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インタビュー

スマートファクトリー×ローカル5G

製造業の「未来」をともにつくる

株式会社日立システムズ
産業・流通事業グループ
産業・流通プラットフォーム事業部 第一サービス本部
ファクトリーエンジニアリング部 部長
岸本 城太郎
株式会社日立システムズ
サービス・ソリューション事業統括本部
AS事業拡大推進本部 事業主管
對間 毅一郎

製造業はかつてない変革を迫られている。劇的な環境変化、顧客ニーズの多様化、幾多の社会課題……。それらを乗り越えていくために、「スマートファクトリー」の実現は喫緊の課題とされている。日立システムズが考える「スマートファクトリー」とは、どのようなものなのか。そして、その実現に向けて不可欠とされる「ローカル5G」には、どのような可能性が秘められているのか。二人のプロフェッショナルに話を聞いた。

日立システムズのスマートファクトリー 「自動化」で終わらない
本質的な価値を届けたい

――スマートファクトリーの実現は、製造業にとって喫緊の課題であると言われます。それは、なぜなのでしょうか。

岸本)「変化に即応できる組織」をつくる。それが、スマートファクトリー化の最大の目的です。将来予測が困難なVUCA(※1)の時代、製造業のお客さまは、かつてない変化を迫られています。COVID-19、大規模な自然災害、顧客ニーズの多様化、サプライチェーンの複雑化、技術の劇的な進化、そして、カーボンニュートラルの実現…。それらに柔軟に対応することができなければ、企業は競争力を失ってしまいます。スマートファクトリーとは、ただモノづくりを効率的に、自動化する取り組みではないのです。

――日立システムズが考える「スマートファクトリー」とは、どのようなものなのでしょうか。

岸本)「変化に即応できる組織」をつくるために、経営と製造現場をつなぐ。日立システムズでは、製造業のプロセスを「計画層」「実行層」「制御層」の3つに分類し、変革に向けたソリューションを提案しています。モノづくりの現場にあたる「制御層」では、作業の自動化と現場実績データの可視化によって、人の経験や勘に頼る「カンコツ作業」からの脱却と属人的な技術への依存を低減。品質の均一化と生産性向上にも貢献します。そして、そこで得られたデータを製造ラインの管理・支援を行う「実行層」に統合し、データ分析・活用による稼働率・品質の向上が実現します。そして、最適化された工場のデータを経営に反映すれば、より迅速な経営判断が可能になるわけです。さらには、バリューチェーンを統合することで、リアルタイム発注・製造なども可能になります。

日立システムズが考える「スマートファクトリー」

図:日立システムズが考える「スマートファクトリー」

――スマートファクトリーの実現をめざすうえで、どのような課題が存在するのでしょう。

岸本)経営と工場、開発部門、製造部門、素材や部品のサプライヤー、流通を担うパートナー…。製造業は、さまざまな企業や部門が連携しながら、1つの価値を生み出しています。ですが、その間には連携を阻害する「際(きわ)」が確実に存在していて、その「際」をいかにして埋めるかが大きな課題となるのです。例えば、経営は経営、工場は工場といった形で事業を進める企業はまだまだ多く、現場の状況を知るすべは、月次報告のみといったケースもしばしば。それでは、迅速な意思決定はできません。また、製造部門と開発部門、さらにはサプライヤーとの「際」によって、効率的な部品管理ができていないケースも散見されます。さらには、製造に用いるロボットや製造設備と機器が独自の言語で稼働しているため、MES(製造実行システム)に統合可能なデータを集約しづらいという技術的な「際」も存在しているのです。

