先進的な取り組みは、なによりも医療業界・患者さんのために
対話型自動応答AIサービスの導入により検索の利便性を向上、同時にメンテナンス作業の短縮を実現
“なによりも患者さんのために”を企業理念に、ジェネリックを主軸とした医薬品を製造する沢井製薬株式会社様(以下、沢井製薬様)は、薬剤師などの医療関係者向けに必要な情報を迅速に提供するべく、2018年2月にメディカルサイトをリニューアルするとともに、国内の製薬企業で初めて対話型自動応答AIサービス(チャットボット)を導入しました。
沢井製薬様のメディカルサイトでは、製品名やロット番号などの調べたい情報をマスコットキャラクター「ジェネちゃん」に対し会話形式で質問することで、750品目を超える医薬品の中から求める情報に迅速にたどり着くことができます。沢井製薬様はジェネリック業界のリーディングカンパニーとして、ITを活用したジェネリック医薬品の認知度向上にまい進しています。
2017年8月、沢井製薬様は医療関係者向け情報へのアクセス性を向上させるためにサイトリニューアルを開始。
スマートデバイス対応や資料検索機能の改善、使用期限検索機能の導入と並行してチャットボットを導入しました。
2018年2 月に本サービスの運用を開始することで、速やかな情報の案内を実現しています。
検索ボックスから検索した場合は約1分かかっていましたが、対話型である本サービスを導入することで、ユーザーは平均的に約25 秒で検索を終えるように。検索時間は約半分に短縮され、より迅速に製品情報へアクセスが可能となりました。
チャットボットを介することで、迅速で確実な製品情報検索のお手伝いができます。沢井製薬様はもちろん、これからは医療業界全体のスタンダードとなることで、医療関係者の負担やミスが軽減されることをめざします。
従来のチャットボットではユーザーが入力する情報を分析し、会話シナリオを一つ一つ手動で作成しなくてはなりませんでした。沢井製薬様内は本サービスと外部データ(製品情報データベース)を連携することによって、データを更新するだけで会話を生成する機能を搭載。メンテナンス工数を大きく減らしています。
チャットボットに搭載されたAIが、チャットウィンドウに入力された内容を学習。クラウド側で機械学習させることで一般的な会話のゆらぎを吸収します。一方、沢井製薬様の場合、製品に関する誤った回答を行うと致命的な問題となるため、そこからはゆらぎを排除し、正確な情報のみを返せるように構築しています。
サービスの改善や、クラウド側のメンテナンスは日立システムズが窓口となって対応しています。機能的な要望や稼働に関する不具合、納期やコストの相談にも迅速に対応できる柔軟なサポート体制によって、複数の企業による連携を支援。沢井製薬様の要望を叶え、その発展を支えています。
国内製薬企業で初めてのチャットボット導入になるため、沢井製薬様と日立システムズ、開発会社で協創するプロセスを経ました。日立システムズでは3者の共通言語となるシナリオ状態遷移表をつくり、沢井製薬様のナレッジを開発に生かすなど、より製薬会社が使いやすいAIチャットボットを開発しました。
従来のチャットボットでは製品情報のデータベースに変更があるたびに、チャットボットの知識データベースも修正する必要がありました。導入したサービスはデータ連携機能を備えているため、チャットボットの知識データベースも自動的に変更され、メンテナンスの工数を大幅に削減する仕組みを実現しています。
日立システムズならではのきめ細かな導入・運用支援サービスを提供し、運用現場の課題解決を迅速に図ることができました。コスト面では予算に合わせた柔軟な対応を行い、沢井製薬様が望む適切なサービスの実現に尽力しました。
言語学と人工知能の知見を取り入れた自然言語処理技術によって開発された「CAIWAエンジン」と知識データベースによって、ユーザーが入力した文章に対して回答を返し、会話を成立させるサービスです。医療用語シソーラス辞書「T辞書」を組み込んだサービスも提供が可能であり、製品名などを略称や英語で入力した場合でも「T辞書」を参照し瞬時に判断します。製薬の検索のみならず、ユーザーからの質問に対して回答や情報提供を行うさまざまなシーンに貢献でき、顧客満足度の向上とサポート業務の自動化が見込めます。
