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「流通・卸売業にとってのクラウド利用のメリットを考える」

失敗事例から学ぶ基幹システム構築講座 「中堅・中小企業のSaaS・クラウド活用を考える」編

2013年4月、「TENSUITE」は、日立 製造・流通業向け基幹業務ソリューション「FutureStage」に統合しました。
※本コラムに記載の商品情報は初掲載時のものです。

流通・卸売業にとってのメリットとは

(クラウド2)
「流通・卸売業にとってのクラウド利用のメリットを考える」
中堅・中小規模の流通・卸売業にとっても、SaaS、クラウドは雲の上の存在ではありません。むしろ限られたIT投資の中で、スピーディで高度な対応が求められる中堅・中小規模の企業こそ積極的に取り入れなければならない分野といえます。具体的にどのような業務をSaaS、クラウド化していけばよいのでしょうか。
(2010/10/19)
筆者:(IT コンサルタント)石田 富士夫

業務をどのようにクラウドサービスに乗せていくか

さて、前述のような考え方に立って流通・卸売業の業務を見た場合、業務ごとにどのようにクラウドに切り出していくべきかについて考えてみます。業務内容は企業ごとに異なりますので一概には言えませんが、ここでは一般的な業務の特質から考えた適用方法について述べます。

このときの進め方は、従来の、導入型パッケージシステムの場合と似た面があります。パッケージソフトの場合も、自社の業務をパッケージの業務処理方法や機能に合わせて変更していく検討が必要でした。その検討を行なってもパッケージに合わない部分は、個別開発で必要な機能を付加するか、パッケージ導入自体をやめて自社向けに開発したシステムを構築する、という選択がありました。クラウド利用の場合も同じと言っていいでしょう。業務ごとに検討し、ある程度汎用的な処理が可能な業務と、独自性のある業務で扱いを分けていく必要があります。
このような前提を踏まえて、クラウドサービスの利用を検討すべき業務と利用方法について述べていきます。

(1)外部のお客さまや取引先との情報連携する業務

お客さまからの注文情報はメール・電話もありますが、前でも述べたようにWeb画面からの注文やEDIによる注文が増加してきます。特にEDIについては企業や業界団体ごとにプロトコルやフォーマットが異なり、受注側としては、自社のシステムに受注を取り込むための取引先ごとのフォーマット変換と受信を行う通信設備を用意する必要があります。
また出荷においては、納品報告・請求処理を取引先にタイムリーに伝送することが必要な場合もあります。配送業者に輸送を依頼する時には配送業者のネットワークと連携することも必要となります。商品の発注納品においても同様のことが言えます。このように、お客さまや取引先との情報連携は今後もますます増加していきます。その度にソフトをメンテナンスし、設備を見直すことは大変な作業になりますしコストも掛かります。これらの業務はクラウドのリソースを活用し、ソフトウエアについては業界標準に準拠したソフトを採用するなどの対策を取って、クラウド化していくことで効果を得られる業務であると考えられます。

■参考:流通BMS 対応SaaS型EDIシステム
新規ウィンドウを表示https://www.hitachi-systems.com/solution/t01/redisuite/

(2)社内の各部門・拠点で共通に参照更新され活用する業務

この形態の代表的なものは在庫管理業務です。在庫引当数や倉庫別の在庫数、引当可能数などは、各拠点からの受注、出荷、入荷の入力により時々刻々と変化していきます。この在庫状況をリアルタイムに把握するために、従来は自前の回線を引いて実現してきました。現在でも自社のセンターサーバーと拠点とをネットワークで結ぶことでこのシステムを実現しています。この業務は一見どの企業も似通い、モデル化が可能であるように見えますが、詳細の業務フローのレベルで考えると、各企業の特質が機能に一番現れる業務です。商品在庫をいかに絞ってかつ欠品を少なくコントロールするかが事業の生命線だからです。

したがってこのような業務は出来合いのままのアプリケーションの業務仕様ではマッチしない、つまりSaaS化は困難ということが、想像できます。現状においては自社ごとのアプリケーションソフトをクラウドセンターのPaaS(業務実行プラットホーム)で稼動させるレベルから検討することが現実的かもしれません。

しかし、SaaSサービスの進化の中で、細分化された業務単位(引当処理、在庫残管理、入荷・出荷予定管理、引当可能数計算・・)にバリエーションを用意し、ユーザーが自社の業務仕様にあわせたものをセレクトできるようにする動きは始まっています。そうなれば利用するユーザー側も、自社の特長を生かしたシステムをSaaSで構成できるようになり、コア業務においてもコスト削減などのメリットを享受できるようになってくるでしょう。この動きは、そう遠くない時期にクラウド上に搭載されてくるものと思われます。

(3) 自社の経営状況を把握管理する業務

基幹システムの中で、売上・売掛・請求・入金、仕入・買掛・支払、在庫金額、そして経理システムがこの業務範囲になります。この範囲の業務は、会社の経営実績を正確に把握し決算を行うためのシステムです。

基幹システム(例)

(1)(2)のようにお客さまとの接点が関わるシステムでは、色々と自社の事業の特長を生かした業仕様が要求として出てきますが、この段階になると企業別に異なることは少なく、売上や仕入の明細項目のバリエーションと各種の集計計算の違いによる勘定コードの設定方法の違い程度になります。一般的に現在の基幹業務パッケージシステムではほとんどの機能が満たされていると考えても良いでしょう。これらのパッケージがクラウド上で供給されてくると、機能の適用性においては高く、IT投資コストの削減にもつながると考えられます。また、目前に施行が迫るIFRS(国際会計基準の適用)も視野に入れて検討しておくべきです。

一方、情報の管理の考え方として、基幹システムは企業の根幹を握っていますので「情報セキュリティの側面から自社でしっかり管理すべきである」という考え方と、「むしろクラウドの方が安全である」という意見があります。どちらも間違いではありません。自社の管理レベルとクラウドセンターの信頼性、安全性を具体的に評価して決めていけばよいと思います。

(4)総務・経理等の管理部門の業務

総務経理に代表される管理部門の業務は経理、給与計算のほかに多くの独立した業務を抱えています。これらを限られた人員でこなしていくことが求められています。業務ごとにIT化を図り省力化とコスト削減を進めていく必要があります。
クラウド化にあたってはこの分野をサービスするSaaSアプリケーションが幾つか既に供給されていますので、業務のニーズとシステムの機能を比較して適用を検討していくと良いでしょう。

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