最近、外務省海外安全ホームページなどで目にするようになった、新しい注意事項があります。
「スマートフォンは外部から所持していることがわかりにくい様に所持し、歩きながらスマートフォンを使用しない」
途上国ではスマートフォンは高価で、容易に売りさばくことができると言われています。「歩きスマホ」をしている人は注意が散漫になっていて、「どうぞ、盗んでください」と体中で表現している「カモ」そのものなのです。
海外では「歩きスマホ」は危険だと再三にわたって注意喚起されていても、私たちは、どうしても、この習慣をやめることができないのです。
私たちは小学生のとき、音楽という科目で、リコーダーを一生懸命に練習した人は多いでしょう。幼いときに習得したことは大人になってからも覚えていて、小学校で習った曲を吹いてみると、短時間で記憶が蘇ってくるものです。
これは私なりの解釈ですが、「回路ができ上がっている」と考えています。
何度も繰り返し練習したことは頭の中に回路ができ上がっていて、時間が経過しても思い出すことができるのです。
この「回路」は、日常的に反復する何気ない行動も作り上げていきます。そのことを、私たちは「習慣」と呼んでいるのです。
「習慣」は、「ぼんやりしているとき」や「何かほかのことに気をとられているとき」にも自働的に動作するので、海外では非常に困った事態になる場合があります。
日本の街では、バッグを片方の肩に提げて歩く人をよく見かけます。「ひったくりが横行する国ではバッグは襷がけに提げること」が常識であるにも関わらず、海外でも同行者との会話に夢中になって、つい、いつものように片方の肩に提げてしまいます。
短期間の海外出張や旅行では、緊張感から予め注意を受けた安全行動を維持することが比較的容易です。しかし長期間の海外留学や海外駐在において、全く油断することなく自分の「習慣」にない安全行動を維持することは非常に困難です。
海外での安全行動で重要なのは、「私たちは、海外でも意識せず日本で身に付いた習慣的行動をとってしまうことがある」という前提に立っておくことなのです。
海外での日常の安全行動には、下記のような事柄があります。これらを、海外の空港に降りた瞬間から適切に実行し、長期間継続することができるでしょうか?
など。
一つの対策案として、安全行動を日本での日常生活の中で心がけ、「習慣の修正」を行なっておくことが挙げられます。
以前、私が海外駐在から帰国したばかりの頃、娘と一緒に電車に乗ることがありました。娘はイヤフォンで音楽を聴いていましたが、片方の耳にしかイヤフォンを着けていませんでした。
私:「お前、それだったらステレオなのに意味がないだろ?」
娘:「両方着けてたら、何かあっても気が付かないじゃん。」
娘は銃社会の国で学校教育を受けましたが、発砲音・爆発音などが聴こえるように、外出時には、イヤフォンなどで両耳を塞がないように指導されていたのでしょう。
周囲の音が聞こえないと、不測の事態を感知できず、「退避行動」が遅れてしまい、命に関わる事態になる可能性があります。そのため外出時に音楽をイヤフォンで聴くときは、片方の耳だけに着けることが「習慣」になっていました。
「習慣化」した安全行動は、住んでいる国が変わっても当然のごとく継続することが可能です。正しく「習慣」づけることが、私たちを危険から遠ざけてくれるのです。
[山本 優 記]
※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。
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