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経理部門におけるRPAの効果を出すポイント_②導入効果を出す成功のポイント

経理部門におけるRPAの効果を出すポイント_②導入効果を出す成功のポイント

前稿では、RPAの導入を行ったものの、組織・業務・メンバースキル等の要因により工数削減や業務の標準化等の当初想定した効果が得られない要因について説明した。本稿では、それらを踏まえ、導入の効果を出す成功のポイントについて解説する。

RPA導入後に効果を出す成功のポイント

経理部門の生産性を向上させるためのポイントとして、RPA化の業務選定、シナリオ作成方法、組織体制やガバナンスルール、導入後のメンテナンスについてあげられる。

(1)RPA化推進体制

企業のRPA化をどの部署が推進していくかは、スピードとガバナンス面で考慮が必要となってくる。
実際に実務を行っている業務部門が主導するか、情報システム部門が主導するか、大きくは2つのパターンが考えられる。現場部門が主導する場合、導入のスピードが速くなることに加えて、本番運用後にRPAがエラーにより止まった場合であってもエラーの原因の特定が早く行える傾向にある。
一方、情報システム部門が主導した場合、既存のシステム開発ルールを適用できることからガバナンスの観点から望ましいが、社内手続きが多くなり推進スピードが落ちる傾向にある。どちらもメリット・デメリットが存在しているが、RPAの業務削減効果という観点からすると導入当初は業務部門が主体的にRPA化のプロセスに関与する方が早期に効果を出しているケースが多い。

(2)対象業務の選定

RPAによる効果を出そうとした場合、対象業務の選定がネックになる場合がある。
対象業務を選定する場合、単純で大量の処理のものを優先的に選定することが、経理業務の場合、単純かつ大量の処理というものは多くないため、RPA化対象業務の数が多くなければ効果が出しづらいという特徴がある。そのため、業務の標準化を前提とするような現状業務のままでRPA化が困難な業務を選定したり、週次や月次の業務のように毎日発生しない業務についても選定したりすることとなる。
特に、業務選定段階で対象業務があがらない例として、業務選定者が現状業務のままRPA化することを想定してしまい、当該業務のRPA化をあきらめてしまうケースが多い。紙の情報をデータで入手するようにしたり、データ入手のタイミングに締めを設けたり、ワークフローに追加で必要情報を持たせたりと業務改善の内容は様々であるが、業務標準化のための改善実行が伴うケースが多い。プロジェクト当初は削減効果だけにこだわらず、効果は少なくとも業務改善の要素の少ない業務のRPA化を多く実施、その後業務改善が必要な業務に取り組んでいくと、成果につながりやすい傾向がある。

(3)シナリオ作成方法

RPA本番運用後のエラーの少なさやエラー発生から復旧までの早さはRPAの効果を図るうえで重要な要素と考えられる。条件の分岐によって結果が変わるような複雑なシナリオを作成すると本番運用後にエラーを発生しやすくしたり、エラー発生後の問題の特定に時間がかかったりするケースが多くなる。
そのため、シナリオは業務フローの中で短く分割し機能を極力シンプルにすることが望ましい。

(4)処理結果のチェック体制

RPAが安定稼働に乗り、エラーが減ってきた場合であってもシナリオ作成時には想定していなかった取引やデータが発生すると、エラーが発生せずに誤った処理が行われる場合がある。
エラーが発生してRPAがストップすれば、誤った処理が行われずにその後の対処を行うことができるが、誤った処理がエラーでストップしないと誤った処理がそのまま実行されることになるため、業務上のリスクにつながる。これが経理業務の重要な処理にRPAが組み込まれている場合、誤った処理につながることになり、このような事態への対処も重要である。そのためには、RPAの処理結果を分析的にチェックするような仕組みが必要である。

