
コラム
公開日:2025年3月25日
海外拠点を持つ中小企業にとって、各拠点の業務を効率的に管理し、グローバル市場で競争力を保つことは、成長を実現するための重要なステップです。本記事では、ERPがどのようにこれらの課題を解決するかを具体例を交えて紹介し、特にSAP Business Oneが中小企業のニーズに適したソリューションである理由を解説します。
目次
海外拠点を持つ中小企業において、拠点ごとの売上・生産・在庫などの経営情報は迅速な意思決定を行ううえで必要不可欠なものです。
しかし、日本と海外とで別々のシステムを使用している場合には、リアルタイムで現地の情報を確認するのは難しいでしょう。
中小企業では、海外拠点一つひとつの業績が会社全体に与える影響が大きいため、ERPの導入はスピード感を持った経営判断に役立つといえます。
この点が、ERPを導入した方がよい理由といえるでしょう。
ERP(Enterprise Resources Planning)は、人・モノ・金・情報といった企業の保有する経営リソースを有効に活用するための仕組みで、導入することにより情報の一元管理が可能です。
経営の意思決定を行うにあたっては、海外拠点を含む企業全体の業績把握が重要ですが、拠点独自のシステムを導入している場合には、現地スタッフからの報告を待つ必要があり、経営判断が遅れてしまうリスクがあります。
ERPを導入すれば、国内拠点はもちろん海外拠点についても売上・生産・在庫などの経営情報をリアルタイムで把握でき、企業全体での経営状況の可視化が可能です。
ERPを導入するときに海外拠点を持つ中小企業が抱える課題を3つ紹介します。
ERPは、海外拠点のデータを共有、システム連携することで、日本国内からでも最新の経営状況が把握でき、迅速な経営判断に役立ちます。
しかし、現地法人へのERP導入にあたっては、時間とコストがかかることが課題といえるでしょう。
ただし、ERPのライセンス形態として、近年サブスクリプション型のサービスも広く普及しており、毎月のコスト負担を抑えつつERPの導入が可能となっています。
昨今、さまざまなERPのサービスが提供されており、どのERPが自社に適しているのかわからない方も多いでしょう。
この場合、ERPを導入する国を明確にしたうえで、その国に対応しているか事前に確認するのが重要です。
また、今後も海外展開を進め、さまざまな国で事業を行う可能性がある場合には、複数の国に対応したERPを選ぶ必要があります。
国内で使用しているERPを海外でそのまま利用できれば、海外拠点のデータをひとつのシステムで一元管理できるため理想的といえます。
しかし、日本製ERPの多くは外国の税制、商習慣、通貨に対応していないため、グローバル展開している外国製のERPの中から拠点がある国や地域に対応したERPを導入する必要があるでしょう。
ERPを導入することで、具体的にどのようなことが可能になるでしょうか。ここでは、ERPの代表的な機能を5つ解説していきます。
生産管理機能は、製造業において生産活動のプロセス全般を管理するための機能です。生産活動では、製造する製品の生産計画を立案し、生産する製品・数量・生産時期・必要原材料・人員配置を含む製造工程、物流などを決定します。また、検査結果をもとに品質管理、目標の原価と実績とを比較した原価管理、差異がある場合の原価分析など、業務の範囲は多岐にわたります。
生産管理機能を活用すれば、生産活動に必要な情報が一元管理できることから、効率的な生産・品質向上・納期の遵守、短縮化・製造原価の削減などが期待できます。
財務会計機能は、日々の取り引きを仕訳として登録することで総勘定元帳や補助元帳など各種帳票の出力、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表の作成を行える機能です。販売管理や購買管理の機能と組み合わせれば、仕訳の自動化が可能で経理・財務部門の業務効率化が期待できます。
一方、管理会計機能は、企業内に蓄積されたデータをもとにグラフなどの可視化されたレポートの作成、予算実績分析、資金繰り管理が行える機能で、経営者およびマネジメント層が迅速で適切な経営の意思決定を行うのに役立ちます。
販売管理機能は、自社の行うすべての販売活動をシステム上で一元管理できる機能です。企業の販売活動は、見積書の提出・受注・出荷・売上計上・請求書発行・入金確認といったさまざまな業務で構成されていますが、販売管理の機能を利用すれば販売活動のすべてのプロセスを効率的に管理できます。
