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株式会社 日立システムズ

専門家コラム:お伽の国、日本からの旅立ち

第1回 海外危機管理の本質

本当にある「お伽の国」

私は海外危機管理コンサルタントという仕事柄、知人たちから「初めて東南アジアに駐在するのだけど、家族を連れて行っても大丈夫かな?」など、訊かれることがあります。
そんなとき、私は、ある質問を返しています。

「この地球上に、お伽の国が本当にあるのですが、どこにあるか知っていますか?」
訊かれた方は、一瞬、きょとんとします。

「それはね、私たちの住んでいる日本なんです。その証拠に、日本では人通りの少ない場所にも、当たり前の様に自動販売機が設置されていますよね?!。現金が入っている箱が、無防備に道端に放置されても大丈夫なんて、お伽の国だと思いませんか?」

日本も物騒になってきたと言われていますが、他の国々と比較すると、非常に安全な国なのです。
日本という環境から一歩外に出ると、どこも危ないという「前提」に立つことが、海外危機管理上、とても重要な感覚だと思います。

良し悪しは、相対評価

 人間は、物事の良い・悪いを言うとき、いつも「何かと比べて」判断しています。多くの日本人は、外国の生活環境の良し悪しを、日本と比べて判断しているのです。
そのため、海外に出るときには「日本と比べて、何が・どのくらい危険なのか?日本には無い、地域特有の脅威は何か?」という理解の仕方が、渡航先での適切な行動につながります。

適切な行動とは、リスクのありかを正しく知って、危ない場所・時期・時間・行動・物事を回避したり、予防策を講じたりすることで、被害に遭う可能性を限りなく「ゼロ」に近づけることです。そしてリスク発生時の対応を準備し、被害を最小限に留める工夫をするのです。

それが海外危機管理の基本的な考え方ですが、実行するには多大な努力が必要です。では、なぜ多くの企業が時間とコストをかけて、海外リスクに対応しようとするのでしょうか?

企業が守るべきもの

 随分前になりますが、ある料亭が「消費期限・産地」を偽装したことが発覚し、廃業に追い込まれた事案がありました。
よく考えてみると、その料亭の料理を食べた顧客に、実質的な健康被害はありませんでした。なのに、どうして廃業に追い込まれてしまったのでしょうか?

それは、「信用の失墜」です。

「信用」を失ったら、誰か実質的な被害を与えていなくても、経営の屋台骨が揺らぐのです。それは、人に対する思いやりと誠実さを忘れたときに突然現れる、落とし穴なのかもしれません。

企業の海外危機管理は、海外事業での「人、物、金」のリスクにしっかりと対応し、「信用」を維持するための仕組みです。特に、「人」の身体・生命への「安全配慮義務」が、最優先事項であることは、誰にも否定できません。

企業の「安全配慮義務」は、言い換えれば、人に対する思いやりです。利益確保やコストダウンの圧力に負けて、思いやりという言葉を忘れがちになることは、よくあることです。
しかし、一方で、人への配慮が欠如したために、「物、金」を守れなくなった企業があることも、事実なのです。それは、決して他人事ではありません。

勇気を持って優しい臆病者になろう!

 登山家たちが、よく使う言葉があります。
「登頂を断念する勇気も、ときとして必要だ。」

「たぶん、大丈夫さ。なんとかなるよ!」という、根拠の無い自信の下に、大勢の仲間や事業運営を危険に晒すことほど、愚かなことはありません。
海外進出企業は、「危険なところには、近寄りたくないな…」という、臆病者の感性を持つべきです。臆病者の感性が、危機管理上の調査能力・判断力・対処能力に磨きをかけ、その結果として、会社と仲間を守ることに役立ちます。

そして、誠実に運用される海外危機管理機能は、お伽の国出身の私たちを、危険から少しでも遠ざかるよう導いてくれるのです。

参考資料

あなたの会社は、どこまで海外危機管理の整備が進んでいるでしょうか?他社がどこまで進んでいるのか常に意識することは、とても重要です。

(1)海外進出企業におけるリスクマネジメント方針・規程の整備状況

(2)海外進出企業における重要リスクの特定状況(中小企業/大企業)

(3)海外進出企業の緊急時対応体制整備状況(中小企業/大企業)

【出典】
独立行政法人中小企業基盤整備機構「平成27年度海外リスクマネジメント研究会 海外リスクマネジメント実態調査 調査報告書」

「海外危機管理」に関するクイズにチャレンジしてみませんか?

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※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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