

2023年度から2025年度を中心に、全国の自治体で、かつてない規模のプロジェクトが進められました。住民記録や税、福祉などを司る自治体の基幹業務システムを、国の定める仕様に統一する自治体情報システム標準化です。その背景には、少子高齢化による人口減少、住民のニーズの多様化といった、社会的な課題や要請があります。
同プロジェクトに対し、日立システムズは社内外との連携を通じて、数多くの自治体の標準化ミッションを遂行しました。前例のない全国プロジェクトにどう臨んだのか。取り組みの歩みと、その先にめざす「次世代行政サービス」の姿を紹介します。
社会への視点
従来のやり方では持続的に行政サービスを提供できなくなる──その解決に向けた国家的プロジェクト
この先、多くの自治体が直面することになる課題の大きな一つが、1970年代の前半生まれの団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となり、人口減少と少子高齢化がピークを迎える2040年問題です。これによって職員数の制約が懸念される一方、生活スタイルの変化や、利便性への期待値の高まりなどから行政に対するニーズはますます多様化すると考えられ、従来のやり方では持続的なサービスが難しくなることが浮き彫りになってきています。
そうしたなか総務省は2020年に、デジタル技術やデータを活用して住民の利便性の向上と、職員の負担軽減をめざす「自治体DX推進計画」を発表。その一環として、自治体の基幹業務システムを全国共通の仕様に統一する「自治体情報システム標準化」を開始しました。日立システムズも、この前例のない大規模プロジェクトに参画。グループ内外と連携しながら、包括的に取り組んでいきました。
この取り組みは、行政サービスの継続性、デジタルデバイド(※)への配慮、地域データを活用した政策立案などを支えるもので、SDGs目標の一つ「住み続けられるまちづくり」の実現につながるものになります。
日立システムズのアプローチ
自治体ソリューション「ADWORLD」の活用と、グループ内外との連携で、前例のないミッションを遂行
同プロジェクトのミッションとなったのが、標準化の対象となる20業務のシステム化と、政府が整備する共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」への移行を、一斉に進めることです。
全国的に公共システム分野のSE人材が不足するという状況のなか、当社では新たな協力会社にもネットワークを広げながら、積極的な人財確保に動きました。また協力会社とは、アプリケーション開発やインフラ構築、運用設計、教育、BPOなど、専門性に応じて役割を分担する連携体制を構築。併せて、ガバメントクラウド関連ソリューションの提供や共通作業を集約する、専任チーム体制を社内に設けました。
プロジェクト推進のベースとなったのが、当社の手がける自治体ソリューション「ADWORLD(アドワールド)」です。幅広い自治体業務をカバーする同システムが、すでに多くの現場に導入されていたため、その基盤を生かしながら標準化対応を進めていくことができました。また、前例のない規模のミッションに対応するにあたっては、グループ各社のリソースを結集した総合力が大きな支えとなりました。
こうした取り組みによって日立システムズでは、計画の期限として設定された2025年度末までに、対象となる自治体の大部分で標準化への切り替えを完了。それにより、以下で紹介する“次のミッション”にもいち早く着手できる形になりました。

将来展望
標準化によって築かれた土台に生成AIを組み込み、ここから「行政サービスの変革」へ
自治体DX推進の次なるミッションとなったのが、行政サービスの「変革」です。標準化プロジェクトによって土台が整備されたことで、いよいよ行政サービスの大幅な業務効率化とサービス価値向上を具現化するフェーズとなりました。
その中心技術となるのが、生成AIです。とりわけ自治体には、秘匿性の高さなどからAI活用がされていない住民データや属人的なナレッジが多くあります。そのぶん、そこに圧倒的な効率化の余地があると考えられ、厳格なセキュリティ運用による大規模な生成AI活用が期待されます。
自治体DXでシステムやデータ形式が標準化・共通化されたことで、自治体間の連携が円滑になり、たとえば住民が転居する際の手続きの負担が飛躍的に軽くなるといった新しい価値も生まれるでしょう。また、共通の基盤があることで、来庁せずに証明書などの申請・受け取りが完結するといったソリューションを、あまねく自治体が同じ形で導入しやすくなります。
日立システムズでは今後、自治体の現場に深くコミットしながら、個別的な困りごとへのソリューションをアジャイルに開発する伴走型プロジェクトにも注力したいと考えています。
土壌を一斉に整備し、そこに変革の花を咲かせていくという、国を挙げた自治体DX。当社はその支援を通じて、行政サービスを持続可能なものとし、誰もが安心して便利さを享受できる世界をめざしていきます。