事業のグローバル展開の加速に伴い、多くの日本企業では海外出張が急増している。しかし一方で、海外出張にまつわる事務作業が 肥大化し、総務や経理といった管理部門の負担が大きくなっているのだという。それを解決する手段はあるのだろうか……?
ビジネスのグローバル化は、日本のあらゆる産業で当たり前のようになっている。しかもそれは大企業にとどまらず、中堅・中小企業であっ ても変わらない。
年々増加する海外出張に伴い増え続ける事務作業。紙ベースのはん雑な稟議(りんぎ)フローをシステム化し、データ集約による一元管理に することで、ミスの防止や業務効率化に加え、生産性の向上にもつながることをご存じだろうか。海外出張に関する総務・人事・経理の業務をビジネスの戦略に生かす新たな ソリューションについて、日立システムズとエイチ・アイ・エス(H.I.S.)に話を聞いた。
総務をはじめとする管理部門にとって、社員の海外出張に関わる業務の課題が出張旅費の「コスト管理」と「危機管理」の2点だ。
出張におけるコスト増大の原因は2つ考えられる。1つは業務の進め方だ。今やITにより多くの業務が効率化され、ワークフローを一元化 する傾向にあるにも関わらず、なぜか出張業務だけはシステム化されていない企業が多い。
エイチ・アイ・エス(H.I.S.) 関東法人団体専門店事業部 法人営業グループ 営業企画リーダーの菊地英二郎氏
「海外出張に関しては、大手企業でもいまだに紙ベースの書類などでワークフローを回しているところが多数派です。しかも、海外出張 ともなると社長決裁を必要とするケースも少なくありません。そのため、申請から承認、出張後の精算に至るまで、膨大な時間と手間がかかり、コスト増大につながっている わけです」と、エイチ・アイ・エス(H.I.S.) 関東法人団体専門店事業部 法人営業グループ 営業企画リーダーの菊地英二郎氏は説明する。
出張コストに大きく影響が出ているのが、航空券の手配だ。航空券の料金は、手配したタイミングが出発日に近ければ近いほど料金は高 くなる傾向が強い。しかし、企業によっては社員が出張を申請してから稟議が下りるまでに数週間、場合によっては1カ月以上かかってしまう。その結果、当然、出発間際の 手配となり、安く購入できる機会をみすみす逃しているわけだ。
出張コスト増大のもう1つの原因は、「エアラインの固定化」である。海外出張に慣れてくると、「マイルを貯めたい」といった出張者 の都合や嗜好で、価格を鑑みずに同じ航空会社を選択して購入するケースが多い。
「エアラインの固定化」が防げないのは、多くの場合、ワークフローがシステム化されていないことから会社側がチケット調達の管理が できず、出張者個人で自由に購入し立て替え精算できてしまうからだ。
「こうした状況は単にコストの問題だけにとどまらず、不正の温床になる場合もあり、コンプライアンス的にも避けるべきなのです」( 菊地氏)
日立システムズ 産業・流通営業統括本部 第一営業本部 第一営業部 第一グループ 主任の安西智美氏
会社側でチケット調達の一元管理ができていないと、ほかにどういうことが起きるか。「エアラインの固定化」の話だけにとどまらず、 会社側では社員の細かな行動把握ができないため、出張先での安否確認、状況確認などにも支障をきたす。仮に出張者の情報を求められても、旅行社側は行程表など個人情報 に関わるものを第三者に提供できないからだ。
日立システムズ 産業・流通営業統括本部 第一営業本部 第一営業部 第一グループ 主任の安西智美氏は「出張先でテロなどの大きなト ラブルに巻き込まれた場合、システム化してあるケースとそうでないケースでは、危機管理に大きな差が出ます。例えば、個人でエアラインのチケットやホテルの予約を立て 替え払いしていた出張者が、出張中にトラブルに巻き込まれ、会社が旅行会社に安否確認をしようとしても、“個人情報だから教えられない”と断られたケースがあります」 と指摘する。
海外出張に関する課題を解決するために、日立システムズとエイチ・アイ・エスが着目したのがBTM(Business Travel Management)という 考え方である。これは、航空券手配など出張に関する業務を一元化・包括化することで、出張を戦略的な業務としてビジネスに生かしていこうというもの。欧米企業ではもは や当たり前のように実践されていて、日本でも先進的な企業では、人事などの管理部門が中心となり積極的に取り入れているという。
このBTMを行う上で不可欠なのが、出張業務のシステム化とデータの一元管理である。「BTMを検討するなら、紙ベースを撤廃してデータで出 張業務を管理し、全社でシステム化していく必要があります。将来的には可視化されたデータを分析し、ビジネスに生かすというメリットも考えられます」と、菊地氏は力を 込める。
