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特集 サステナビリティストーリー4

全国規模のシステム標準化プロジェクトで、自治体DXの土台を構築

生成AIと、現場の“リアル”で形にする、持続可能な自治体サービス

公共情報サービス第一事業部 公共パッケージ事業推進本部 本部長

井戸田 善正

Introduction

総務省が2020年より進める「自治体DX推進計画」。デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性の向上と職員の負担軽減をめざすこの計画の背景には、人口減少と少子高齢化がピークを迎える「2040年問題」と、行政に対するニーズの多様化などにより、行政サービスの提供が困難になっていくという課題があります。

計画の一環として、2023年度にはデジタル庁が主導する「自治体情報システム標準化」が本格化。自治体の基幹業務システムを、全国共通の仕様に統一するというこの大規模プロジェクトに日立システムズも参画し、期限となった2025年度末までに担当する自治体の大部分で標準化への切替が完了しました。

複数プロジェクトを統括するマネージャーとしてこの取り組みに携わった井戸田善正さんに、この難しいミッションをどう遂行したのか、そして今後、行政サービスをどのように持続可能なものにしていきたいかを聞きました。

開発の背景と課題

人口減少の影響で、10~20年後には自治体サービスという“社会インフラ”の品質維持が困難に

2023年度より本格化した自治体情報システム標準化に、私は社内の関連プロジェクトを統括するマネージャーとして臨みました。

自治体サービスは、社会機能を維持するのに欠かすことのできないインフラの一つです。今は人が足りていても、10年後、20年後には人口減少と少子高齢化の影響で職員数が大幅に減っていくと推計されています。それが現実になれば、今のやり方ではサービスを維持することが困難になります。

対して、当社ではこれまで自治体業務をワンストップで支える総合ソリューション「ADWORLD」を中心に、幅広い業務を担うシステムを全国の自治体に提供し、自治体サービスの安定的な運用と効率化に取り組んできました。そうした当社の経験と強みを生かして、今の行政機能を維持しながら社会の「もっと便利に」というニーズにも応えていけるような環境づくりのお手伝いができればと、システム標準化プロジェクトに取り組みました。

プロジェクトの苦楽

システム標準化は「運用の標準化」でもあることを、コミュニケーションを通して丁寧に共有

プロジェクト推進にあたって力を注いだのが、自治体サービスを実際に担う現場の方々との対話です。システムを標準化することは、必然的に「運用の標準化」に結びつきます。ただ、前例のない取り組みであるだけにそのご理解を得るのが難しく、「今までどおりの運用を続けられるのか?」と懸念する声もよく挙がりました。そこで、標準化に対する考え方や、運用がどう変わり、どのようなメリットが得られるのかを、ご納得いただけるまで丁寧にご説明しました。

併せて、全国の公共分野のSE人材が足りなくなるほどの大規模プロジェクトを進める後押しとなったのが、当社の業務に対するスタンスです。基本的に私たちはシステムを納入して終わりではなく、現場のご要望をできる限りお聞きして、運用・保守にも伴走しながら、実際の業務に役立つところまでご支援することを大切にしています。

また、日立グループとしての開発体力の高さに加え、クラウド技術や国の標準仕様など多様な分野の知見を持つ人財がグループ内に数多くいることから、会社の枠を超えて広く連携しながらプロジェクトを前に進められました。当初は困難とも思われた2025年度末までの標準化というミッションを、多くの対象自治体で完了できたことに、あらためて日立グループの総合力の高さを実感しました。

そして、私は2026年度から“アフター標準化”の新たなサービス・ソリューション開発を行う部門に異動し、さまざまな部署と連携しながら新サービスの検討・開発を取りまとめる役割を担っています。まずは、標準化したからこそ見えてきたコスト最適化などの新たな課題に対応しながら、ここから住民や職員にとって「目に見える価値」を生み出すことに注力していきます。

今後の目標と抱負

「現場で本当に困っていること」を浮き彫りにし、そこにDXを掛け合わせて変革を生む

アフター標準化で特にチャレンジしたいのが、自治体の持つ業務データ、地域データ、制度知識、職員の経験知などをAIと組み合わせ、新しいサービスを創出することです。その点、自治体には機密性などの観点からAI活用されていない有用データが数多くあります。だからこそ、セキュリティ対策をきちんと行いながらそれらをAI活用することで、業務の圧倒的な効率化と高度化が可能になると考えています。

こうした取り組みを通して、人口が減るなかであっても行政サービスを維持できる仕組みを確立し、「役所から人は減ったけど、前より便利になった」という世界観をぜひ実現していきたいです。

また、個人的にぜひ取り組みたいと思っているのが、現場の方々との協働です。アフター標準化では、まだ世のなかにない業務のあり方を追求することになり、事前のヒアリングだけではなかなか真の現場ニーズはつかめません。

だからこそ、私たちも現場に入らせていただきながら、職員の方々が解決したいこと・期待することの本質は何なのかを捉えたいと思っています。それをもとに、開発においても生成AIを積極的に活用しながら速やかにソリューションを形にし、実際の業務のなかで検証しながらまた改善を図っていく。そうして開発期間を従来より大幅に圧縮するアジャイル型の開発を、現場の方々と一緒に進めていければと思います。

さらには、そうしたユースケースがある程度たまったら、同じ課題を抱える他の自治体にも展開し、広く社会に貢献していきたいです。特にアジャイル型開発の“スピード”の部分に関しては、当社にとって大きなチャレンジとなります。

この仕事で何より大切にしているのが、やはりお客さまが本当の意味で何に困っているのかを浮き彫りにすることです。それができてこそ、自治体の皆さまに満足いただける仕組みをご提供でき、結果として住民の皆さまの暮らしもよくすることができます。今後も、テクノロジーと併せてそこを突き詰めることで、地域の活性化に寄与できればと思います。