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【ウェビナーレポート】成功する生成AI導入プロジェクトのポイント
~データの魔法でAIを生かせ!生成AI導入の成功を導く方法~

【ウェビナーレポート】成功する生成AI導入プロジェクトのポイント~データの魔法でAIを生かせ!生成AI導入の成功を導く方法~

第3部「日立システムズの生成AI社内適用の取り組み」

2024年11月1日にオンライン開催されて大きな反響をいただいたセミナー、「成功する生成AI導入プロジェクトのポイント」。本セミナーでは、生成AI活用サービスによる生成AI導入の成功要素を詳細に紹介するとともに、独自の生成AI環境を構築し、中長期的な取り組みを通じてビジネスの成果を最大化するため、全3部構成、3つの視座からアプローチしました。本稿では、第3部の内容をご紹介します。

ウェビナー登壇者:
株式会社 日立システムズ
ビジネスノベーション統括本部 AI活用ビジネス推進本部 データサイエンティスト
渡部 顕一郎

生成AI市場における位置づけ

生成AI市場は大きく分けて2つの市場に大別することができます。ひとつは「共通業務で浅く広く活用したい市場」で、私はこれを「間接業務市場」と仮に呼んでいます。もうひとつは「専門性の高い業務で深く活用したい市場」で、こちらについては「直接業務市場」と呼んでおります。本日ご紹介したいのは、直接性の高い分野で生成AIを深く活用したいという事例で、そのなかでも「コンタクトセンターへの生成AI適用事例」をご紹介します。

講演資料より:生成AI市場における位置づけ
講演資料より:生成AI市場における位置づけ

日立システムズの位置づけ

まず日立システムズは、「コンタクトセンター事業者」兼「システムエンジニアリング事業者」という特殊な位置づけにいます。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)により、さまざまな企業のコンタクトセンター業務をお引き受けしているのですが、その一方で、当然ながらシステムエンジニアリング事業を本業としています。その2つの事業を同一の企業がやっているというのは、きわめて珍しい事例であるといえます。

当社が運営しているコンタクトセンターの数は、数え方にもよりますが、おおむね「数百件」です。そのうちの約半数は、日立グループ各社のコンタクトセンターを当社が一手に引き受けているものです。そして前述のとおり当社はコンタクトセンターの事業者であり、かつシステムエンジニアリング会社であるということで、「コンタクトセンターへの生成AI」に取り組むにあたっては、当社は戦略的な優位性を持っております。

講演資料より:日立システムズの特殊な位置づけ
講演資料より:日立システムズの特殊な位置づけ

コンタクトセンターへの生成AI適用のシナリオ-1
SV依存をどう解決するか?

「コンタクトセンターに対する生成AI適用とはそもそも何なのか」という部分からお話しさせていただきます。

現在のコンタクトセンターは一般的に、下図の「AsIs」のような構成を採用していると思われます。お問い合わせ者から問い合わせを受け、オペレーターが、その問い合わせにしたがってマニュアルや社内ポータル、社内システムを検索する。そしてそこから回答を作り、お客さまへ回答するという流れです。

講演資料より:コンタクトセンターへの生成AI適用のシナリオ
講演資料より:コンタクトセンターへの生成AI適用のシナリオ

しかし的確にマニュアルや社内ポータルを検索するのは非常に難しく、ここは暗黙知がかなり必要になってくる分野になっています。そのため「スーパーバイザー(SV)」がそこをサポートするという構図になるわけですが、そのSV依存度が非常に高いというのが、多くのコンタクトセンターに共通する悩みとなっています。そしてSV依存度の高さがネックとなって問診回答率が低下したり、回答の精度が低かったり、回答までに時間がかかってしまうという問題に発展していきます。

そのため、オペレーターのスーパーバイザー依存度をいかに軽減するかというのが、コンタクトセンターに生成AIを適用する際の肝となります。

講演資料より:コンタクトセンターへの生成AI適用のシナリオ Step 1~3
講演資料より:コンタクトセンターへの生成AI適用のシナリオ Step 1~3

では生成AIに何をさせるかというと、最初のステップは、オペレーターが生成AIにマニュアルやシステムなどの資料の検索をさせる。そしてそのうえで回答案やFAQを作らせ、そこから事例を生成して回答させるなどするのが「Step1」になります。ただしここではオペレーターが生成AIに的確なプロンプトを投げなければならないため、そこが課題になります。