(5)J-SOXへの対応

最近は、RPAが経理部門にも導入され始めたことにより、ユーザー部門でのシナリオ作成も一般化されつつある。これに伴い、既存のIT全般統制の枠組みではコントロールできないような処理も増えつつある。具体的には、ユーザー部門でのシナリオ作成が進んでくると、シナリオのドキュメント化、シナリオテスト、権限設定等のセキュリティ、エラー発生後の対処と履歴管理等をユーザー部門で実施することが必要となってくる。
一方、あまりにルールを厳格化しすぎるとRPAのシナリオ作成のスピードが鈍化し、使い勝手が悪くなってしまい、RPAのメリットが生かされないこととなる。そのため、J-SOXの枠組みに入れるべきキーコントロールをどうのように設定するか、ユーザー部門での統制のルールをどれほど実用的に設定するかが重要になってくる。経理業務でRPAを使用する場合には、対象とする業務をJ-SOXの範囲に含めるべきか否かを内部監査部門や会計監査人と事前に協議することも重要となってくるため、留意が必要である。

(6)シナリオ作成及びメンテナンスの内製化

シナリオ作成を外部のコンサルタントを利用して外注化するケースが、企業内にRPAに関するノウハウや知見がない導入初期段階には多く見られる。しかしながら、シナリオ作成をすべて外部のコンサルタントに委託することは、運用後のメンテナンスとコストの観点から望ましくない。
本番運用後に業務部門がRPAの操作を開始し、エラーが発生した場合、その都度外部のコンサルタントへの問い合わせが必要となり、本番運用後にも外部コストがかかってしまうことになる。結果として、これらのシナリオ作成をすべて外部に委託すると開発コストが大きくなり、投資対効果が見合わなくなることが多い。そのため、RPAの導入初期にノウハウを社内にためるために外部のコンサルタントを活用することは非常に有効だが、その後のシナリオを作っていく過程では業務部門が積極的に関与することが必要と考えられる。

(7)内製化にあたっての教育

シナリオ作成及びメンテナンスを内製化しようとした場合、RPA化の教育が必要となってくる。
これは一般的に開催されている研修やRPAメーカー主催の資格などを活用することが考えられる。また、一般知識を習得した後に、実際に自部門の業務をRPA化するなど実践をとおして学習することが必要なり、習熟には一定程度の時間が必要になってくる。そのため、定常業務を一部削減するための対応が一時的に必要になってくることがある。成果を出している企業の特徴をみると、内製のための教育コストをかけることと、社内業務改善としてRPA化の時間を業務として与えることにより担当者の習熟度の向上を図っていることが多い。

まとめ

全2回で経理部門におけるRPA化の現状から成功のポイントについて解説したが、人員や経理部門に求められる役割の変化、デジタル技術の発達などに対応するためRPAのみならず常に業務の見直しや新しい技術の発達を検討してもらいたいと考える。

筆者のご紹介

舟山 真登(ふなやま まさと)氏

グローウィン・パートナーズ株式会社
コーポレートイノベーション部 部長
舟山 真登(ふなやま まさと) 公認会計士

2005年 監査法人トーマツ入所。東証一部上場企業をはじめ、幅広い業種・規模の企業に対する法定監査業務、内部統制監査制度の導入支援業務、IFRS導入支援業務に従事。
2015年 当社入社。上場企業グループの経理BPR、経理業務アウトソーシング体制の構築、経理業務のRPAによる自動化等の各種プロジェクトのプロジェクトマネージャーを多数担当。
2017年 コーポレートイノベーション部 部長。Accounting Tech®Solution事業を推進し、上場企業向けに、財務経理部門の働き方改革の支援、PMI(Post Merger Integration)プロジェクトの支援、経理BPOサービスなど、多くの案件を手がけるほか、専門誌の執筆やセミナー講師を多数実施。

企業概要(グローウィン・パートナーズ株式会社)

https://www.growin.jp/

「プロの経営参謀」としてクライアントを成長(Growth)と成功(win)に導くために、①上場企業のクライアントを中心に設立以来400件以上のM&Aサポート実績を誇るフィナンシャル・アドバイザリー事業、②「会計ナレッジ」・「経理プロセスノウハウ」・「経営分析力」に「ITソリューション」を掛け合わせた業務プロセスコンサルティングを提供するAccounting Tech® Solution事業、③ベンチャーキャピタル事業の3つの事業を展開している。
大手コンサルファーム出身者、上場企業の財務経理経験者、大手監査法人出身の公認会計士を中心としたプロフェッショナル集団であり、多くの実績とノウハウに基づきクライアントの経営課題に挑んでいる。

※コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。
※本コラムは、2019年12月4日に掲載されたものです。

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