お役立ちコンテンツ 03
講演レポート
株式会社AND CREATE
代表取締役
清水 久三子
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プライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社後、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、新規事業戦略立案・展開、人材育成などのプロジェクトをリード。2005年より、コンサルティング&SI事業部門の人材開発部門リーダーとして5000人のコンサルタント・SEの人材育成リーダーを務める。2013年に独立、執筆、講演、研修を中心に活動し、2015年ダイバーシティ、ワーク・ライフバランスの実現を支援する会社を設立。創造性と生産性を向上させるプログラムを提供している。著作も多数。
ハイスピードでハイクオリティの仕事をいかに実現するか。生産性向上や業務効率化に関心の高い日立システムズグループの従業員がオンラインで全国から多数参加いたしました。
ご講演いただいた清水久三子氏は、かつて徹夜も辞さない過密スケジュールでパンクしていたとか。今回はコンサルタントならではのノウハウを体系化して手に入れたシンプルかつ強力なメソッドについてご紹介いただきました。
まずは日本のビジネス環境について言及。本来は、生産年齢人口の推移に伴って働き方も変化すべきですが、遅々として進まない日本の現状、またGDP世界第3位の経済大国でありながら一人当たりの製造業生産額ではG7の最下位レベルという事実も紹介されました。
このように時短が進まないのは、前提として長時間労働に陥ってしまう根底意識があるといいます。
①から⑤で自分はどれに当てはまるか、参加者に質問すると、④の抱え込みタイプが53.1%と半数を超えました。
<アンケート結果:①222名(30.3%) ②117名(16.0%) ③170名(23.2%) ④389(53.1%) ⑤31(4.2%) どれでもない51(7.0%) >
これらの意識を払拭し、働き方をいかに変えていくべきか。
清水氏が自身の経験から確立された時短術が、「IPO」と「ボトルネックの解消」です。
基本的な仕事の進め方であるIPOの各段階で意識すべきことを知り、納期遅れや超過勤務の要因であるボトルネックを解消する。
「IPO」は仕事の手順を3段階<Input、Process、 Output>に分ける考え方で、「ボトルネック」とは仕事の流れを妨げる要因を指します。
まずは自分の仕事のどこにボトルネックが隠れているかを見つけ出し、再定義することが突破口となります。
それぞれのボトルネックはどこにあるのか、再び参加者に聞くと、インプット:142(20.7%) 、プロセス:455(66.2%)、 アウトプット:90(13.1%)との回答が得られました。
ここからいよいよ、各段階でどんな風にボトルネックを解消するか、具体的な方法へと進みます。
Input(仕事を受ける段階):仕事を棚卸し再定義する
Process(仕事の進行・処理段階):スケジューリングとアイデアを出す思考
Output(仕事の出力段階):利害関係者の管理と最適品質を考える
インプットの段階ではやるべきことに集中するため業務を棚卸して、「4つのC」で整理します。
働き方改革で重要なのは、やるべき「課題」を見出すことだといいます。同様に思いがちな「問題」とは課題の実現を阻む要因であり、問題の解消だけを考えていると、かえって仕事を増やしてしまいます。
では、本当にやるべき課題をどう見出すのか、目的(①Purpose)を考え、立場(②Position)を上げて捉え直すという「2つのP」による整理が提言されました。
もう一つ、課題の見直しで有効な思考法が「アサンプションスマッシング」(前提破壊)です。
<例えば>
これらの前提や常識は、一度疑ってみると真の課題が見えてきます。
ここでは、ある企業のeラーニング研修において、「いつでもどこでも受講できる」前提を破壊して「受講できる時間を固定」にしたら受講率が100%に達成、現場の評判も良かったという成功事例が紹介されました。
プロセスで仕事の処理速度を上げるノウハウとしては、①スケジューリング②「会議の無駄とり」が挙げられました。
ここでは空白の多いスケジューリングの例と少ない例を比較。前者は残業時間が膨張したのに対し、後者は圧倒的に残業が少なく成果も上がりました。なぜか?その差は仕事の細分化にあります。
【×】提案書作成8時間とざっくり見積もる → 作業時間が膨張
【○】仕事を細分化
<情報収集○分/仮説構築○分/メッセージと構成作成○分/スライド作り○分/確認○分/資料作成○分/チェック○分>
細分化により工程がクリアに把握でき、集中して作業できるため効率も上がる。
多い、長い、決まらないと三重苦に陥りがちな会議。無駄に時間を費やさないよう会議もコスト意識を持つべきです。では、無駄とりする際のポイントとは?
1.会議そのもの 2.頻度 3.参加者 4.資料 5.会議の長さ 6.資源(会議室、開催可能時間)
会議も棚卸しして可視化すると改善の余地が見えてきます。例えば、
さらに具体例として、社内会議では資料に凝るのを避けるため、パワーポイントでの資料作成を禁止したamazonやfacebook、会議室自体を減らしたり会議開催時間帯を限定するなど、時間とスペースを有効活用し、会議の無駄とりをした企業の例も挙げられました。
加えて、プロセスの段階ではアイデア捻出のための思考法として、「ロジカルシンキング」と「ラテラルシンキング」の組合せについても触れられました。
情報を論理的に整理して論理を重視して思考を深めることに加え、この枠から飛び出して、前提を疑う・見方を変える・組合せることで新しいアイデアを考える。この2つの思考法を組み合わせることで、思考の幅と深さを担保しながら、さらにいいひらめきをプラスしていくことができるとして、効果的な手法の紹介がありました。
IPOの最終段階であるアウトプットでは、「ステークホルダーマネジメント」(利害関係者の管理)がカギとなります。これは、利害関係者と計画的にコミュニケーションをとり、「磨耗」や「衝突」を最小限に抑える手法です。
利害や被害を受ける可能性のある関係者を「見える化」するツール
<利害関係者マップ>(ステークホルダーマップ)
縦軸:関係者が持つ影響力(大・中・小)
横軸:姿勢(反対・中立・賛成)
9つに分類した表で関係者をマッピングし、情報提供などコミュニケーションの方針を決める。
情報提供は定期的に行い、影響力が強い人ほど先立って相談する。
もう一点、アウトプットで重要なのが品質の意識改革です。
資料やレポート作成では過剰な色やフォント、罫線の種類を使いすぎていないか。メール送信で行う暗号化は本当に必要か。また見積もりの作成では承認が多いほど時間がかかります。
必要以上の仕事を増やさないために過剰品質のチェックを行い、必要な業務を絞るよう勧められました。
最後は在宅勤務について。「環境」および「時間と心」という2つの観点からボトルネックの解消を考えました。
パソコンのモニターを目の高さに設置、オンラインミーティングでは音声ヘッドセットを使う、使い勝手のいい収納ツールを活用するなど。
ここでは心理的安全性を確保する2つの方法が提案されました。
分ける:時間によって仕事とプライベートを分ける
統合する:プライベートの予定をあえて共有する
カレンダーツール等で育児や介護、通院予定など差し支えない範囲でプライベートの予定を共有することでお互いに働きやすい環境に変えることができます。
コロナ禍、テレワークの環境では周囲を巻き込む、また助けを求められたら巻き込まれることを意識してもらいたいとのこと。助け、助けられるという心理的安全性が高い職場はパフォーマンスも高いと実証されています。
<ヘルプが出せる環境とは?>
など。
ヘルプシーキング によって抱え込みを防ぐことができ、辛い状況を乗り切っていこうという気運も高まるという言葉で締めくくられました。
以上、時間、習慣、思考、メンタル面などボトルネック解消の具体例が数多く紹介された濃密なセミナーとなりました。
日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。