その課題をクリアするのがStep2です。ここではお問い合わせ者とのインターフェイスを自動応答のAIに換えてしまいます。ここで使用するのは問診型のAIで、聞くべきことはお客さまからしっかりと聞き、生成AIに投げるのに十分な情報を獲得してから、生成AIに質問を投げかける。そしてここから先はStep1と同様になります。しかし問診型AIの応答は決して万能ではないため、答えられない部分も必ず発生します。そこについては従来と同様にオペレーターが対応し、オペレーターが生成AIに質問を投げることになります。

そして最終形態のStep3は、お問い合わせ者のユーザーインターフェイスはコンタクトセンターではなく、自己解決型ツールである「DAP」をユーザーインターフェイスとします。このStep3ではコンタクトセンターへの問い合わせ自体が減少するというのが、最終的には大きなポイントとなります。

業務改革を実現させるためのプロジェクト体制

前述したシステム構成をPoC(実機検証)で終わらせるのではなく、業務改革を実現できるレベルの本番導入を行い、そして運用していくというところまで考えると、プロジェクト体制には「5つの要素」が必要になってきます。

講演資料より:コンタクトセンターへの生成AI適用に必要な5要素
講演資料より:コンタクトセンターへの生成AI適用に必要な5要素

必須要素の1つめは「業務」です。コンタクトセンターの現場業務に精通しているメンバーを、プロジェクト体制に入れる必要があります。

2つめは「データ」です。マニュアルや社内ポータルに精通している人材、および過去事例に精通しているメンバーもアサインしない限り、生成AIがデータを正確に検索できる状態にはなりません。

3つめは、当然ですが生成AIです。ここでいう生成AIは、Azureに詳しいというだけではなく、社内ドキュメントやシステムに対する生成AI適用を可能にするための検索拡張技術「RAG」や、複雑な質問・命令を生成AIに回答・実行させるための技術「プロンプトエンジニアリング」に精通しているメンバーも必要になってきます。

そして4つめはアプリケーション。実務で生成AIを活用するためには当然ながら、業務に合ったユーザーインターフェース(UI)が必要になります。そのUIを担うアプリケーションの導入を担当するメンバーのアサインが必要です。その実現手段が自動応答AIのような既成のアプリケーションの場合もあれば、独自UI開発の場合もあり、それによって人選が変わってきます。

そして最後に必要な要素が「基盤」です。PoC止まりの場合はさほど気にせずともよいのですが、本番導入を見据えるのであれば、ここをきちんと考えなければなりません。

上図のシステム構成だけでも自動応答AIとAzure 生成AI基盤、既存のコンタクトセンターシステム、BIがあります。そしてそれらがSaaSまたはオンプレミス(on-premises)のクラウド環境だったり、あるいはサーバーで動いていたりもします。それらがオペレーターから見て「ひとつのシステム」としてスムーズに機能している状態にできるか否かは、「基盤」の問題です。それゆえ、基盤に精通しているメンバーのアサインも必須なのです。

繰り返しになりますが、PoC止まりであれば、「基盤」をさほど気にする必要はありません。しかし本番導入を見据えて動くのであれば、最後の「基盤」を含む5要素すべてを組み込んだ体制が必要になってきます。このような体制を敷くことができることが、基盤に強いSIerである日立システムズの強みでもあります。

そしてプロジェクト体制は下図のとおりです。

講演資料より:コンタクトセンターへの生成AI適用 ~プロジェクト体制~
講演資料より:コンタクトセンターへの生成AI適用 ~プロジェクト体制~

まずPMとPLがいて、PLを支えるPMOがいます。そして通常のシステム構築プロジェクトとは異なるため、AIに精通した「アドバイザー」をアサインする必要が出てきます。

AI導入プロジェクトの進め方

AI導入プロジェクトは、その進め方もきわめて特殊です。通常のシステム構築プロジェクトであればV字モデル(開発工程とテスト工程をそれぞれ対にして表した開発モデル)が一般的ですが、AIプロジェクトの場合は「アジャイル型」になるのが大きなポイントです。

