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講演レポート

『Wii』の開発者に学ぶ「人のココロの掴み方」

わかる事務所
代表

玉樹 真一郎

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今回は、わかる事務所代表の玉樹真一郎氏に、人の心をつかむ「体験のデザイン」をご紹介いただきました。著書『「ついやってしまう」体験のつくりかた』を下敷きに体験のデザインを紐解き、プレゼンへの応用を考えた内容になっています。ゲームを通して「わかる」のデザインメカニズムやプレゼン資料の組み立て方など、多くのメソッドが詰まっています。

プレゼン力が向上できる、
体験デザインのメソッド

どのように人の心を動かしたら、喜んでもらえるのでしょうか。人の心を掴んで離さないゲーム開発の考え方をベースに「体験のデザイン」=エクスペリエンス・デザイン(XD)を考えます。ゲームの「体験のデザイン」メソッドからプレゼンの極意を紹介します。

Wii開発者に学ぶ体験のデザイン

人の心を掴む、体験のデザインとは?

体験とデザインを組み合わせた言葉、「体験のデザイン」。そもそも、体験とはどんなものでしょうか?

  • テニスをする(体の動き)
  • プレステ5に当選して喜ぶ(心の動き)
  • ツイッターで炎上する(心の動き)

上記のすべてが体験。体験の「体」の字から体を動かさないと体験ではないと誤解されがちですが、心の動きも体験に含まれます。ゲーム業界では、これらの体験をデザインすることが意識的に行われ続けているのだと言います。スマホを一人一台所持する現代、体験のデザイン(XD、エクスペリエンス・デザイン)がビジネス上でも重要な概念になってきています。

プレゼンとは、「どんな風に人の心を動かしたら喜んでもらえるのか」を考えることです。つまりプレゼンは人の心を動かすこと、「体験のデザイン」が重要になるわけです。

図:体験のデザイン

この体験のデザインは、3つのキーワード「直感・驚き・物語」を軸としています。

  • 1.直感のデザイン|シンプルで簡単な体験で「直感」させる
  • 2.驚きのデザイン|予想が外れる「驚き」で疲れや飽きを払拭する
  • 3.物語のデザイン|体験を通してユーザー自身の「物語」を生み出させる

今回は、体験のデザインの基本的な構造である直感・驚きのデザインについて紹介いただきました。

1.直感のデザイン

▼世界一有名なゲームから見える、直感のデザイン

図:スーパーマリオの最初の画面のイラスト

これはスーパーマリオの最初の画面のイラストです。ゲームにとっては一番大切なルールや価値観を伝えなくてはならないのが最初の画面。ゲーム機をヒットさせた立役者、「スーパーマリオブラザーズ」の最初の画面から読み取れるものは何でしょうか? なぜ、このゲームが世界中で売れたのでしょうか? ヒットの理由を企画やデザインの観点から洗い出していきました。

  • マリオは何をしたら勝ちになるゲーム?

初めに、このゲームは何をしたら勝ちなのかという問いかけがありました。会場からは「クッパを倒したら勝ち」、「ピーチ姫を助けたら勝ち」などが挙げられましたが、「体験のデザイン」の観点では誤答なのだと言います。

ここで、ヒントが追加されました。例えば、スマホの画面はぱっと見てどこがタップできるのかを理解できたり、映画のポスターは主演俳優が一番目立つようにデザインされていたりするなど。この画面が「何をすれば勝ちか?」を伝えようとしているならば、この画面で最も目立っているものにコミュニケーションを託しているはずです。

最初の画面をもう一度見ると、赤い帽子をかぶったマリオが目立っています。ここに「体験のデザイン」のポイントがあるようです。

マリオは、「なぜ、画面の左にいて、右を向いているのか?」。デザインは理屈であり、適当に左に、右を向かせて配置したわけではないそうです。マリオの背景にも注目すると、左側には山がそびえ、右側には明るい緑の低い草があり、左側が窮屈にも見えてきました。

図:右に行く

答えは、「右に行く」と勝ち。このようなルールが自然と理解できるように、画面がデザインされています。アートとは違い、理屈と意図を持ってつくられているのがデザインなのです。

  • ゲームは「わかる」から遊ぶ?

図:ゲームは「わかる」から遊ぶ?

