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株式会社 日立システムズ

【第2章】第3回 あすな、美容室を視察する

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(マンガの続き)

あすな:「ナミさーん、聞いてます?」
あすなが何度かそう呼びかけて、ナミは我に返った。
ナミ:「あ…ごめんなさい、どうかした?」
あすな:「ボーテの競合店舗は、どこにあるんでしょうかね?」
ナミ:「あ、そうだったわね…どちらもこの近くだわ」
ナミはそう言って、通りを駅に向かって歩いていく。1分もしないうちに、『グラーヴェ』の店舗が見えた。
ナミ:「あのコンビニの上にあるのが、『グラーヴェ』ね」
あすな:「あの店、見たことある…」
ナミ:「チェーン店だからね。最初は繁華街に出店していたんだけど、ここ1年くらいで住宅街にも増えてきているわ。あの店も去年できたものね」
2階の様子を伺うと、パラパラと客が入っているようだ。

あすな:「なるほど…で、もうひとつの…なんでしたっけ?」
ナミ:「『スタイル・アルファ』。こっちよ…」
ナミは駅前のメインストリートから右に折れ、小道に入っていく。
ナミ:「あそこ…素敵でしょ?」
ナミが指差した先は、東南アジアの国々を思わせるエスニックな雰囲気のお店で、入口に小さく「Style Alpha」と書かれている、隠れ家風の美容室だった。
あすな:「へえ、可愛い…」
あすなはドアの小窓からそーっと中をのぞいた。大きな店ではない。カット席が3つ、シャンプー台が2つ…お客さんは1人だけ入っていた。

美容院の客層を見極める

ナミ:「どう?気づいたことはあるかしら?」
ナミの問いに、あすなは腕組みをしながら「うーん…」と唸った。
あすな:「あの2つの店には、どちらもお客さんが、入ってましたけど…ボーテにはまだ誰もいませんでしたよね?」
ナミは「そうね」と言って続けた。
ナミ:「さらに言うなら、2つのお店に入っていたお客さんは主婦だったわ」

あすな:「えっ…そんなことが分かるんですか?」
ナミ:「もちろん断言はできないけど、私たちより上の年代だったし、この時間にお店に入れるんだから、仕事をしていない可能性が高いわね」
あすな:「なるほど…そうですよね」
あすなは相槌をうちながら、ナミの洞察の鋭さに驚いていた。
あすな:「すごいですね、ナミさん…私そういうの全然気づかなくて」
目を丸くするあすなを見て、ナミは少し得意げに笑った。
ナミ:「ふふふ…さっき、あすなちゃんに教えたこと、覚えてる?売上を2つに分解すると、どうなるかしら」

あすな:「来客数と平均客単価の掛け算、ですよね」
ナミ:「そう。そして、私たちは来客数がなぜ減ったかを考えるために、ここまで来ているんでしょう?だったら、来ているお客さんに目を向けないとね」
ナミの指摘はもっともだった。
あすな:「そっかあ…考えながら見ないと、意味がないんですね」
ナミ:「そうよ。こうやって実地で見るものも情報の一種。だからこそ、仮説を持って接しないとね。どう?あすなちゃんは何か仮説を持ってる?」
突然そういわれて戸惑ったあすなは、少し目をパチパチさせながら、

あすな:「うーんと、…ここに来る前に、競合店の地図を見てナミさんが『どちらも良い立地だわ』って言ったじゃないですか?結局のところ、競合店は立地のいい場所にあるから、お客さんを『ボーテ』から奪うことができたんじゃないかと思うんです」
あすななりによく考えた答えだが、ナミは少しうなずいただけだった。
ナミ:「いい線をいっているわね。確かに立地は大事な要素。じゃあ、次のことを考えてみましょ?立地がわるいからと言って、『セゾン・ド・ボーテ』を引越しさせるわけには行かないわよね?今度は、解決策につながる仮説を持ってみるといいわ」
あすな:「ああ、そっかあ…難しいですね」
あすなは少しがっかりした表情を見せたが、ナミは笑顔を崩さず、
ナミ:「いいのよ、そうやって色々と考えていればちゃんと答えにたどり着けるわ…で、ほかに仮説はある?」

