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株式会社 日立システムズ

【第3章】第4回 稲尾のキューピッドになる

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(マンガの続き)

学習塾の「デッドスペース」を生かせ!

あすな:「な、なんで麗子さんがここに??」
あぜんとするあすなに、ナミはケロッとして答える。
ナミ:「なんで…って、昨日2人で話し合ったじゃない?そのあと、やっぱり本人に居てもらったほうが話が早いと思って、電話をしておいたってわけ。社長、あとはお任せしてよろしいですか?」
ナミが日比野に話を振ると、日比野は軽くうなずいて、
日比野:「ああ、まあここまでできれば、上出来だ」
と言うと、話を切り出した。あすなは呆然として行方を見守るしかない。
日比野:「さて、水野さん…すでに概要は2人から伺っていると思いますが、私のほうで補足をさせていただきます」
日比野はあすなが考えたアイデアを基に、「ビジネス・キューピッドとしての提案」を以下のように説明した。

  • リトミック教室運営にあたり、水野麗子氏を社長とする新会社を設立する。設立に当たり、水野麗子氏と株式会社ビジネス・キューピッドが出資する。
  • 「稲尾カレッジ」の教室のうち1室をリトミック教室として賃借する。
  • 資本金は、教室の改築費用や稲尾氏への敷金の支払いのほか、当面の運転資金として活用する。
  • その他、リトミック教室と「稲尾カレッジ」で広告宣伝その他の提携を図り、効率的に集客活動を行う。

あすなは日比野のよどみない説明を聞いて、いつの間にそこまで考えていたのだろう、と心底驚いたが、いっぽうの麗子は満足げにうなずいた。
麗子:「ええ、とても良い話だと思います…稲尾先生さえ良ければ、喜んで」
あすな:「えっ?…稲尾『先生』…?」
あすなが思わず訊くと、麗子は
麗子:「ええ、私は稲尾先生の教え子なのよ」
と言って、少し顔を赤らめるようにした。そのことは日比野も初耳だったようで、
日比野:「これは驚いたな…だとしたら話は思いのほかスムーズに進むかもしれません」
そう言うと、あすなに向かって
日比野:「ちょっと気が早いかもしれないが、善は急げだ。稲尾カレッジに行って話をつけてこよう。この話をすれば喜んでもらえるはずだ」
といい、いそいそと支度を始めた。あすなは慌てて日比野に従った。

学習塾の「デッドスペース」を生かせ!

「稲尾カレッジ」に向かう途中、あすなは日比野に尋ねた。
あすな「あの、…なんで社長が一緒なんですか?自分が任せてもらってるはずなのに」
日比野は「ああ、それはそうなんだが…」と前置きして、
日比野:「水野麗子は俺が自分で担当していたからな…リトミック教室を自分で立ち上げたいという話をもらって、場所を探していたのさ」
あすな:「…私が何もしなくても、今回のことを思いついてたってことですか?」
日比野:「当たり前だ…だが、俺と同じ答えにたどり着いたんだから、褒めてやろう」
あすな:「イヤな言い方…!」
2人はそんな会話をしながら、足早に「稲尾カレッジ」へと歩みを進める。

予想通り、稲尾の反応はとても良かった。
稲尾:「なるほど、水野くんのために教室を役に立てられるし、賃料をもらえるなら経営も安定します。言うことなしです…ただ、設備投資が必要ということですが、その間生徒たちはどうなるんでしょうか?」
稲尾はどこまでも生徒思いの先生なのだろう。日比野は営業用に磨き上げた笑顔を稲尾に見せると、
日比野:「心配は要りません。幸い、『稲尾カレッジ』には教室が3つありますから、残りの教室で授業をしていただけます。それに、工事は昼間に行うものなので、騒音で授業ができないということもありませんよ」
と言った。日比野の説明を聞いて、稲尾はホッとしたようだ。