――そうなると、改善レベルの話ではなく、企業を変革するレベルの取り組みになりますね。

岸本)スマートファクトリーの実現は、一足飛びにはいかないもの。さらには、お客さまによって抱える課題もさまざまです。だからこそ、私は、日立システムズの総合力がアドバンテージになると感じています。さまざまな技術に精通した人財を抱えているため、お客さまの課題に適切なソリューションを提供できますし、「何から始めればいいのか」とお悩みのお客さまには、ロードマップを描いていくところからのサポートも行っています。そして、何よりも私たちは「自動化できた」「便利になった」で終わることなく、企業変革力・技術力の強化・人財の成長といった波及効果を生むことにこだわっています。お客さまの価値をしっかりと訴求していく。その点は、私たちの強みだと思っています。

※1 VUCA=Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語。社会やビジネスの未来の予測が難しくなる状況のこと

イメージ:日立システムズのスマートファクトリー「自動化」で終わらない 本質的な価値を届けたい

ローカル5Gで未来が変わる 待ち=周回遅れ?
今できる準備をしよう

――モノづくりの現場を自動化するうえで、「高速・大容量」「高信頼・低遅延」「多数デバイス接続」という特性を持った5Gに注目が集まっています。貴社が手がける「ローカル5G」の特長について、お聞かせください。

對間)5Gには2つのサービス形態が存在します。1つは、通信事業者が提供するキャリア5G。これは、誰もが使用できるパブリックなサービスです。そして、もう1つがローカル5G。日本やドイツなどの一部の国では、産業用に公衆網のものとは別の電波帯域を用意し、通信事業者以外の企業や自治体が、自前でプライベートなシステムを組むことができるようになっています。その特長は、クローズドなネットワークを構築できるがゆえの「セキュアな環境」、ネットワークを自由に構築できる「柔軟性」、公衆網が使う電波の影響を受けず、遅延の制御が容易であるがゆえの「リアルタイム性」にあります。

――セキュリティや他の電波の干渉を受けないというのは分かるのですが、「柔軟性」とは具体的にどのようなことを言うのでしょう。

對間)例えば、製品の画像を複数のカメラで撮影して、そのデータから不具合を探そうとなった場合、画像データを送る帯域だけを広くするというようなカスタマイズをすることができます。自由度の高い構築ができるのは、自前のネットワークならでは。「賃貸住宅では壁紙くらいしか替えられないけれど、持ち家なら自由にアレンジできる」といった感じでしょうか(笑)。

――なるほど。スマートファクトリーを実現するうえで、欠かせない特長があると言えそうですが、導入にあたって、どのような課題があるのでしょう。

對間)ローカル5Gは、2019年12月に認可されたばかりの「れい明期のソリューション」であり、現時点では導入コストが高額になります。小規模なもので数千万円、大規模になると億円単位のコストがかかります。ただ、初期段階では通信事業者が使っている装置をそのままローカル5Gへ持ってこようとしていた状況ですので、今後は機能の絞り込みなどによって価格が低廉化することは間違いありません。国の補助金制度や技術の普及によって、2~3年後には導入の実現性が高まってくるのではないかと考えています。今はまだ、二の足を踏んでいる企業が多い印象ですね。

――今は、まだ待ちの状況だと。

對間)ただし、価格が下がるのを何もせずに待つだけでは、確実に「周回遅れ」になってしまうと言えるでしょう。日本と同じように、ローカル5Gのサービスを認可しているドイツや中国では、すでに数多くの実証実験が進められています。「価格が下がった。じゃあ、何をしよう?」では先を越されることになる。だからこそ、お客さまには「今できる準備をしましょう」とお伝えしています。どのような設備が必要なのか。どれくらいの規模が求められるのか。一緒になって、準備を進めていきましょうと。

――貴社の「ローカル5Gアセスメントサービス」はその象徴的なものですね。

對間)導入予定の環境を事前確認し、適切な基地局配置や無線通信システムの設計・構築を支援するサービスです。通常、5Gの電波を扱うには総務省の認可が必要ですが、このサービスは同様の特性を持つ電波を用いているため、実施にあたって認可は必要ありません。さらに、電波状況を測定しにくい屋内でも正確な数値を出せること、数日で結果を出せることも大きな特長です。日立システムズは、このサービスのほかにも、インフラとソリューションの両面から5Gの取り組みを加速させています。「セキュア映像通信サービス」や、「IoTデバイス連携サービス」などはその代表的なもの。お客さまが導入を決断されたタイミングで「確かな価値」を提供する。現在は、そのための準備を進めているところなのです。