あすな:「うーんと…やっぱり新しい店はオシャレですよね…皆がそちらに行ってしまう気持ちも分かるかも。でも私は『セゾン・ド・ボーテ』が好きだなぁ。なんだか落ち着く感じがして…何でだろう?…あ、なんだかもう仮説でも何でもなくなってきちゃった…あはは」
自嘲気味に笑ったあすなは、次の瞬間、「セゾン・ド・ボーテ」から出てくる女性を見つけた。
あすな:「あ、あの人は?」
ナミ:「あの人が、この店の店長の中山美季さんよ。オーナーの娘さんでもあるわ。きれいな人でしょ?」
年齢は30代半ばくらいだろうか。白いシャツに黒のパンツ…たいていの美容師と同じ出で立ちだが、シルエットがすらっとしていて、華がある。美季はブリキのじょうろを使って、店先の花に水遣りを始めた。その姿は颯爽としていて、とても年間数百万円の赤字を出しているお店の責任者とは思えない。
あすな:「素敵…」
ナミ:「ほんとね。でも、このままでは『セゾン・ド・ボーテ』もあと1年以内に倒産するわ」
あすな:「えっ…」

ナミ:「社長もそう言っていたでしょ?私たちが救うのよ」
ナミの言葉は、冷酷な響きをもってあすなに伝わった。あすなはゴクリと生唾を飲み込んだ。それはあすながはじめて味わった、「仕事の重圧」と言ってもいいかもしれない。自分が何に気づけるかで、この素敵な美容院の、そして美季の将来が変わってしまうのだった。
あすな:「ああ、何とかしなくちゃ…でも、どうしたらいいか分からない」
妙案の浮かばないまま頭を抱えるあすなに、ナミは優しく
ナミ:「あすなちゃん、焦る事はないのよ。今日の午後までには、『気づいたこと』をまとめておけばいいんだから」
そう言いながらあすなの肩を叩き、
ナミ:「さあ、そろそろ事務所に戻りましょう…ここに来たおかげでアイデアも浮かんだから、それを整理すれば何とかなるわ」
と言った。

あすなのアポ無し訪問…その「秘策」とは?

あすな:「え、ナミさんにはもうアイデアがあるんですか?」
ナミ:「ふふ、まあね。でもそれは、あすなちゃんがここに誘ってくれなかったら思い浮かばなかったことよ。だから手柄は半分こね」
ナミはそう言ってあすなを励まそうとしたが、あすなはうなずいている。
ナミ:「…どうしたの?」
あすなが再び顔を上げる。まるで何かを決心したような表情だ。

あすな:「やっぱり、私この店で話を聞いてみたいんです。せっかく来たんだし。いいですよね?」
ナミ:「え…でも13時までに社長に報告する内容を考えないと…」
あすな:「お願いします!事務所には歩いて10分で帰れるじゃないですか…」
ナミはあすなの頑固な一面に驚きながら、諭した。
ナミ:「あすなちゃん、それは無理よ。いくら今は来客がなくても、アポをせずに営業時間中に乗り込むなんて、失礼になるわ…」
あすなはようやく諦めた様子で、
あすな:「そっか…そうですよね。分かりました」
そう言ってとぼとぼと歩き始めた。

あすな:「私、この店、凄くいい感じだと思うんです。お店に入れば、もっと色々分かるかもしれない…」
落ち込んでいる様子のあすな。ナミは励まさなければと思い、優しい声であすなに語りかけた。まるで妹か、娘の機嫌をとるような口調だ。
ナミ:「あすなちゃん、気持ちはよーく分かったわ。午後のミーティングのあと、美季さんに電話してアポイントを取りましょう。また来ればいいじゃない。お客さんが少ない時間帯にね、分かった?」
その台詞を最後まで聞いたとき、ふとあすなの足取りが止まった。
あすな:「そうか…その手があった!」
あまりに大きな声に、ナミ…そして周囲に居た人がビクッとしてあすなのほうを見る。
ナミ:「ど、どうしたの、あすなちゃん?」
あすな:「…アポなしでお店に入る方法、あるじゃないですか!!」
あすなはそう言うと、突然いたずらっぽい笑顔を作った。

つづく

【クイズ問題】

美容室「セゾン・ド・ボーテ」を救うため、現地調査を始めたあすなとナミ。2人は「来客数×平均客単価」という数式を意識しながら解決策を探っているようです。「来客数」と「平均客単価」。いずれか1つを上手に増やすことができれば、売り上げが増加するわけですが、次の例のうち、ある飲食店で「来客数」を増やすために実際に行われ、大成功した事例はどれでしょうか?

  • ア)店舗を広くして、客席数を増やした
  • イ)店舗のソファを新しくして、座り心地を良くした
  • ウ)思い切って椅子を置くのをやめた

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この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。
 

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