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株式会社 日立システムズ

第15回 架純、ついに名案を思い付く

日比野が居なくなったあと、2人はしばらく動けなかった。
「どうしたら、いいんすかね。AIDMA、良いと思ったんですけど…」
「ね、日比野社長もいったんは褒めてくれてたしね…」
下村商店を救うために、かすみタイムズで取材をして認知度を上げるというアイデアは決して悪くないことのように思えたが、日比野にとっては十分な回答ではないようだ。しかし、その先のアイデアが全く浮かばない。
「何が足りないんですかね?かすみタイムズの部数ですかね?」
「ううん、この街の郵便受けには十分タイムズはいきわたってるわよ。これ以上増やしたら住んでいるエリアが増えすぎて、タウン誌の意味を失っちゃうわ…」
「確かに、今の読者にさえ下村商店は知られていないわけですからね…」
…と、こんな感じで話が全然前に進まないまま、時間がゆっくり過ぎていく。

アイデアは会議室には落ちていなかった。

ふと時計を見ると、2時になっていた。
「そういえば、お腹空いたわね…気分転換したいし、たまには自分たちでお昼作りましょうか」
日比野が来たのが午後1時。2人はお昼抜きで準備や調べものをしていたのだった。ここ「アンジュ」は、シェアハウスの軒先を借りた格好になっていて、ドア一つ隔てたところはシェアハウスの共有スペースになっている。その一角にあるキッチンを使って、かすみタイムズのメンバーも好きに料理ができるのだった。
なお、キッチンには包丁が3本あるが、使い分けをするためではなく、同時に数名が使えるように同じものを備えてあるにすぎない。
「ここの包丁だけでも下村商店のものにしません?」
「良いけど…数本だけ包丁を買っても焼け石に水よね」
そう言いつつ、架純は冷蔵庫の材料を出す。包丁を持ったこともない榎田君は、お米を研いで炊く係だ。共有スペースは広く、ソファの向こうに大きなテレビが一台置いてある。
「炊飯器セットできたら休んでていいよ」
という架純の言葉に甘えて、彼は何の気なしにテレビをつけた。と言っても、昼のワイドショーの時間は退屈な番組ばかりで、何を見たいわけでもない。チャンネルを次々と変えていくと、
「おっ」
榎田君は途中で何かに気を留めたのか、テレビの画面があるチャンネルから動かなくなった。架純もなんとなく画面に視線を向ける。包丁の通販番組だった。

「…ねぇ、それって」
架純は思わずテレビの前に駆け寄る。
「セ、先輩…料理は?」
「代わりにやってて!」
「えっ!?」
くどいようだが、榎田君は料理ができない。
「いいから!」
それでも無理やり榎田君をキッチンに立たせ、架純はテレビ画面に視線を向けたまま、思案した。
「そうよ、これよ!」

架純のアイデアは下村商店を救うのか?

「私、思い付いた!」
キッチンには、要領を得ないまま、とりあえず炒め物を焦がさないようにフライパンをゆすっている榎田君が突っ立っていた。
「このキッチンを使って、実演販売の動画を撮るの。それを配信して、インターネット通販を併用できたら面白いわよね?かすみタイムズではその実演会をイベントにして告知すればいいんだわ」
架純の顔は上気していた。
「なるほど、このキッチンをスタジオとして使っちゃうわけですね!良いじゃないですか!近所の人に直に見てもらえるのもすごく良いアイデアですよ」
「でしょ?私、下村さんにさっそく電話してくる!その料理もうできてるから盛り付けておいて!あ、私も食べるからご飯が炊けたら呼んで!」
架純は共有スペースから出て行ってしまった。
「あはは、ああいうところ、あすな先輩そっくりだな」

架純は下村さんに電話をかけた。
「インターネットのことはよくわからないけど、相手のお顔を見ながら接客できないのはさみしいと思っていたんです。でも、包丁の使い方をご近所のお客さんに見てもらいながら、それを日本中に広められるのはすごく良いと思います」
と、乗り気な返事だった。意気揚々と食卓につく架純。すでに料理は榎田君によって、決して美しくはなく、盛り付けられていた。
「さあ、食べましょ!」
「…先輩、うれしそうですね」
「当たり前じゃない!ああ、お腹空いた!」

AIDMAに代わる概念

「その日の夕方、仕事を終えた日比野が再び「アンジュ」を訪れた。架純は以下のアイデアを日比野に伝えた。

  • アンジュのキッチンを使って包丁の実演販売を行い、地元のお客さんにも来てもらう(もちろん買うかどうかは自由)。
  • その様子をインターネットで配信して、オンライン販売を併せて行う。

話を聞いた日比野は何度もうなずいていた。
「ふむ、動画マーケティングを思い付いたか」
「…どうですかね?」
「悪いアイデアではない。下村さんの人柄を伝える意味でもな。ひとまず合格だ」
「やった!」
2人は思わずガッツポーズを作っていた。

「榎田君といったな…君は今朝、AIDMAという考えを提案してきた。あの考えは実は歴史が長く、1920年ごろからある枠組みなんだ。消費者が新聞やラジオといったメディアから情報を得るようになり、さらにそこにテレビが加わって、AIDMAモデルはますます定着していった。しかし…」
日比野がいったん言葉を止めて、立ち上がった。
「インターネットの普及で、AIDMAモデルは陳腐化しはじめた。代わって登場した概念が、これだ」
日比野はホワイトボードにAISASと書いた。
「Attention(注意)、Interest(関心)、Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)。動画マーケティングをするならこのモデルを意識しろ」
2人は熱心にメモを取っていたが、榎田君が我慢できずに切り出した。
「あの…日比野、さんは、とっくに動画マーケティングを思い付いていたんですか?」
メガネの奥の日比野の眼が鋭く光った。
「当たり前だ。俺を誰だと思っているんだ」
架純が榎田君に、目線で「バカ!」と言っている。
「あ、す、すみません…つい」

日比野は気を取り直すようにメガネをくいっと上げた。
「ほかにも下村商店の業績にテコ入れする手段はあるが…ここは2人の意見を尊重しよう。とりあえず、この案を下村商店にもっていくことにしようか…」
「はい、明日2人で行ってきます」
架純はそういったが、日比野は動かない。何かを考えこんでいるようにも見えた。
「あの、どうかしましたか?」

「…明日、俺も行くことにする」
「えっ!?」
2人は驚きの声を上げた。日比野が街の小さな刃物屋さんにわざわざ顔を出すなんて…。でも、これはプロのコンサルタントの仕事を直にみる、またとないチャンスかもしれない。2人の胸は躍った。

 

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