稲尾:「道草さん、昨日突然走ってどこかに行ってしまったので、どうしたのかと思いましたが…こんなことを思いついていたんですね。驚きました…でも、ありがとうございます」
稲尾はそう言ってあすなに向かって頭を下げる。
あすな:「あ、いや…私はちょっとだけ思いついただけで、後は社長が…」
しどろもどろになって受け答えをしているあすなを気にも留めず、日比野が言葉を継いだ。
日比野:「稲尾カレッジの経営には、2つの制限がかかっています。一つが生徒を中学生に限定しなければならないという世代の制限。そして、放課後の限られた時間に教えなければいけないという時間帯の制限です。その2つの制限の外側にある『デッドスペース』を生かそうと言うのが今回の狙いです」
稲尾:「ほう、デッドスペースですか」
日比野:「ええ…学習塾の経営というと、生徒をいかに集めるか?という点に注意が向きがちです。確かに広告を出せば一時的に生徒を増やすことができますが、これから十数年、長い目で見れば子供たちは少なくなっていきますから、ジリ貧を避けるためにはほかの収益源を確保しておきたいところでした」
稲尾:「ええ、塾の経営しか頭になかった私には、空き時間に教室を貸すなど、全く思いつかないアイデアでした」
日比野:「ただ賃料を得るだけではなく、今回取り入れるリトミックは幼児教育として注目を浴びていますから、先ほどの世代の制限を取っ払うことができます。子供たちはいずれ小中学校に進学するので、『稲尾カレッジ』としてみれば、生徒の囲い込みにも役立ちますから、非常にシナジーの高い組み合わせなんです」
稲尾はただただ、日比野の言葉に感嘆している。そして、あすなはその社長の言葉を聞きながら、自分の思いついたアイデアがそこまでの意味を持っていたことに驚いていた。

もう一つのキューピッド

2週間後。
「稲尾カレッジ」第3教室の防音設備工事が始まったという知らせが、ビジネス・キューピッドの元に届いた。
あの後、稲尾と麗子はスムーズに契約を整え、2つのビジネスは無事、結びつくことになった。あすなは、自分の考えたアイデアが、こういう形で目に見えるものに変わっていくことに、この上ないやりがいを感じていた。

あすな:「本当に良かったですね…無事工事が始まって」
ナミ「ふふふ、あすなちゃん…知ってる?」
あすな:「なんですか?」
ナミの意味ありげな微笑みに、怪訝とした表情を浮かべるあすな。ナミはあすなの耳元で、
ナミ:「麗子さんね…中学生のとき、稲生先生が憧れの人だったんだって。それで、どうやら2人、いま良い感じらしいのよ!」
とささやいた。
あすな:「ええっ!?素敵!!」
思いもかけず、あすな達はもう一つの意味で、稲尾にとってのキューピッドになっていたのだ。2人の恋の話に花を咲かせる女子達を見て、日比野は顔をしかめる。

日比野:「お前たち…もう少し静かにしろっ!」
日比野が苛立ちを見せたその時、オフィスのインターホンがなった。あすながドアを開けると、長身の男が立っている。
あすな:「ど、どなたですか…?ちょ、ちょっと勝手に入らないで…!」
あすなの制止を聞かず、男は無遠慮にオフィスへと入っていくと、社長のデスクの前に仁王立ちになった。
日比野:「…また来たのか」
男:「日比野さん、今日こそは良い返事をいただきたい…うちの会社に、もう一度戻ってきませんか?」
ビジネス・キューピッドのオフィスに、突如、不穏な空気が充満していった。

つづく

【クイズ問題】

あすなは学習塾の「昼間の時間帯」というデッドスペースを利用して稲尾カレッジを救う道を思いつきました。このような、従来の経営では十分に活用されていなかったデッドスペースを有効に活用することで、収益を拡大することに成功した事例は色々とあります。それでは、次の選択肢のうち、デッドスペースの活用事例に「当てはまらない」ものはどれでしょうか?

  • ア)居酒屋チェーン店がランチタイムに定食を提供する
  • イ)24時間営業のファミレスで、深夜の時間帯に清掃を行う
  • ウ)製造業が安い人件費を求めて海外に工場を建設する

クイズを解く

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この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。
 

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