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社会要請の高まるネイチャーポジティブ推進をDXでトータル支援

自然環境や生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」。世界では今、その実現に向けた議論が活発に行われ、企業にも取り組みが求められ始めています。一方でネイチャーポジティブは、定量評価がしにくいといった特有の難しさがあり、それが社会への浸透を妨げる一因にもなりかねません。

こうしたなか、日立システムズでは森林解析技術および森林改善などの森林関連のドメインナレッジを生かし、企業のネイチャーポジティブの推進支援に取り組んでいます。活動の定量化・可視化を通して自然回復の取り組みを後押しする本取り組みの現在地を紹介します。

森林の現状評価から施策の実行まで、科学的根拠に基づいた自然の回復を後押しする

社会への視点

ネイチャーポジティブに対する社会要請が高まる中で、活動推進上の課題となる定量評価方法の社会実装に挑む

地球規模で生物多様性の損失が進んでいる──。そうした危機感を背景に、単に自然破壊を食い止めるだけでなく、損失を反転させて自然を回復・増加させる「ネイチャーポジティブ」の議論が世界で活発化しています(※)。併せて、企業や団体に対する、その推進の要請も年々高まっています。

一方で、ネイチャーポジティブには特有の難しさもあります。CO2であれば世界中どこでも同じ性質を持つため定量化しやすいのに対し、生態系やそれがもたらす価値は地域ごとに異なり、単一の基準で定量化することが困難です。まさにその評価手法も含めたルールづくりが進められており、枠組みや市場としては形成期の段階にあります。

こうした社会的な要請や課題に対し、当社がこれまで培ってきた森林とDXに関するナレッジを生かして企業のネイチャーポジティブ活動を定量化・可視化に取り組んでいます。そしてこの取り組みによって、企業のネイチャーポジティブ活動を後押しすることをめざしています。

※
2022年12月に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、「2030年までに自然を回復の軌道に乗せる」というネイチャーポジティブの実現が、すべての国、企業、地域社会がめざすべき世界共通のミッションとして掲げられました。

日立システムズのアプローチ

「森林調査DX」と専門的な分析技術の掛け合わせで、定量的な評価が困難なネイチャーポジティブへ挑戦

この「ネイチャーポジティブ取り組み推進支援」という新事業のスタートにおいて、当社がまず着目した領域が“森林”です。

日本が抱える森林課題の一つに、戦後に植えられた人工林の多くが間伐や伐採がされないまま放置されていることがあります。手入れの行き届かない過密な森林は下草が育ちにくく、土壌が雨を蓄えてゆっくりと河川や地下に放出する「水源涵養」機能の低下や、土砂災害リスクの増加、生物多様性の低下を招く要因にもなります。

当社ではこれまで、ドローンとAIを活用して森林資源を解析する「森林調査DX」や、CO2の吸収量を取引可能な価値に変える「カーボンクレジット」の創出支援などに取り組んできました。そうした技術やナレッジの活用を通して、森林の多面的な価値を底上げし、ネイチャーポジティブの推進に貢献することをミッションに掲げました。

取り組みの第一歩として行ったのが、群馬県森林組合連合会との実証実験です。当実験では、2025年11月から翌年3月にかけ、群馬県内の約50haの森林を対象に、当社の森林解析技術と、協業先のサンリット・シードリングス株式会社が持つ生物多様性分析技術(※)を掛け合わせ、森林の現状を評価。

その結果、対象森林が持つ水源涵養機能の経済的価値を、林野庁が公表する水資源涵養量(貯留機能)の簡易評価手法と環境省が公表した自然資本の経済価値の評価式を用いて、年間約4,900万円と算出しました。さらに、土壌や気候などの条件に適した樹種を植える「適地適木」の考え方に基づいて整備を行った場合、その価値は約6,000万円まで高められる可能性があることをシミュレーションで示しています。

木の成長度合いや土壌の状態を詳細に把握して経済価値まで算出するには、本来は膨大な手間がかかり、人手だけでは限られた範囲でしか対応できません。今回、約50haという広域を対象に実施できたのは、DXの力によるものです。

※
生物多様性分析技術:環境DNA(環境中に存在する生物由来のDNA)分析、GIS(地理情報システム)解析、野外調査

将来展望

施策の策定から実行までを一気通貫で支援できる体制を強みに、森林以外の領域にも取り組みを拡大

こうした森林領域のネイチャーポジティブ取り組み推進支援において、現状の評価、施策の策定から実行までを一気通貫で伴走できることをめざしており、これが日立システムズの強みになると考えています。

当社が、ネイチャーポジティブにどのように取り組んでいけばいいかの方針づくりから、現状の評価、DXを活用した調査・分析、そこからどう価値を高めていけるかのシミュレーション、そして施策の立案・実行の一連のプロセスをトータル支援できるのは、森林に関するさまざまな技術とナレッジ、ネットワークを有する当社ならではの強みがあるからです。

今後は森林にとどまらず、他の自然資本領域にも取り組みを拡大していく方針です。併せて、環境省が重点課題の一つに位置づける自然資本への投資促進の拡大にいち早く対応できるよう、金融機関とも連携しながら取り組んでいきます。

ネイチャーポジティブへの注目度は国内外で高まっており、今後は自然の回復に積極的に取り組む企業が、いっそう評価される社会になることが見込まれます。それを見すえ、グループのアセットも活用しながら、「ネイチャーポジティブといえば日立システムズ」と多くの人に想起される存在になることをめざしていきます。