
特集 サステナビリティストーリー3
「みらい保守」で、保守サービスを持続可能なものに
サービス・ソリューション事業統括本部 フロントライン協創推進本部 みらい保守推進部
宮本 貴
Introduction
人手不足や高齢化の波は、機器の不具合などに現場で対応する「保守サービス」にも着実に迫っています。製品の多品種化にともなって作業工数が増える一方、今後はマンパワーが追いつかなくなることも懸念され、ベテランの経験値など現場に蓄積されたノウハウをどう継承するかも大きな課題です。
こうした課題に対し、日立システムズは保守業務の各工程をAIで効率化する「みらい保守」プロジェクトを発足。すでに複数のソリューションが現場で活用されており、将来は社外にも知見を提供し、保守サービスの危機という社会課題の解決を図っていく計画です。
自身がフロントラインワーク経験者で、現在、みらい保守の開発に携わる宮本貴さんに、保守サービスの新機軸を生み出す原動力を聞きました。
開発の背景と課題
プロジェクトの一番のきっかけとなったのが、このままでは将来的に保守のフロントラインワーカーが不足しかねないという危機感です。その背景には人口減少と高齢化が大きく影響していますが、製品の多品種化などで一人あたりの作業も増加する見込みであることも、今後の人手不足の懸念に拍車をかけています。
保守サービスの拠点では、今は一日中、現場対応が続くことが通常で、拠点に余力を残しておく余裕はほとんどありません。現場では、「やってもやっても楽にならない…」といった閉塞感が漂っているようにも感じられました。
また、多くのベテラン保守ワーカーが定年退職を迎えるなか、今後も従来同様の高い作業品質を継続していくためには、蓄積された経験値の継承も必要です。このままでは、保守サービスそのものが、持続可能なものではなくなってしまう──。そして、この問題は当社に限った話ではなく、他社の保守現場にも共通する社会課題だと捉えています。
こうした課題感から始まったのが、社内プロジェクト「みらい保守」です。当社の保守サービス拠点は、自社とグループ会社を合わせて全国約300か所にのぼり、年間60万件の現場対応と130万件の案件受付を行っています(2024年実績)。そこから得られる膨大なナレッジとAIを組み合わせることで、フロントラインワークの負担軽減と品質・安全性の向上、そして技術継承を実現し、社会課題である人手不足の解消や働きがいの向上を果たすことをミッションに掲げました。
プロジェクトの苦楽
みらい保守は、保守サービスで行う各業務を、AIやDXによって効率化・高度化するプロジェクトです。たとえば不具合の原因特定であれば、これまでは熟練エンジニアのノウハウに頼っていたものを、過去の事例を学習したAIエンジンで解析することで、作業の平準化・精度向上が実現します。
そうしたなかで、私たちが特に大切にしているのが、実際に保守業務にあたるフロントラインワーカーたちの「声」です。私自身、社会人になってすぐの5年間、保守フロントラインワーカーとして働いた経験があり、実際に1日に何件も現場を巡回する日々を過ごしました。そして現在、みらい保守で「現場とシステム開発の橋渡し」を担ううえで、この経験が大きく生きています。

現場でどこが負担になっているのか。理想の業務プロセスと現場の実態にどのようなギャップがあるのか。そうしたことを肌感覚でおおよそ理解できるからこそ、フロントラインワーカーに寄り添いながら最適解を探れているのかなと思います。現場からの声はさまざまで、最適な落としどころで収めるのが難しいのですが、そこにも現場経験が生きていると感じます。
このように、現場で培われた知見や率直な意見を起点に課題を整理し、そこからAI化・システム化の企画立案、要件定義、テスト・評価を経て実装する。さらには稼働後のフィードバックを現場から受け、改善を図るところまでが私の役割です。単にシステムをつくるだけでなく、「現場で使われて効果が出るところまで責任を持つ」ことを常に意識して取り組むようにしています。
今後の目標
今後の目標の一つが、案件受付から作業後処理までの各工程を一つながりの流れとして捉え、生成AIの柔軟性を生かしながら、既存の業務プロセスにとらわれない全体最適を図ることです。それにより、リードタイムの短縮と品質向上を、よりダイナミックに実現できると考えています。
そしてもう一つが、開発スピードの向上です。要件定義やフィージビリティ検証に一定の時間を要するため、従来は企画から実装までに半年~1年ほどかかってしまい、変化の速い現場ニーズに追従しきれない面がありました。今後は要件定義や設計にもAIを活用し、タイムリーかつ継続的に開発していきたいです。
さらに将来的には、日立システムズが持つ年間60万件規模の対応実績からもたらされる知見を、まずは日立グループ、その後はグループ外の他社さまにも提供していきたいと考えています。私たちの業務のやり方をそのまま使っていただくというより、どのようにナレッジ活用していくかの経験値やノウハウをご提供できればと考えています。
こうしてナレッジを広く世の中に展開し、保守サービス、ひいては現場の仕事全般のあり方をアップデートしていく。それにより、社会に欠かせないフロントラインワークを持続可能なものにする後押しができれば何よりです。