チャットボットは医療関係者の利便性を向上させるためのツールです。
沢井製薬だけでなく各社への導入が進むことで、医療業界全体の負担軽減が期待できます。
─ そもそもメディカルサイトはどのようなものだったのでしょうか
沢井製薬は、750 品目を超えるジェネリック医薬品を扱っているジェネリック専業メーカーです。沢井製薬のメディカルサイトを訪れる薬剤師さんの主な目的は、製品に関する情報を閲覧することです。薬剤師さんが必要な情報を見つけやすくするため、これまでもさまざまな対応を行ってきました。検索バーもその1つですが、単純なサイト内検索ですと、1つのキーワードに対して膨大な量の情報が表示され、目的となる情報にたどり着くまでに時間がかかってしまう状態にありました。
─ 本サービス導入以前の課題を教えてください。
どうすれば医療関係者に必要な情報を迅速に提供できるようになるか、その課題を明確にする必要がありました。薬剤師さんへ製薬企業のWebサイトについてヒアリングを実施したところ、大きく3点の意見が挙がりました。1点目は製薬会社ごとにWebページのレイアウトが異なり資料を見つけることが煩雑であること、2点目は資料の掲載場所にたどり着いても必要な情報が存在しない場合があること、3点目は製品の宣伝よりも見つけやすさや使いやすさを重視してほしいということです。これらの課題を解決するためには、トップページからワンストップで目的の情報にたどり着けるメディカルサイトを構築せねばならないと考え、Webページのリニューアルとともにチャットボットの導入を検討しました。
しかし、メディカルサイトで公開している製品情報を一つ一つ人手で登録し、会話形式のシナリオを作っていては、漏れやミスが発生してしまいます。メンテナンスの負荷も膨大なものになってしまうでしょう。そこで、データベースと連携できる対話型自動応答AIを搭載した本サービスに白羽の矢が立ったのです。
─ 本サービス導入後の効果を教えてください。
チャットボットについてのアンケートでは、95%以上が医療関係者に役立つとご評価を頂戴しました。検索に要されている時間を調べたところ、検索ボックスからの場合約1分、本サービスを利用した場合約25 秒ほどで、約半分ほどに短縮されていることが見て取れます。さらに、資料が存在しない場合は「見つかりませんでした」と回答されるため、存在しない情報を探してしまう“ 無駄な時間が発生しなくなった”という意見も頂きました。
また、データベースとの連携によって、製品ごとに個別シナリオを作成する必要がありませんでした。チャットボットのメンテナンス負荷は実質ほぼゼロといって良いでしょう。
─ 日立システムズのサポート体制はいかがでしたか。
採用を検討した当時はまだ本サービスも開発途上にありまして、当社がファーストユーザーでした。結果として他のチャットボットよりも応用性に優れた会話が実現できましたので、本サービスについては「協創した」という印象が強いですね。コスト面でも予算に合わせた柔軟な対応を頂きましたし、運用後の保守やサポート面でも迅速に動いてもらっており、本当に助かっています。
─ 本サービスを今後どのように発展させたいとお考えですか。
音声入力への対応を進められれば良いかなと考えています。ディスプレイ付きのスマートスピーカーやタブレット端末の音声認識などに対応できれば、薬剤師さんがPCの前に移動して情報を入力するという無駄な時間を減らせるのではないでしょうか。
チャットボットは医療関係者の利便性を向上させるためのツールです。日立システムズには、沢井製薬だけでなく他の製薬会社への導入も進めていただきたいと考えています。医療業界全体での対応が進めば、薬剤師さんは1つのスマートスピーカーで各社の製品を横断的に検索できるようになるでしょう。日立システムズには医療業界全体が盛り上がるよう、幅広い展開を進めていただきたいと思います。
沢井製薬株式会社
今回の取材にご協力いただいたお客さま
ご協力ありがとうございました。
*本内容は2019年3月時点の情報です。
本事例に記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。
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