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株式会社 日立システムズ

社内コミュニケーションのニューノーマル

第1回 確保していますか、「心理的安全性」

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、テレワーク時代が本格的に到来しています。しかし、社内のコミュニケーション不足を課題と感じるビジネスパーソンは約6割にものぼります。
(※日経BPコンサルティング調べ「コロナショックと企業コミュニケーション 1500人緊急調査」より)
いったい何が不足しているのか、そもそもテレワーク下における強い組織とはどうあるべきか。「社内コミュニケーションのニューノーマル」特集では、①社内コミュニケーションの課題とその解決法②日報活用法の観点から、マイナスをゼロにするだけではない、攻めの社内コミュニケーションの在り方を探ります。
(取材協力:キャスター事業責任者 越川慎司氏)

<Web会議の利用に関する実態調査>
実施日:2020年7月1日〜9日
対象:国内の企業・組織に所属するビジネスパーソン
母数:有効回答数1881件

ここは、2020年度からテレワークが導入されたフジキ興産。テレワークの始動にあたって、2週間に1回の1on1オンラインミーティングが設定されていた。中川課長と藤田君との1on1の会話から、テレワーク下における社内コミュニケーションの課題とその解決法を見ていこう。

テレワークは「寂しい」

中川課長(以下、中川) どう? テレワークを始めてしばらくたったけど、何か困っていることはないかしら。

藤田君(以下、藤田) そうですね。職場なら隣の人に分からないことをすぐに聞けたり、知恵を借りられたりしたんですけど、それができないのが不便ですね。こんなこと言ったら恥ずかしいですけど、寂しいというか……。

中川 恥ずかしがることはないわ。テレワークをするようになって、みんな当たり前に孤独を感じているものよ。600社以上を調べたある調査(2020年 クロスリバー調べ)では、精神疾患の患者が2019年より増えたという結果も出ているわ。原因は慣れないテレワークでの長時間労働と孤立化ではないかと言われているの。一人で仕事をしていると寂しかったり、「自分だけ仕事ができていないんじゃないか」と不安に思ったり、「自分は要らないんじゃないか」と屈折してしまったり。そんなふうに孤立化してしまうことは、ストレスの元にもなるし、生産性を下げてしまうものなの。だから、こうした1on1ミーティングの機会を持つことも大事になってくるわけね。

藤田 それを聞いて少し安心しました。

中川 突然だけど、強い組織ってどういうものだと思う?

藤田 いきなりですね(笑)。うーんと、売上の数値目標の達成とか、成果を出し続ける組織でしょうか。

中川 そうね。それもあるけれど、チームワークが良いことがとても大事になってくるの。かつてのモノ消費に比べて、今は顧客のニーズも潜在化したり、複雑化したりしているわ。だから、個人の力で顧客の課題を解決するのは難しくなってきていて、組織にいる個々人の強みを掛け合わせて変化に対応していかなければならないの。そのうえで大切なのが、組織内のコミュニケーションが取れていること。孤立化を防ぐうえでも、「阿吽の呼吸」ではなくて、ちゃんと言語化したコミュニケーションが必要なのね。

藤田 自分の弱点って直さないとダメだと思っていたんですけど、そうとも限らないんですね! コミュニケーションについては、もっと軽く考えていたような気がします。実際には、どんなコミュニケーションを心掛ければいいんでしょうか。

「今ちょっといいですか?」と言える関係性が肝要

中川 定例ミーティングの冒頭で、私が必ず雑談をしているのは気づいていたかしら。

藤田 あれは意識的だったんですか⁉

中川 そうなの。実は雑談にはいくつかの効果があって。まず、雑談というのは、相手との共通点を探る作業なのね。たとえば、天気の話とか、お昼ごはんの話とか、趣味の話とか、そういった気軽な会話をすることで、発言しやすい空気づくりをしているの。雑談後の発言数が1.8倍にもなったり、発言しない人の割合が3割減ったり、会議が時間内に終わる確率が4~5割高まったという調査データ(2017年11月~2020年9月、対象28社・2.2万人 クロスリバー調べ)もあるわ。

藤田 そんなに違うものなんですね。 中川さんがおしゃべりなだけかと思っていました(笑)。

中川 それもあるけど(笑)、「何を言っても大丈夫」という「心理的安全性」を担保しているの。あまり長すぎても意味はないから、3分くらいで切り上げて本題に入っているというわけ。

藤田 言われてみれば、僕と同じキャンプが趣味の人がいると思うと、なんとなく安心して発言できている気はします。

中川 特にアイデアの量が重要な会議の時は、効果的ね。よく、立ち話から新規事業の構想に発展したような話も聞いたことがあると思うけど、それも雑談の効果と言えるわね。「こんなことを言ったら笑われるんじゃないか」とか思わずに、自由に発言できる雰囲気が大事なの。

