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領収書・請求書電子化のメリットと導入ステップ_①電子化の動向と企業のメリット

領収書・請求書電子化のメリットと導入ステップ_①電子化の動向と企業のメリット

世の中の働き方改革の流れや電子帳簿保存法の要件緩和に伴い、企業が紙での保管が求められる領収書・請求書の電子化がより一層進んでいくことが予想されている。このような背景の中、領収書・請求書電子化における動向と企業におけるメリット、実際の電子化していくにあたってのステップを2回にわたって解説する。

1.領収書・請求書電子化の動向

(1)企業の領収書・請求書等の法令の要件に基づき紙で保管しなければならないとされていた書類の多くが現在は電子データで保管することが可能になっている。仕訳帳や総勘定元帳等の国税関係帳簿、決算書や請求書・領収書等の国税関係書類は原則として7年間の保存が義務付けられている。一方で、平成10年7月以降、電子帳簿保存法が施行され、平成17年に一部の国税関係書類に対してスキャナ保存が認められたことにより、これらの書類の電子化による保存が制度的に可能となった。

(2)電子帳簿保存法が施行されてからスキャナ保存の法的要件が厳格であったこともあり、制度の利用が促進しなかった。しかしながら、平成27年、平成28年の電子帳簿保存法の改正では、大幅な規制緩和が図られ、金額基準の緩和や国税関係書類のスキャナ保存要件の入力機器としてスマートフォンやデジタルカメラが容認され、受領した本人がオフィス以外の場所で電子化することが可能となった。

(3)電子帳簿保存法に基づく電磁的記録による保存等の承認件数のうち、スキャナ保存に係る累計件数は、平成26年の152件から平成29年には1,846件と承認件数自体が大幅に増加しており、導入の検討を行っている企業はこれ以上に増加している。

2.電子帳簿保存法とは

(1)電子帳簿保存法とは、国税に関する帳簿保存に関する負担を軽減する趣旨で創設された制度であり、国税に関する税法の規定において紙を前提として備付け又は保存することが必要とされる帳簿や書類の特例を定めている法律である。帳簿などの取引記録や取引に関する証憑類は税務調査を行うための基本的な文書であるため、国税関係帳簿書類の電子化にあたっては、税務調査が円滑に行えるための要件を定めている。具体的には、偽造防止を担保する「真実性の確保」と税務調査時の検索の容易さや確実性を担保する「可視性の確保」を中心とした要件が設定されている。

3.領収書・請求書電子化のメリット

領収書・請求書の電子化を検討する理由は様々であり、働き方改革の流れで業務を効率化、ワークスタイルの変化に対応すること、コスト削減等の理由が考えられる。いずれの理由であっても電子化の本来の目的を念頭に置きながら検討を進めていただきたい。

(1)電子化による業務効率化

業務の中で全従業員が関与する間接業務として経費精算業務が挙げられるが、従来はワークフロー等による申請後に紙の領収書を台紙に糊付けし、経理に社内便で送付するという流れが典型的な流れであった。現在は、パッケージの経費精算システムを導入することにより、スマートフォンを利用して社外からでも経費精算が行えるようにしている企業が増えている。
経費精算業務については、システム化による効率化に加えて、領収書の電子化を行うことにより、更なる効率化が期待できると考えられる。例えば、これまでは経費精算の都度、紙の原本提出のためにオフィスに戻り、台紙の印刷や原本の糊付け、社内便の郵送などの作業を行う必要があった。これに対し、領収書の電子化により毎月の原本提出ではなく簡易的な原本収集により、経費精算のための事務作業が軽減され、業務の効率化が図られると考えられる。

(2)紙の保管・郵送によるコスト、検索時間の削減

次に紙の領収書や請求書保管のための倉庫料や拠点間の郵送費の削減につながる点である。現状では、国税関係帳簿書類の保存場所、保存期間については納税地に7年間保存することが求められており、取引関係書類についても国内の事業所等での保存が求められている。法律の要件に基づいて紙による帳簿や証憑類の保管が義務付けられているものの、実際は税務調査や会計監査がない限り原本を使用する機会というのは限定的なものと考えられる。
領収書・請求書を電子化することでこのような物理的な紙の保管コストの削減や税務調査や会計監査の際に書類を探すための時間、郵送コスト等の削減が期待される。これは企業規模により、1ヶ月あたりの書類が多ければ多いほどコストメリットを得やすいこととなる。

(3)労働人口減少に伴うワークスタイル変化への対応

近年は労働市場の人手不足を背景にしてオフィスのフリーアドレス化やテレワークなどを進めている企業が多い中、紙書類を電子化することにより柔軟な働き方ができるようにするための取り組みとして電子化を進めるケースがある。これは、企業の紙書類の大きな割合を占める領収書や請求書をペーパレス化することを最初のステップとし、将来的には見積書や納品書、稟議書や契約書についてもペーパレス化を行い、企業全体として紙の書類に縛られない働き方を実現したい企業が取り組んでいる例が挙げられる。

次回は、領収書・請求書電子化のための具体的なステップについて解説する。

筆者のご紹介

舟山 真登(ふなやま まさと)氏

グローウィン・パートナーズ株式会社
コーポレートイノベーション部 部長
舟山 真登(ふなやま まさと) 公認会計士

2005年 監査法人トーマツ入所。東証一部上場企業をはじめ、幅広い業種・規模の企業に対する法定監査業務、内部統制監査制度の導入支援業務、IFRS導入支援業務に従事。
2015年 当社入社。上場企業グループの経理BPR、経理業務アウトソーシング体制の構築、経理業務のRPAによる自動化等の各種プロジェクトのプロジェクトマネージャーを多数担当。
2017年 コーポレートイノベーション部 部長。Accounting Tech®Solution事業を推進し、上場企業向けに、財務経理部門の働き方改革の支援、PMI(Post Merger Integration)プロジェクトの支援、経理BPOサービスなど、多くの案件を手がけるほか、専門誌の執筆やセミナー講師を多数実施。

企業概要(グローウィン・パートナーズ株式会社)

https://www.growin.jp/

「プロの経営参謀」としてクライアントを成長(Growth)と成功(win)に導くために、①上場企業のクライアントを中心に設立以来400件以上のM&Aサポート実績を誇るフィナンシャル・アドバイザリー事業、②「会計ナレッジ」・「経理プロセスノウハウ」・「経営分析力」に「ITソリューション」を掛け合わせた業務プロセスコンサルティングを提供するAccounting Tech® Solution事業、③ベンチャーキャピタル事業の3つの事業を展開している。
大手コンサルファーム出身者、上場企業の財務経理経験者、大手監査法人出身の公認会計士を中心としたプロフェッショナル集団であり、多くの実績とノウハウに基づきクライアントの経営課題に挑んでいる。

※コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。
※本コラムは、2019年08月05日に掲載されたものです。

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