担当者間・部門間でのデータ共有・分析がスムーズに行えるのに加え、担当者の業務負荷軽減も期待できるでしょう。
購買管理機能は、製品の製造やサービスの提供に必要な原材料や物品の見積もり依頼、発注処理、入荷指示、検収、仕入れ計上などの購買プロセス全体を管理する機能です。
購買業務では、立案した生産計画にもとづき、必要な原材料や物品を必要なタイミングで調達する必要があり、購買管理機能を活用することで業務を円滑に進めることができます。
営業管理機能では、顧客の基本情報、購入履歴、商談履歴、問い合わせ履歴、与信など顧客に関するあらゆる情報を一元管理できます。
情報がデータ化されているため、検索や一定条件のもとでの抽出も容易で、顧客の属性に応じたマーケティング施策を実施するときにも役立つでしょう。
顧客情報は、担当者個人が保有するのではなく、会社の共有資産として蓄積されていくため、担当者不在時の顧客対応や異動時の業務引き継ぎもスムーズに行えます。
ERPを選ぶときのポイントを5つ紹介します。ERPは一度導入すると、かんたんに入れ替えができるものではないため、自社の目的を達成できるか慎重に判断する必要があります。
新たなシステムやソフトウェアを社内に導入する場合には、コストをできるだけ抑えつつ、短期間で導入し業務で実際に活用するのが重要です。
従来一般的であった、自社でサーバーやネットワーク回線を用意しシステムを構築する「オンプレミス型」は、カスタマイズ性能に優れる一方、導入まで時間がかかり導入費用も高額になる傾向がありました。
これに対して近年主流となっている「SaaS型(クラウド)」は、サービス提供会社のソフトウェアをインターネット経由で利用する仕組みです。自社でシステムを構築する必要がなく、料金体系もサブスクリプションの形態をとっているものが多いことから、短期間かつ低コストでの導入が実現可能です。
ERPを選定するときには、丁寧な導入支援サポートが用意されているか事前に確認するのが重要です。
ERPの導入では、「要件整理」からはじまり「適用設計」「基本設計」「開発」「検収テスト」を経て「本番稼働」となるのが一般的です。
専門知識が必要なため、社内人員だけではスムーズな導入は難しく、豊富な製品知識・導入ノウハウを持つベンターの協力が不可欠といえます。
海外拠点でERPを導入する場合には、海外拠点のある国およびその地域の会計制度・法規制などに対応しているものを選びましょう。
外国では、日本とは異なる独自の会計制度・税制・法規制が行われていることも多く、特に会計・税務の違いが顕著です。
したがって、日本で使用している国産の会計システムをそのまま海外拠点で使用するのは困難といえます。
将来、海外拠点の設置および国内外の拠点間でのERPの活用を予定している場合には、グローバル展開している外国製のERPがよいでしょう。
海外展開が順調に推移し、海外拠点の拡大を行う際に柔軟に対応できるERPを選びましょう。
海外拠点を新たに設けるにあたっては、拠点間でデータを共有する仕組みが必要ですが、現地でのERP導入に長期間かつ多額のコストが必要になると、場合によっては導入を断念せざるを得ません。
今後、海外拠点の拡大や追加を想定しているのであれば、あらかじめ拡張性の高いERPを検討する必要があります。
事業の海外展開を進めており、今後もさまざまな国や地域に拠点を拡大していく場合には、ERPが多言語・多通貨に対応している必要があります。
もし、多言語対応しておらず日本語対応のみの場合、外国人の現地スタッフは日本語でデータの入力、出力帳票もすべて日本語表記となり、業務効率の悪化・処理の正確性の低下などが懸念されます。
多言語に対応していると、たとえば現地スタッフがフランス人の場合には、フランス語入力、出力帳票もフランス語に切り替えられるため、業務の効率化と正確性の向上が期待できます。
また、多通貨対応も海外拠点では重要です。日本円にしか対応していない場合、外貨建ての取り引きはシステム外で為替換算を行い、日本円の金額にしたのち入力する必要があり、手間がかかるうえミスが発生しやすくなります。
多通貨に対応していれば、外貨金額を直接システムに入力でき、効率的で正確な処理を行えるでしょう。
SAP Business One は、財務会計、販売管理・仕入管理・購買管理・在庫管理、顧客管理などの基幹業務を統合した全世界で採用されているERPパッケージです。日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、オランダ語など、28か国の言語に対応しています。
