとするとき、個々の成果ではなく、全体のパフォーマンスを最大化するために必要不可欠な情報共有と意思疎通そのものと言えるでしょう。
では、テレワークを主流としたニューノーマル時代における情報共有と意思疎通は、どのように行われているのでしょうか。前回ご紹介したように、進化し続ける技術のおかげで、直接会わずとも電話やメール、動画などにより綿密な情報共有が可能になりました。その質と量はひと昔前には考えられなかったほど拡大し、その情報の取扱いも検索ツールの充実により会社で仕事をする場合に比べて遜色ないものになっています。
一方、目標達成に向けた意思疎通はどうでしょうか。この点は集団を家族に例えてみると、分かりやすいかもしれません。家族は原則として利益を追求しないので、目標は<仲良く幸せに暮らす>などといった漠然としたものになります。この時、意思疎通において最も重要なのは信頼関係です。家族のような根源的な集団では、信頼関係は生活の中で自然に育まれていきますが、企業のような利益や生産性を追求する集団の中では意識的に構築しなければなりません。後ろ手にナイフを隠しているかもしれない相手と目標達成に向けて行動をともにすることがいかに難しいかは、想像に難くないでしょう。
私たち人間は、信頼関係に基づかなければ、正しく意思疎通を図れません。しかしながら、現在のようにコロナ禍で対面が難しい場合、信頼関係を構築するにはどのようにしていけばよいでしょうか。次回はその信頼関係構築におけるテレワークの課題とその影響について、検討していきます。
[高田 敬久 記]
関連サイト
※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。
日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。