藤田 今は社内でチャットなんかも使っていますけど、そういうところでの雑談も効果がありますか。

中川 もちろん! メールより簡略化されているぶん効率的だし、チャットで「今ちょっといいですか?」と気軽に相談できる関係は、心理的安全性が担保されている証よ。問いかけをできる文化がその会社に根付いているということで、自分も他人を巻き込むし、他人からも巻き込まれるし、それが組織の力になるということね。オンライン飲み会なんかも共通点を探るためにはとてもいいと思うわ。

藤田 これまで相手の都合を気にして遠慮していましたけど、積極的にチャットも活用してみようと思います。 

中川 空気を読む日本人は対面がいちばん「心理的安全性」を確保できるんだけど、それが確保されていれば、リモートワークでも変わらず成果を出し続けられることが分かっているの。だからリモートワークと出社のハイブリッドがスタンダードになってくるこれからの時代は、出社したときこそ意味のあるコミュニケーションが求められると思うわ。

「感情の共有」で意思疎通を円滑に

中川 もうひとつ、コミュニケーションのポイントとして「感情を共有する」ということが大事なの。

藤田 それはたとえば、「お腹空いた」とか「今日はやる気出ないな~」とか誰かに言うってことですか?

中川 そうね、遠くないわ。

藤田 ええっ⁉ それがどんな効果があるんですか。

中川 うちの部では、その日に何をやったかという日報をビジネスチャットに報告するようになったけど、そうしたところに一言、「今日ははかどりました!」とか「みんなに会いたいです」とか、書き添えるだけでいいの。みんながお互いにそうした感情を共有することで、最初にも話した孤立化を防ぐことにもなるし、いろんな考えや状況の人がいるっていうことを理解することで、さらに良いチームワークが生まれるわ。

藤田 本当にそれでいいんですね!

中川 それと、他者への感情を共有することも大事。オンライン会議なんかの場面でも、意見を求められたときに最初に発言するのって勇気がいるわよね? だから最初に発言した人に、「いいね!」というボタンを押したり、チャットで拍手の代わりに「888888(パチパチパチ)」っていうメッセージを入れるようにしている会社もあるわ。

藤田 確かに、社内会議って誰かが一方的に話して終わるような印象がありますけど、そういう意思表示をすることで自分もより積極的に参加している気になれるかもしれないです。

中川 そうなのよ。話している私のほうだって、反応がないと不安だしね。あとは、その会議の目的を把握して参加することも成果を上げるためには大事。本来、会議の目的は「情報共有」「アイデア出し」「意思決定」の3種類で、特にアイデア出しの会議ではブレインストーミング方式でアイデアをたくさん出すことが重要なの。そして、その場で出たアイデアや発言を誰も否定してはいけないと言われているわ。その後の意思決定は限られた人が行えばいいのであって、分けて行うことで11%も会議全体の時間が減ったという実証実験もあるの(2017年9月~2020年2月、対象25社・3.1万人 クロスリバー調べ)。

藤田 「なんかいいアイデア出せ!」って言われて出して、頭ごなしに否定されたら出るアイデアも出ないですもんね。

中川 私たち上司の側もそこは気を付けないといけないわね。結局、コミュニケーションは相手が主役で、「伝わるコミュニケーション」になったら成功だから。失敗してこそ成長があるし、失敗を恐れていたら変化の激しいこれからの時代に置いていかれちゃうし。だから、藤田君も勇気を持って発言してくれたら嬉しいわ。

藤田 はい、頑張ります! ありがとうございました。

社内コミュニケーションで押さえるべき3つのポイント

  1. 強い組織とは、「チームワークが良く、成果を出し続けられる組織」
  2. 「今ちょっといいですか?」と言える「心理的安全性」の確保
  3. 「感情の共有」で意思疎通をスムーズに

※この記事は、日経BPコンサルティング 「CCL.」より転載いたしました。
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

越川 慎司(こしかわ・しんじ)氏

株式会社キャスター事業責任者、株式会社クロスリバー代表取締役社長。国内外通信会社に勤務、ITベンチャーの起業を経て、2005年に米マイクロソフト入社。日本マイクロソフトに転籍後、PowerPointやTeamsなどOfficeビジネスの責任者を務める。2017年にメンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・副業を実践する株式会社クロスリバーを設立。600社を超えるリモートワーク支援実績があり、そこから得られた知見を『ポスト・コロナの知的生産術』『ビジネスチャット時短革命』等の書籍、講演、SNSにて積極的に発信し続けている。

執筆
日経BPコンサルティング
コンテンツ本部 編集2部
後藤 文江(ごとう・ふみえ)

約20年間、カルチャーやエンタテインメント、ビューティー誌の編集を経験。読者目線を大切に、現在は企業会報誌の編集を中心に担当している。

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