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株式会社 日立システムズ

第14回 架純、商圏分析にハマる

「うーん、こんな感じ、ですかねぇ」
中央線沿線に出来上がった学生向けのシェアハウス「アンジュ」の軒先にある、「かすみタイムズ編集部」。榎田君は最近買ったばかりの新しいPCで何とかレポートを作り上げ、先輩の架純に意見を求めた。
「人口と世帯数の推移、それから、包丁を売っている店舗の数がどう増減しているか?という2点に絞ってみたんですが…」
数日前に日比野から指示された、駅前の「商圏分析」。先輩の架純にとっても初めてのことで要領を得ないが、にわか仕込みで勉強したことと照らし合わせながら、榎田君の資料をチェックした。
「…人口が増えている、というのはそのとおりよね。この辺はマンションも増えているし」
「え、ええ。それもファミリー向けの物件が多いので、ひとり暮らしよりも2~5人の核家族世帯が多いみたいです」
「ふーん、それなら包丁を買いたい人も増えているはずよね?刃物屋さんの数、はわかった?」
そう言いながら資料をめくると、そこには「増加?」の文字が。
「刃物屋さん、増えてるの?」
「いえ…そんなことはないんですが、ただ」
「ただ?」
「マンションの開発に合わせて、ショッピングモールができたりしているじゃないですか。ちょっとおしゃれなキッチン用品の店に行けば、最近はセラミックの包丁も売っているし、極端な話、100円ショップでも包丁は買えたりするみたいなんです」
純然たる刃物屋は増えてはいないが、新しい業態の店がどんどん増えたことにより、刃物屋に目を向ける人がだんだん少なくなっている、ということだろう。

「言われてみれば、私もそういうところで包丁買ってるわ…包丁にどんな種類があるか、とか、どんな包丁が質が良いのか、なんて考えないもの」
榎田君も苦笑いする。
「僕たちお金ないですし…質よりも値段、ですもんね。僕なんか包丁持ってないですよ、あはは」
「そうね。それにしても…どうしたものかしらね」
架純は頭を抱えた。今のところ、商圏分析の結果は以下の2点に集約されている。

  • 下村商店にとっての駅周辺の商圏は、マンションの増加に伴い拡大している。
  • が、同時に総合的な品ぞろえの生活用品店が増加している。

商圏分析に初めて取り組んだ2人にとって、最初のうちは目新しい情報源やデータに出会うたびに気持ちが躍ったものだったが、蓋を開けてみれば「ごく普通」の分析結果。
「結局、下村商店をどうやって救えばいいのか、手掛かりになるものが感じられないのよね」

あまりに平凡な分析結果、さてどうする?

ため息をつく架純。榎田君は天井を見上げながら「うーん」とうなる。
「商圏分析は、あくまで今を知るためのものですからね。もちろん、何かヒントが見つかることもあるのかもしれないけど、これからの戦い方みたいなのを考えるための方法じゃないし、ひとまずの分析はこれでいいと思うんですよ。日比野社長もそろそろ来る時間だし、いったんこのレポートで意見をもらったらどうですか?」
「うん、このレポートはこれで良いと思うの。でもせっかく日比野社長にこのプロジェクトを任されてるんだし、少しは自分たちで考えてみたいのよね…」
苦労してレポートを仕上げた榎田君にとってみれば、その資料を見ながら架純が頭を抱えているのには少し不満を覚えるのかもしれない。そう思った架純はそんな風に彼をフォローしつつ、自分の思いを伝えた。
「私はもう一度、買ってきた本からヒントを探してみる。榎田君はネットで調べてもらえない?」
「いいっすよ。まだ社長がくるまで1時間ほどありますしね」
榎田君は、気を取り直すようにPCを開いた。

1時間後、「アンジュ」にやってきた日比野は挨拶もそこそこに切り出した。
「どうだ、進んでるか?レポートを見せてみろ」
無駄のない、下手すれば冷たささえ感じる日比野のテンポの速さに2人は思わず緊張した。
「こ、これです…」
架純は先ほどのレポートを手渡した。パラ、パラ、パラと資料をめくる日比野。読み終えるのに10秒ほどしかかからずに、「ふむ」と言って資料を机に置いた。どういう頭の構造をしているんだろう…架純はひそかにそう思った。
「手ごたえはあったか?」
「いえ、それが…」
分析結果が平凡すぎて策が見つからず、何か方法はないか調べているところだ、と架純は伝えた。
「確かに当たり前のことが書かれているレポートにも見えるが、データを集めてその『当たり前』を立証した、ということだろう。それならそれでいい」
日比野の言葉は、なんとなくそのレポートが及第点を取れていることをほのめかしているようでもあり、2人はほっと胸をなでおろした。
「…それで、何か手掛かりは見つかったか?」
日比野がそう話を向けると、榎田君は「はい」と答えた。
「AIDMAってやつを見つけました」
AIDMAとは、顧客が購買をするまでのステップを5つの英単語で表したものだ。Attention(注意)Interest(関心)Desire(欲求)Memory(記憶)Action(行動)である。
「下村商店のウィークポイントは、なんといっても存在感のなさだと思うんです。包丁が欲しくなっても、下村商店のことを思い出す人がほとんどいないのでは売れるわけがない。だから、目立たせればいいんです…かすみタイムズで。そうすれば、お客さんのAIDMAのプロセスに入り込むことができるでしょ」

榎田君の案は「こじつけ」なのか

榎田君はついさっきネットで得たばかりの知識で答えを出し、どこか得意げな様子だ。しかし、架純は慎重だった。
「あのね、榎田君…それって、かすみタイムズで大々的に取り上げるっていう結論ありきの考え方なんじゃないの?」
「…だ、ダメっすか?」
「ダメよ。そんな風に結論を決めつけてかかったら、正しい救い方になるはずがないわ」
架純の言葉を、日比野は「ちょっと待て」と遮った。
「君が言うほど、彼の方向性は間違ってはいない」
「え?」
「結論ありきの考え方も、実は理にかなっている。インターネットや書籍で情報を調べようと思ったら、あまりに量が膨大で何から手を付けたらいいか、かえってわからなくなることがあるだろう?」
「はい…」
ついさっきまで手当たり次第に本の目次を追っては手掛かりを探していた架純は、日比野に鋭いところを衝かれた格好になった。
「ある程度の方向性を絞り込んでから、情報を探すべきなんだ。かすみタイムズでできることは限られている。しかし、だからこそ、調べなければいけない情報も、絞れる」
「なるほど…僕のやり方は結果オーライだったんですね」
「まあ、ここまでのところはな。しかし、まだ足りない」
日比野は榎田君の動きを評価しつつ、厳しい採点を下した。

「どの辺が足りないんでしょうか?」
榎田君が反射的に尋ねるが、架純が慌てて
「だ、ダメよ」
と制する。日比野は「ふっ」と笑って立ち上がった。
「ああ、答えは君の想像しているとおりだ。それくらい自分で考えろ」

 

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