タブレット端末の研修企画も整い、全条件をクリア

もう1つ、従来あまりない条件が、「大津市に対して複数回の研修を行うこと」。タブレット端末を使用する市議会議員と事務局員の中には、タブレット端末自体に慣れていない人もいるためだ。研修の企画、実施についてはSEの長谷川が担当した。

「彼はクライアントへのプレゼン経験はあれ、講師として大人数の前で教えることは初めてだったと思います。でも、懸命に取り組んでくれて。大津市議会の皆さまに合わせた全3回の研修プログラムは結果的に非常に高い評価をいただき、信頼関係を築く要因の1つになりました」。

こうして、すべて納得いく形で条件を満たして企画書を提出、プレゼンへ。落札評点1100点満点中、約80％の点数を獲得して、落札に至った。翌月9月から、すぐにシステムの構築や研修会の準備へ。そして2カ月後、タブレット端末は議会デビューの日を迎えた。

秋の通常議会で初登場。タブレット端末の評価は？

2014年11月、大津市議会の通常議会に初めてタブレット端末が登場。北村はじめ、システム導入に携わった日立システムズの面々が立ち会った。「議員の皆さん、問題なくタブレットを使用していて、大きなトラブルもなく無事に終了しました」。

2015年2月の通常議会と合わせ、2回のタブレット端末による議会運営が終了した現在。評価も上々で、4月からは議会運営だけでなく、大津市長や副市長、各部局長などが出席する部長会においても、タブレット端末が利用されるようになった。

「タブレット端末と導入した各システムは、特に議員の皆さまに大好評です。両手に紙袋いっぱいの膨大な資料を持ち歩き、議会中も必要な資料が探しにくい、そんな物理的にも精神的にも大変な状況が、タブレット端末１台で解消された。これはとても大きいことだと聞いています」。

2回の通常議会を通じてあがった要望は、既に改善済み。現在は運用、サポートの段階に移っているが、「もっと活用したい！」と次なるリクエストがあるという。

「運用サポートやメンテナンスは今後も適宜行って、議会運営がより良いものとなるよう尽力したいです。新たな課題は、『議会BCP（業務継続計画）でさらにタブレット端末の機能を生かしたい』というリクエストにお応えすること。今はその提案を考えています」。

全国から視察が殺到！　「議会ICT化」を、大津市から日本各地へ

大津市議会への対応が運用、保守サポートのフェーズに入ったところで、「議会ICT化プロジェクト」に次なる展開はあるのだろうか？

「『議会ICT化プロジェクト』は、もちろん今回だけで終わらせるつもりはありません。この一連のシステムは、どの地方議会でも役に立つ『スタンダードな内容』だと考えています。実際に、問い合わせいただいたり、受注したりしている案件が複数あるんです」。

地方議会によって細かい要望は当然異なるが、日立システムズの強みは「ブロック型の提案」ができること。各地方議会用に必要なシステムや機能を選択、追加、組み合わせる提案が可能である。

北村とともにこのプロジェクトに携わっている営業の岡本も、次なる展開に意気込んでいる。

「地方議会をはじめ公共機関のIT化は、便利だと分かっていても、セキュリティ面やリテラシー面で、なかなか導入に踏み切れていないと耳にします。今回の大津市議会様をきっかけに、まずは近隣地域、そして全国の公共機関に導入していきたいです。今後は、例えば防災時に役立つ機能を追加するなど、私たちのITソリューションでお手伝いできることを、どんどんやっていきたい」（岡本）。

「まずは関西シェアNo.1をめざします。そして各地の日立システムズ支社と連携して、全国に導入していきたい。大津市議会様には年に100以上の公共機関の視察が入っていて、「IT化によって議会運営がより良くなった」と紹介されているそうです。私たちのシステムが、お客さまからお客さまへ広がって伝わって、つながっていったら理想的ですね」。

次なる目標を意気揚揚と語る、2人の営業。それを支えるSEメンバーの物語を、「地方創生の先陣を切る！「IT×地方議会」に挑む精鋭たち～SE・今田・和田・長谷川編～」でお届けする。

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