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株式会社 日立システムズ

第3回 あすな、久しぶりに日比野の洗礼を受ける

「社長!ここですよー!」
駅前のホテル内にあるレストランで、あすなは既に席について待ち構えていた。
「大声を出すな、みっともない」
そう言って顔をしかめてから、日比野も席につく。そして、ウェイターに料理の注文を済ませると、堰を切ったようにあすなが話し始めた。
「社長、変わってませんねえ…H社でもたまに、社長のことが話題になるんですよ?」
「話題…?」
「はい。クラウドファンディングのサービスを始めたらしいぞ、って。相変わらずお忙しいんですね?」
そう言って、あすなは日比野の話を聞く姿勢をとる。まるで「パスを出したんだから、ちゃんと受け取ってよね!」とでも言いたげな様子だ。

しかし、日比野はまともに取り合わない。
「…お前、用事はなんだ?」
「えっ…?」
あすなはきょとんとした表情になるが、日比野は相変わらず表情を変えない。
「ナミから『どうしても話したい』と聞いたから時間を作ったんだ。何か用事があるんだろ?」
「え…何もない、ですけど…ダメでしたか?」
あすなには何も悪気がないようだが、日比野は苛立っていた。
「まったく、友達気取りもいいところだな。社会人なんだから、用件もないのに忙しい人間を捕まえるような非常識なことはしないようになっていると思っていたが…」
感情をあらわにする日比野を見て、あすなはだんだんとしょげていった。
「そんなぁ…別にいいじゃないですか、たまには悩みを聞いてくれたって」
「悩み?どうせ、たいしたことじゃないんだろ」

あすなの悩み

日比野がそっけなく切り返すが、あすなは「今がチャンス」とばかりに自分の話を始めた。
「私、今、安田さんの下で働いてるんですけど…」
「そんなことは分かっている。都市開発部だろ?」
あすながアルバイトとして日比野の下で働いていたころ、たまたま同じクライアントをめぐって一緒になったのが、安田という男だった。日比野の前職でもあるH社で、安田と日比野とは熾烈な出世争いを続けていたが、日比野は思うところあって独立を決意し、安田がメインストリームに立つことになった。
「最近、部内がギスギスしてるんです」
「…ギスギス、ねぇ」
なるほど、と日比野は内心思っていた。そういう悩みなら、社内に相談相手を見つけるわけにもいかない。

「安田さんって敏腕で、なんでもできちゃうじゃないですか。だから、少しでもついていけない部下がいると、そういう人に対して厳しいんですよね…」
「厳しいことは悪いことじゃないさ…」

日比野は昼食の付け合わせのサラダに手をつける。
「私だってそう思ってます。でも最近、主任さんたちがあからさまにそれを嫌がるようになって…」
「上司と部下の分裂、というわけか」
日比野はどこかで「どこにでもある、ありふれた話」だと思いながら、かつての盟友の安田を案じる気持ちにもなっていた。

「それでね、私、安田さんに目をかけてもらってるじゃないですか?」
ちょっと悪戯心で、あすなの揚げ足をとってみる。
「…は?お前なんか、目をかけてもらうほど優秀じゃないだろう?」
案の定、あすなはムキになる。日比野は心の中で笑いながら、一瞬、懐かしい思いに浸った。
「社長!茶化さないで聞いてくださいよ!もう…とにかく、主任さんたちから『お前は部長派だ』ってレッテルを貼られてしまったみたいで、仕事一つ一つがすごくやりづらいんです」
あすなはそこまで言うと、何か救いを求めるような目線を日比野に送る。

しかし、日比野はあくまで、日比野だ。
「…それで?どうしたいんだお前は」
「それで、って…それが分からないから聞いてるんじゃないですか!」
あすなは食べながら反論する。相変わらず、食べっぷりが良い。
「…分からないなら、黙ってろ」
日比野はそう言って、少し遠い目をした。
「えっ…?」
「安田なら、ちゃんと答えを出せる。それを待ってやれ、と言ってるんだ」
あすなは日比野の顔をまじまじと見つめる…口の中にハンバーグをほおばったまま。そして、そのまま
「わ、分かりまひた」
と答える。顔をしかめる日比野。
「…飲み込んでから喋れ!」

あすながくれた確信

その後、しばらく2人はもくもくと食事をしていたが、あすなはふと思い出したように、
「あ、そういえば…私今度、リクルーターをやることになったんです」
と言った。
「へぇ、お前が採用をやるとはね」
あすなはつい1年前、就職活動で大苦戦した挙げ句、日比野に助けを求めたのだった。
「そうなんです。あのとき社長に色々教わったことを、そのまま受け売りで伝えることになっちゃいそうですけどね」
そう言って、あすなは舌を出して笑う。
「それでいい…お前の頭で考えたことより、そのほうが100倍良いはずだ」
日比野も、わざと馬鹿にするようなことを言う。そしてあすなが、またムキになる…こういうやりとりも、ずいぶん久しぶりだ。

「ほら、見て…リクルーターって結構忙しいんです」
あすなはそう言いながら手帳を出すと、スケジュールを開いて見せた。
「おい、そんなに不用意に見せるな…」
そう言うと、あすなは「えっ?」と信じられなさそうな顔をした。
「私の手帳を勝手に奪い取ってパラパラめくってたの、社長のほうじゃないですか?」
「それはお前が学生のころの話だろう!社会人になったら社外に見せられないアポイントとかもあるんじゃないのか?」
「…うん、確かにね…」
あすなはしぶしぶ、手帳を閉じた。学生時代に使っていたものに比べると、ずいぶん分厚い手帳だ。

「お前…その手帳、気に入って使ってるのか?」
そう聞くと、あすなは意外そうに「え?」という顔をした。無理もない。日比野からあすなに問いかけること自体、珍しいのだ。

「…正直、そうでもないかな。本当はもっと可愛いのを使いたいんだけど、そうもいかなくて」
「社会人になったら、あまり可愛いのを使えない、ってことか」
「そういうこともあるけど…そもそも、本格的なシステム手帳ってあまり女性っぽいデザインないのよね。だから敢えて男物にして、キャリアウーマンっぽく見せてる人もいるくらいですよ…」
そう言いながら、あすなはまじまじと日比野のほうを見る。
「…社長、もしかしてナミさんに手帳をプレゼントしようと思ってるの?」
あすなの顔が、どんどん悪戯っぽいものに変わる。

そして、あすなの予想どおり、日比野は突然うろたえた。
「ナ、ナミだと?何であいつが関係あるんだ!」
「あーあ、忘れちゃって。ナミさん、もうすぐ誕生日ですよ?まぁ、でも必要ないか。ナミさんは外回りするわけじゃないもんね」
…日比野はその台詞を聞きながら、パズルピースが次々と埋まっていくような感覚を覚えていた。
「…やっぱりそうか」
思わずつぶやいた日比野の声を、あすなは聞いていなかった。
「ちゃんと、プレゼントしなきゃだめですよ?」
「…うるさい!食べ終わったんならもう行くぞ!」
日比野はうろたえたまま、伝票を持って席を立った。

 

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