日立システムズでは、120社以上、20か国以上のSAP Business One提供実績を持ち、豊富な導入経験にもとづくノウハウや、アドオンテンプレートの活用等により、コストや導入期間のコンパクト化を実現しています。
ここからは、SAP Business Oneの特長と強みを紹介します。
SAP Business Oneでは、永久ライセンス(一括買取)とサブスクリプションライセンスの2通りのライセンス提供形態を用意しています。
また、利用するユーザー数・機能によって4つのプランがありますので、利用環境にあわせて適したプランをお選びいただけます。
利用した分の費用を支払うサブスクリプション型のライセンスであれば、コストを抑えつつERPパッケージの導入が可能です。
SAP Business Oneは、アジア圏を中心に世界で170か国以上の国で導入済みで、80,000社以上、1,200,000人以上のユーザーが利用しています。
グローバルで圧倒的な実績を生かしながら、当社を含め、世界中に存在するパートナーが導入・運用を支えます。
また、世界各国に技術者(現地コンサルタント)がおり、各地域のSAP Business Oneベンダーと協業し、ITガバナンスを効かせた確実なローカライズ対応を実現しています。
パッケージ対応したカスタマイズツールを利用することで、柔軟なシステムの拡張が可能となり、さまざまな業種・業態の要件に対応したシステム導入を実現します。
お客さまのご要望に沿ったカスタマイズが可能であり、カスタマイズした内容はソフトウェアのバージョンアップ後もそのまま適用されます。
カスタマイズ例としては、各種伝票・マスターに対する項目追加、レイアウト変更、顧客ごとに設定可能な帳票の作成などがあります。
SAP Business Oneの導入によって、自社の課題解決を実現した事例を3つ紹介します。
医療機器製造業を営むA社では、業務・拠点ごとにシステムが分断されており、システムと業務運用とがかい離し余剰在庫になりがちという課題がありました。
そこで、SAP Business Oneを導入して、複数倉庫を同一システムで一元管理できる体制を整え、会社全体の在庫を把握することで、余剰在庫の削減に成功しています。
また、業界の商習慣(さまざまなパターンの売価設定や値引対応など)への対応が属人化しているという問題は、商習慣に対応できるようにカスタマイズをしつつ、可能な限りパッケージ標準機能にあわせることで、業務プロセスの標準化と統制強化を実現しました。
化学製品卸を事業とするB社では、既存システムの機能が古く、最新のローカル要件に未対応の状態でした。
このため、SAP Business Oneの導入と現地ベンダーのローカルアドオンテンプレートによって、最新のローカル要件に対応しました。
また、現地法人の業績確認に時間がかかるのに加え、正確性にも問題がありましたが、SAP Business Oneにより日本法人から直接、現地法人の業績確認が可能となり、正確性の問題も解消しています。
産業機械製造業を営むC社では、ホストシステムを中心とする複数システムが個別最適の状態になっており、経営・業務ともに非効率が発生していました。
そこで、SAP Business Oneのパッケージをベースとした業務再構築(BPR)を行い、国内製造子会社を含めた全体最適化を達成しています。
また、グローバル展開を支える情報基盤をいかに整備するかが課題でしたが、クラウドによりグローバルで利用可能、かつ海外現地法人と一気通貫で連携可能な情報基盤を実現し課題を解決しました。
本記事では、中小企業のERP導入時の課題、ERP導入によってできること、ERPの選び方、SAP Business Oneの特長と強み、導入事例などについて解説しました。
グローバル市場での競争が激化する中で今後も競争力を保つためには、迅速な意思決定を可能とするERPの導入が大変重要です。
SAP Business Oneは、豊富な導入実績を持ち、コストを抑えつつ、将来の海外拠点拡大にも対応可能な拡張性を備えていますので、さらに情報を知りたい方はお問い合わせ・資料請求が可能です。
ご興味のある方は、ぜひともこちらからご連絡ください。
このコラムを書いた人
日立システムズ
プロジェクトディレクター
デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向けて
顧客管理・販売管理・財務会計など各業務のビジネスプロセス統合、
新たなビジネスモデルへの柔軟な対応を支援します
日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。