イメージ:ローカル5Gで未来が変わる 待ち=周回遅れ?今できる準備をしよう

モノづくりの可能性を切り拓く 価値は「協創」するものだ

――ここからは、スマートファクトリー×ローカル5Gによる可能性について、お二人に語り合っていただきたいと思います。

對間)高精細映像とセンサー情報を活用した遠隔作業ソリューションや、ARを利用した組立製造ソリューションなど、日立システムズが持つ既存のソリューションと5Gを掛け合わせた先進事例が考えられます。でも、こうしたソリューションってお客さまのニーズから生まれるものなのです。どれだけ技術のすごさをアピールしたところで、ピンとくるお客さまはそれほど多くない。大切なのは、お客さまが何をしたいのか。技術はあくまで手段でしかないのです。岸本さんは多くのお客さまと向き合ってきたと思いますが、「5Gを導入したい」という「手段」にフォーカスしたご要望は、ほとんどないですよね?

岸本)そうですね。お客さまが実現したいことがスタートになりますよね。例えば、「AGV(※2)を無線で制御したい」みたいな。「5Gを使いたい」というストレートな要望は、ほとんどありません。

對間)だからこそ、お客さまと対話を重ねて、価値を「協創」していくこと。これが何より大事だと思っています。5Gなら、取れるデータの質と量が大きく変わる。ならば、「御社で、何をしましょうか」と、実現したい未来について話し合っていくわけです。何に困っているのか、何をしたいのかが分かれば、「これまで取得しているデータだけでなく、音や振動のデータを取って、それをデジタル上で再現すれば、デジタルツインによる、より実際に近い精緻なシミュレーションができますよ」といった提案ができるようになりますからね。

岸本)お客さま自体、「次の技術だ」という認識はお持ちですから、それをどのように見せるのかは大事ですよね。速度だけで言えばWi-Fi6などもありますが、「セキュア」「遅延がない」ことは、今の5Gが持つ、大きな訴求ポイントだと思っています。例えば、地方に製造拠点をお持ちのお客さまなどは、製造に関わる素材・部品サプライヤーの工場や流通の拠点が隣接しているケースもあります。それらサプライチェーンのシステムを統合するセキュアなネットワークを構築できれば、大きなメリットが生まれると思っています。

對間)私たちが一丸となって、お客さまの価値につながるソリューションをワンストップで提供する。そんな未来を実現していきたいものですね。まだまだお客さまの中には「無線は切れるもの」という先入観が強く、何かあったときに見えない原因と向き合うことに抵抗を感じる方もいらっしゃいます。けれど、5Gは産業ニーズを踏まえて定められた規格です。そこには、大きな可能性がありますし、今後もさらなる発展が見込めます。私たちは、その特性や、それによって実現する未来を示し、「やってみましょう」とお客さまを後押しできる存在であり続けなければなりません。そのためにも、お客さまの準備をしっかりとサポートし、導入を決断されたタイミングで、価値あるソリューションを揃えておかなければいけませんね。

岸本)それぞれにニーズや課題を抱えるお客さまとともに歩み、寄り添い、悩み、支えていきたいですよね。私自身、いくつかのスマートファクトリー案件に携わっていますが、まだまだ道半ばといった状況です。日立システムズが考えるスマートファクトリー像を具現化し、お客さまのビジネスに確かな価値と飛躍的な成長をもたらす——。その活動を通して、日本の製造業の発展に貢献したいと思っています。

※2 AGV(Automated Guided Vehicle)=自動搬送車

イメージ:モノづくりの可能性を切り拓く 価値は「協創」するものだ

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