人は、なぜゲームで遊ぶのでしょうか? 実は「面白いから」ではないのだそうです。そもそもプレイヤーは、ゲームをはじめてマリオを右に歩かせただけでは、まったく面白いと感じていません。ゲームの遊び方が「わかった」から遊び、遊んでいるうちに面白くなっていくという順番なんですね。

図:わかる>商品の良さ

ここで、新しい問いかけ。「商品を理解する(わかる)」ことと「商品の良さを伝える」ことのどちらが大事ですか? やはり、商品を理解しなくてはどのように関わればよいのかユーザは判断できません。ぱっと見た瞬間に何をすればいいのかが直感的にわかることを優先するべきなのだということです。

図:左に行く

ここから、こうした「直感のデザイン」を、より具体的にプレゼンに応用する方法を考えていきました。

▼プレゼンを面白くするポイント

図:プレゼンを面白くするポイント

  • 大事なことは、初めのうちに

聞き手の集中力は、最初と最後に高くなると言われているそうです。これを学習心理学では「初頭効果(系列位置効果)」と呼びます。そのため、プレゼン冒頭では自己紹介などで使わずに大事なことを使うべきなのだとか。

  • 情報はシンプルに

プレゼン資料には、スライデュメントと呼ばれるものがあります。スライドだけれども、情報が詰め込まれ過ぎてドキュメントになってしまっているものを揶揄しています。なんでもかんでも情報を詰め込むと、わかりにくいプレゼン資料になってしまいます。情報が多くなる場合はマンガのコマ割りのように分割して情報をスライドにまとめることが必要だと言います。

図:情報はシンプルに

そして、直感のデザインをプレゼン資料に簡単に応用する方法は、接続詞でつなぎ未来を予測させるような骨子を作ることだそうです。ここで注意したいのが、「次に」を使用してはいけないということ。この接続詞だけはそのあとに何が来るのか予測させる力を持っていません。逆に言えば「次に」を削るだけでもプレゼン資料は一気に面白くなります。

まとめると…
直感のデザインでプレゼンテーションをより良くするには

  • ページの内容を予測させる|接続詞でつなげる
    ※ただし、「次に」は使わない。
  • 大事なことは最初に|重点はプレゼン冒頭と最後にまとめる
    ※初頭効果を応用して、重点の位置を考える。
  • 情報はシンプルに|一つのスライドに情報は一つ。
    ※情報が多いスライドは、マンガのコマ割りのように情報を分割して分散させる。

図:直感のデザイン

自分の考える良いこと、面白いことを話せば相手は理解するはずだというのは、プレゼンターのエゴ。何よりも、相手が「わかる」ことが大事だと言います。そのようにプレゼンを考えるだけで一気にプレゼンは面白くなるそうです。

2.驚きのデザイン

▼人はなぜゲームを遊び続けてしまうのか?

なぜ、あんなに眠くなってウトウトしてまでゲームを遊び続けてしまうのでしょう。ここでは、ドラゴンクエスト1を事例に紹介されました。

しばらくストーリーを進めていった後に、たどり着いた街の町民のセリフ。
「おいで、ぼうや。パフパフしてほしいなら50ゴールドよ。」
なぜ、シリアスな冒険の中に「下ネタ」を入れたのでしょうか? もちろん、ここにもデザイン(理屈)がありました。

ゲームを通して操作方法を直感的に学びながら遊べますが、ずっと「直感のデザイン」が連続します。予測と理解が続く、いわば「学ばされっぱなし」の状態です。「直感のデザイン」の連続はテンションを上げてくれますが、所詮は同じこと(学習)の繰り返し。同時に、疲れと飽きも増していくと言います。

図:タブーのモチーフ

科学的にも証明される疲れと飽き(馴化と般化)を解消させるために、デザイナーは意図的に「パッと見た瞬間に、ギクッとするもの」を放り込んできます。そういうふうに日常を壊す意味で「タブーのモチーフ」と呼んでいました。こうした「驚きのデザイン」によってアクションゲームに比べてプレイ時間が長いRPGも最後まで遊び続けてもらうことができるとか。

図:予測が当たる / 外れる

プレゼンでも面白い話をずっと続けることではなく、最後まで集中力を切らさずにゴールまでたどり着かせることが大事。そのためには、タブーのモチーフのような驚きを「直感のデザイン」の連続に組み込んでいきます。基本的には予測が当たるけれど、たまに外れるという構造がプレゼン上手になるためのコツだそうです。

図:予想が外れる

つまらない企画と明らかな誤りを冒頭に説明し、それを否定する。ほかにも失敗談を語る、嘘をつくなど、こうした予定調和を崩す話も「驚きのデザイン」になります。そこにタブーのモチーフをしっかり盛り込むと良いと言います。例えば、沈黙を上手く入れ、相手の予測を裏切ることで聞き手の集中力を上げる効果があるそうです。そのため、プレゼンも間に沈黙を適度に入れる方がいいと言います。

図:驚きのデザイン

まとめると…

驚きのデザイン

  • 誤りを語れ
  • タブーのモチーフを盛り込め

ゲームのさまざまな工夫を「体験のデザイン」として読み解いてきた、今回の講演レポート。誰もが知るゲームだからこそ、人の心を動かすデザインの理屈がわかりやすかったと思います。そして、今すぐ使えるプレゼンのコツも発見できたのではないでしょうか。皆さんも「わかる」から「驚き」を与えられるように、今回のプレゼン技術を実践して、人の心を動かす新しいテクニックを、ぜひご活用ください。

※ 本記事に記載の会社名、製品名、サービス名はそれぞれの会社の商標または登録商標です。

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