AI導入の進め方におけるアジャイル型の標準工程は、グローバルスタンダードで決まっています。それは「CRISP-DM」というもので、「ビジネスの理解」「データの理解」「データの準備」「モデリング」「評価」、そして評価に耐えられたならば「展開」という全6工程です。しかし「評価」に一発で耐えられることは、まずあり得ません。そのため、そうなったらまたどこかのふりだしへ戻り、アジャイル型でこの6工程を回していくというのが大きな流れになります。生成AIの場合はモデリングではなく「プロンプトエンジニアリング」になりますが、全6工程であることには変わりありません。

そしてこのアジャイル型をどのように進めていくかというと、「工程」で区切ることになります。業界標準となっているのは「アセスメント」「PoC」「本番導入」「運用・改善」という4工程です。

講演資料より:AI導入プロジェクトの進め方 ~標準となる4工程~
講演資料より:AI導入プロジェクトの進め方 ~標準となる4工程~

まずは「アセスメント」で机上の検証を行い、システム構成や業務フローなどの妥当性を確認したうえで、実機で「PoC」を回していきます。このPoCでは、先ほどご説明したCRISP-DMのサイクルにしたがって何サイクルか回し、「こういうシステム構成であれば確実に効果が出る」という段階まで見きわめをつけ、そこから先が「本番導入」となります。本番導入では、通常のシステム導入プロジェクトと同じ動き方、いわゆるV字の動き方をします。

そしてカットオーバー後も、AIのプロジェクトは続きます。追加学習が走りますので、運用改善を続けていくことになるのです。

スケジュール

現在、日立システムズが取り組んでいる「ハード保守に対するコンタクトセンターの生成AI適用プロジェクト」は、2025年度上期に本番導入と運用を開始し、順次横展開していく予定です。

最後に

冒頭でご説明させていただいたとおり、当社日立システムズは「コンタクトセンター事業者」でありながら「システムエンジニアリング事業者」でもあるという、きわめて特殊な立ち位置の企業です。そのため、このような取り組みをすることにより、「コンタクトセンターへの生成AI適用」というノウハウを蓄積することができます。

そしてこのノウハウを、お客さまにサービスとして提供していくことを考えております。

講演資料より:日立システムズのノウハウ提供サービス
講演資料より:日立システムズのノウハウ提供サービス

まず初めにご注目いただきたいお客さまは、製造業のお客さまです。冒頭でも申し上げましたが、当社が運営している数百件のコンタクトセンターのうち約半数は日立グループ各社のコンタクトセンターであり、日立グループとは、とりも直さず「製造業」です。

そして製造業というのは、ご承知のとおり「2回」売上を上げます。お客さまに設備や機器を納品することでまず売上を上げ、その後、保守業務よって淡々とフィー型の売上を上げていきます。そして2回目の売上、すなわち保守業務において主役となるのがコンタクトセンターです。お客さまから何らかのインシデントの問い合わせを受け、それに対して答えていくコンタクトセンターは絶対に必要なのです。

そういったコンタクトセンターに生成AIを適用するにあたり、「改善すべきテーマ」は必ず出てくるものと思われます。そのため製造業のお客さまで、なおかつご興味のある方は、ぜひ当社にお問い合わせをいただければと思います。

また金融業のお客さまも、コンタクトセンターへの生成AI適用にぜひご注目ください。

21世紀に入ってから、金融業の営業形態は「フェイス・トゥ・フェイス」から「インターネット経由」へと様変わりしました。インターネット経由であるということは、その背後にコンタクトセンターが控えているということでもあります。つまり「コンタクトセンターが営業の柱になっている」というのが、昨今の金融業の大きな変化点です。

そのコンタクトセンターに対してどのように生成AIを適用し、業務を改善していくかという部分が、金融業における次のテーマになっていくと考えます。そしてその際に当社にお声がけいただければ、当社の生成AI適用ノウハウを、そのまま金融業のお客さまに適用させていただきたいと考えております。

もちろんそのほかの事業者さまであっても、生成AIの導入にご興味があれば、ぜひご相談いただけましたらば幸いです。

※記載の会社名、製品名はそれぞれの会社の商標または登録商標です。
※Microsoft Azureは、Microsoft Corporationの商標です。