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領収書・請求書電子化のメリットと導入ステップ_②電子化にあたっての検討ステップ

領収書・請求書電子化のメリットと導入ステップ_②電子化にあたっての検討ステップ

前回のコラムでは、領収書・請求書の電子化にあたっての動向と企業の具体的なメリットについて解説したが、本コラムでは具体的に検討のためのステップについて解説する。

1.導入のためのステップ

1.領収書・請求書電子化の要件

領収書・請求書電子化にあたっては、主に「業務プロセスの見直し」、「規程の見直し」、「システム対応」、「申請書類の準備」が必要となる。これらの準備にも数ヶ月を要することも多く、そのうえで、電子化を開始したい日の3ヶ月前までに申請書類を所轄税務署長等へ提出することが必要である。

2.業務フローの見直し

電子帳簿保存法に対応するためには、国税関係書類の「真実性の確保」、「可視性の確保」の観点から電子化のための期間的ルールやタイムスタンプの要件など業務フローの変更が必要になる。業務フロー見直しにあたっては、電子化の方法、承認フロー、定期検査をどのように行うかが重要な検討ポイントとなってくる。

(1)電子化の方法(入力方法)

従来、領収書や請求書を受領してから所定のワークフローに従って上長の承認を得て経理や財務に送られ、その後支払い承認に回るというのが典型的なフローの一つである。
領収書・請求書の電子化を行う場合、書類を受領後、書類をスキャナで読み込み、原則としてスキャンデータと原本を確認し、タイムスタンプを付与するという一連の手順が必要となってくる。その際に特に注意が必要なのが、書類を受領してから入力までのタイミングであり、業務フローを構築するうえで重要な検討事項となってくる。書類を受領後3日以内に本人が入力する「特に速やか方式」、書類受領後最大1ヶ月+1週間以内に本人または代理人が入力する「業務処理サイクル方式」が現実的に選択しうる入力方式であり、それぞれの要件を考慮しながら業務フローを構築する必要がある。

(2)承認フロー

「業務処理サイクル方式」を採用した場合、受領者本人による読み取り後、スキャナした本人と別の担当者が画像データと紙の証憑が同一であることをチェックすることが必要となる。これは、領収書・請求書の改ざん防止の観点からの要請であり、既存の業務フローから変更が発生する典型的な論点である。

(3)定期検査

スキャナ保存を行い、一定期間紙書類の保存を行った後、定期検査終了後、入力に問題ないことが確認された紙書類が廃棄可能となる。定期検査の実施頻度は最低限、年に一度実施が必要であり、サンプル抽出による方法により月次、四半期単位で定期検査を行うこととなる。

3.システム選定

(1)スキャナ機器の必要性

電子帳簿保存法に対応するには、受け取った紙書類をスキャナにより電子データ化するため、一定の法令要件を満たすスキャナ機器が必要になってくる。スキャナ機器として、一定以上の解像度の複合機に加えて、平成28年度の改正によりスキャナ機器としてスマートフォンやデジタルカメラの使用も可能となったため、スキャナ機器に関する選択肢は大きく増えている。

(2)電子化後の保存システム

電子化された証憑の保存について、後の税務調査の際に検索が容易にできるようにするという観点から「可視性の確保」が求められているため、国税関係帳簿(会計上の仕訳データ)との関連付けができること、取引年月日や取引金額、取引先名称等により検索機能があること、データの訂正・履歴の保存が可能であること等が要件として求められている。
これらのスキャナ機器や文書保存のシステムが法的要件を充足するかを審査する機関として、公益社団法人日本文書マネジメント協会(JIIMA)がこれらスキャナ保存ソフトウェアの審査を行っているため、システム選定時に法的要件を満たしているかの検討の際に参考にされたい。

4.規程の作成・変更

領収書・請求書の電子化を行う場合、①取引の承認、記録、資産の管理に関して、相互けん制が機能する体制であること(相互牽制)、②事務処理手続きの定期的な検査を行う仕組みを有すること(定期検査)、③検査等を通じて問題が把握された場合、再発防止の体制や手続きの見直しを行なうこと(改善体制)を要素とする適正事務処理要件に従った業務フロー構築が必要となる。これらの内容を「適正事務処理規程」として社内文書に落とし込む必要がある。これに加えて、入力方式やタイムスタンプ付与の方法、スキャン機器のスペック、原本の廃棄ルール等についてもスキャナによる電子化保存規程等の名称で社内規程として設置しておく必要がある。

5.承認申請

領収書・請求書の電子化の申請は、電子化を開始する日の3ヶ月前までに承認を受けようとする国税関係書類の種類を記載した承認申請書に添付書類を添付し、納税地等の所轄の税務署長等に提出することが必要である。申請書の審査は書面による審査で行われ、押印漏れや記載事項の誤り、添付書類の不備、追加の質問がある場合には所轄の税務署等から提出者に対して問い合わせがある場合がある。
書面審査が終了し問題がない場合でも、承認通知書の発送は行わないみなし承認制度により運用されている。そのため、承認申請書を提出した後、3ヶ月を経過するまで却下の処分がなかった場合には、その承認があったものとみなすこととされている。

2.電子化にあたってまとめ

社内文書の電子化に取り組む動機は様々であるが、人手不足を背景にした働き方改革の流れやコスト削減などの目的に合致するような範囲とスケジュールで電子化に取り組んでもらいたい。そのため、電子化のための当初の目的設定・予算や適切スケジュールを設定しながら全社に展開していくことを考え、請求書・領収書のみならず、企業の紙書類全体のペーパレス化も視野に入れながら取り組むことで大きなメリットがでるものと考える。

筆者のご紹介

舟山 真登(ふなやま まさと)氏

グローウィン・パートナーズ株式会社
コーポレートイノベーション部 部長
舟山 真登(ふなやま まさと) 公認会計士

2005年 監査法人トーマツ入所。東証一部上場企業をはじめ、幅広い業種・規模の企業に対する法定監査業務、内部統制監査制度の導入支援業務、IFRS導入支援業務に従事。
2015年 当社入社。上場企業グループの経理BPR、経理業務アウトソーシング体制の構築、経理業務のRPAによる自動化等の各種プロジェクトのプロジェクトマネージャーを多数担当。
2017年 コーポレートイノベーション部 部長。Accounting Tech®Solution事業を推進し、上場企業向けに、財務経理部門の働き方改革の支援、PMI(Post Merger Integration)プロジェクトの支援、経理BPOサービスなど、多くの案件を手がけるほか、専門誌の執筆やセミナー講師を多数実施。

企業概要(グローウィン・パートナーズ株式会社)

https://www.growin.jp/

「プロの経営参謀」としてクライアントを成長(Growth)と成功(win)に導くために、①上場企業のクライアントを中心に設立以来400件以上のM&Aサポート実績を誇るフィナンシャル・アドバイザリー事業、②「会計ナレッジ」・「経理プロセスノウハウ」・「経営分析力」に「ITソリューション」を掛け合わせた業務プロセスコンサルティングを提供するAccounting Tech® Solution事業、③ベンチャーキャピタル事業の3つの事業を展開している。
大手コンサルファーム出身者、上場企業の財務経理経験者、大手監査法人出身の公認会計士を中心としたプロフェッショナル集団であり、多くの実績とノウハウに基づきクライアントの経営課題に挑んでいる。

※コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。
※本コラムは、2019年08月26日に掲載されたものです。

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