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株式会社 日立システムズ

第4回 ビジネスキューピッド、新しい手帳を世に出す

あすなとのランチを終えてオフィスに戻ると、社長室にはナミの姿はなかった。
「ああ…そういえば」
13時からのアポイントをナミに任せていたのを、日比野は今思い出した。もしかしたら、あすなとゆっくり会話してほしいという気遣いから、アポイントを引き受けたのかもしれない。そう思いながら、日比野はあすなの台詞を思い出していた。「ちゃんと、プレゼントしなきゃだめですよ?」
「…ふんっ!知るか!」
日比野はそういいながら首をブンブンと振った。

するとそのとき、オフィスの電話が鳴った。
「はい、ビジネスキューピッドです」
「あ…日比野社長ですか?午前中にお世話になった氷室ですが」
「ああ、氷室さん。先ほどはどうもありがとうございました」
お礼を述べながら、もしかしたら彼女も、クラウドファンディングを成功させるための「答え」を見つけたのかもしれない、と思った。
「先ほどお話したばかりで大変恐縮なんですけれど…また近いうちにアポイントをとっていただくことは可能でしょうか?」
「構いません…お仕事が終わられてからいらしてください。お待ちしてますので」
電話を切ったのと同時に、ナミが社長室に入ってきた。

「あ、社長、戻られてたんですね」
そう言って、ナミはすぐにお茶を入れる準備を始めた。
「ああ、ついでに今電話が来ていた」
お湯を入れながら、ナミは応える。
「もしかして、氷室さんですか?」
「うん。夜にこちらに来るそうだ。お前は定時に帰っていいからな」
「…えっ?」
ナミは怪訝そうに聞き返す。
「いや、夜遅くなるから、先に帰ってもいいぞと言ったんだ」
日比野はそういいながら、先ほど氷室が持ってきていた計画書を広げなおした。

「社長…私、同席しちゃダメかしら?」
お茶を入れたナミが、湯飲みを置きながらそう尋ねる。
「お前がか…?なんで?」
ナミは少し考えるようにして、笑った。
「私も、氷室太一のファンなんです。同席しても、いいでしょ?」
「…構わんが、氷室さんのことを外で触れ回るなよ」
氷室太一が女性だった…ということが、自分の会社のスタッフからもれてしまっては一大事である。
「分かってます。お客さまの情報は誰にも話しませんから」
そう言うと、ナミは進行中のプロジェクトの話に話題を変えた。

氷室の出した「答え」は

19時を回ったころ、妙子(氷室)が再びビジネスキューピッドを訪れた。ケーキを3つ、買ってきていた。
「夜にお待たせしてしまったので、お詫びのしるしです」
ナミはお礼を言ってそれを受け取り、コーヒーを入れるためにいったん席を立った。
「お詫びなど…そんなことより、さすがの行動力だと驚かされています。早速電話を下さったということは、氷室さんなりの『答え』が見つかったということでしょうか?」
「ええ、そうなんです…。といっても今回のは答えを見つけたというよりも…」
そう言って、妙子は一瞬間を置いて、
「女の勘、みたいなものね」
と、笑って見せた。

ナミがコーヒーを持って戻ってくると、妙子は本題を切り出した。
「夜も遅いので、単刀直入に答えを言います…手帳を女性向けに売るのはどうかな、と、思っているの」
その言葉に真っ先に反応したのは、ナミだった。
「まぁ、素敵!私、絶対に買うわ!」
日比野は2人の顔を見比べるようにして、ぽつんと答えた。
「私も、それが一番良いと思いました」
そう言うと、妙子は手を叩いて喜んだ。
「ああ、やっぱり!」

「…よく、短時間で気づかれましたね」
そういうと、妙子は「ええ」と頷いた。
「さっき言ったように、勘みたいなものなんです。理屈なんてありませんでした。私、ずっとブログを30代男性のために書いているつもりでいたんですが、実際に読んでいる人が本当に男性かというと、そんなことはなかったんじゃないか、って思ったの。だとしたら、あのブログでそのまま女性向けに手帳を売っても、十分売れるんじゃないか、と」
「…はははっ、確かにそれは根拠がないし、まさに『勘』というところですね」
日比野は珍しく笑ってみせたが、それをナミが咎める。
「社長、現に私も、氷室さんのブログのファンなんですよ?さっきそう言ったじゃないですか」

日比野は「ああ、確かにな」といって、続ける。
「実は、あなたのブログの読者が本当に男性ばかりだとしても、クラウドファンディングのサイトで女性向けの手帳を販売すれば、それだけで成算はあったのです。『Heart Arrow』は、名前が女性的なせいか、女性のユーザーが多いのでね」
「あら、そうだったの?だったらそう言っていただければよかったのに」
妙子はそういいながらも笑顔を絶やさない。
「ええ…なぜ言わずにいたかというと、実はちょっと氷室さんに決心してほしいことがあるのです」

ヴェールを脱ぐ決意

日比野が「決心」という言葉を使ったためか、場の空気が少し硬くなった。
「私…なんとなく分かってますよ」
妙子がポツリ、とつぶやいた。
「えっ…?」
意味を図りかねたナミが、2人の表情を見比べるようにする。
「氷室太一という名前を捨てて、本名で勝負してみたらどうか、ということでしょ?」
妙子がそう言うと、日比野は「実は、そうなんです」とうなずいた。

「ナミ、何で氷室さんのブログが好きか、説明できるか?」
日比野の問いに、ナミは少し考えるようなところを見せた。
「うーん、やっぱり仕事術がしっかり紹介されているのは凄く良いと思います。それと…」
「それと、何だ?」
「ちょっと毒舌なところが良いんですよね。世の中の社会人をチクリと刺す感じ」
その答えを待っていたように、日比野が続きを話す。
「そう。実は氷室さんのブログはまさに、その点の受けが良い。そしてそういうのを好むのは、実は女性だったりするものなんだ…だから、」
日比野はコーヒーをすすって、
「氷室さんが女性だったということを明かしたうえで、手帳の販売に踏み切るのがベストだと思う…これは単に手帳を多く売りたいから言っているわけではない」
「分かりますわ。私という個人ブランドを最大限に売り込めるから、でしょう?」
妙子の言葉に、日比野はうなずく。
「しかし、この決断には犠牲が必要です。あなたの素性を明かせば、あなたはおそらく、今の職場にいられなくなるでしょう。2足のわらじを維持しながら、今までどおりの知名度で良ければ、それも一つの選択だと思う。そこは氷室さん自身が決断してください。いずれにしても、今回のプランであれば弊社のクラウドファンディングで取り扱うことに問題はありません」

妙子は少し考えるようにして、こう言った。
「数日待ってもらって良いかしら?決心をつけるために」
「もちろんです。ゆっくり考えてください…もっとも、もう腹は決まっているように見えますがね」
日比野のそんな言葉に反応したのは、ナミだった。
「あら…どうしてそう思うのかしら?」

日比野はもう一口コーヒーをすすって、
「男にも、勘が働くことはあるんだよ」
そう言って、悪戯っぽい笑みを浮かべた。

 

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