コスト削減、効率化、そしてコンプライアンス強化を図り、海外出張業務を戦略的にマネジメントしていくために有効なのが、日立システム ズの経費を総合的に管理できるシステム「Traveler's WAN」とエイチ・アイ・エスの海外旅行手配のノウハウをコラボレーションしたソリューションだ。BTMで担う「出張手 配、発券」と「経費管理」は異なる性質を持つ業務だが、それぞれを得意とするサービス企業2社がコラボレーションしたものだ。
システム連携図
*SSO:シングルサインオン(Single Sign-On、略称:SSO)は、一度のユーザー認証処理によって独立した複数のソフトウェアシステム上のリソースが利用可能
になる特性。これによりユーザーは、システムごとにユーザーIDとパスワードの組の入力が不要になる
「Traveler's WAN」には“発生源入力”というコンセプトがある。これは、「会計上での取引(業務)が発生した時点でデータを入力して いく」というもので、Traveler's WANでは、それを実現するため請求データの自動連携など、さまざまな機能を備えている。
日立システムズ 産業・流通営業統括本部 第一営業本部 第一営業部 第一グループ 主任の鈴木孝輔氏
日立システムズ 産業・流通営業統括本部 第一営業本部 第一営業部 第一グループ 主任の鈴木孝輔氏は「現状の中堅企業は主管部署が バラバラで、システムが連動していない状況が多い。これではチェック工数も増えるばかりです。出張にまつわる業務がはん雑化しやすいのは、出張者本人に加え、上長、管 理部門、経営層、さらに外部の旅行会社といった具合に関係者が多いことが一因です。これを一元化するには、取引(業務)が発生した時点でデータ入力をしていくことが重 要になります」と解説する。
Traveler's WANは、オンライン上から定型フォーマットで簡単に一括入力できる機能を備えている。これにより、出張者はいつでもどこ からでも申請ができ、申請を受けた上長や管理部門も同様に承認作業を迅速化できて、航空券の間際手配を防ぐことが可能になる。出張中の経費もその場で入力、申請でき、 出張者の作業負担も減る。ワークフローが迅速になり、業務全体の効率化が進むことで、コスト削減も実現できるというわけだ。
さらに、紙で起票する必要がなくなるので、稟議書の紛失といったミスも軽減できる。データ入力によりワークフローが一元化されれば 、「エアラインの固定化」や架空出張などの不正が入り込む余地も少なくなるだろう。
また、Traveler's WANは外部システムとの連携も可能なため、例えば、カード会社のシステムや乗換案内サービスなどと接続すれば、よ り効率的に出張業務を進めることができます」と鈴木氏。出張業務が紙ベースからデータによる一元管理へとシステム化されることで、出張者、管理部門、経営層の三者にそ れぞれ大きな効果がもたらされることが分かる。
海外出張業務をデータ集約するメリットは、リスク管理という面でも有効だ。「安否確認などの情報を吸い上げるためには、データとして 集約されていた方が有利です。申請から渡航データまで一括管理していれば、グローバルネットワークを持っているエイチ・アイ・エスが迅速に安否確認し情報提供すること が可能です」と、菊池氏は語る。
出張にまつわるデータを集約しておくことの重要性は、さまざまな面で大きいのだ。将来的には、可視化されたデータを分析しビジネスに 生かすというメリットも考えられる。
「日本企業には出張申請と経費精算を結び付けるという発想自体がそもそもありませんでした。エイチ・アイ・エスとしてはそれを何とか変 えたいと思ってきました。そこでスピーディーにコミュニケーションできる国内の大手ITサービス企業・日立システムズと組んで、日本企業の商慣習を配慮し、出張を一から ワンストップで手配可能な業務システムを作り上げました」と菊地氏は振り返る。
相見積もり、日当、立て替え払いなど日本企業の出張業務には独自の慣習が少なくないが、そうした事情にも詳しい国内企業のシステムだか らこそ、実現したソリューションだといえる。「さらに日立システムズでは、BPOによってチェック業務を請け負うことも可能です」と安西氏は話す。これまで煩わされた出 張業務などから解放されることの効果は計りしれない。
海外出張をビジネスの戦略に生かしていく、企業全体のコスト最適化を考えられる立場の総務が、従業員の業務全体を改革していく。その最 初の一歩を踏み出すためにも、Traveler's WANを活用したソリューションの検討から始めてみてはいかがだろうか。
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