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株式会社 日立システムズ

【第4章】第4回 あすな、安田に挑む

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(マンガの続き)

安田のスキームに仕掛けられたカラクリ

…話は、1時間ほどさかのぼる。
株式会社ビジネス・キューピッドの会議室を、安田が訪れた。
日比野「すまないな…忙しいところを」
安田「日比野さん、いい返事を聞けると思っていいんですね?」
そう言って会議室の椅子に腰掛ける安田。よそ行きの笑顔、その眼は決して笑っていなかった。

日比野「おそらく、お前が想像している以上に、良い返事さ…さあ、あすな。プレゼンしてくれ」
「何でハードルを上げるのよ!」そう思いながら、あすなは緊張の面持ちでプレゼンを始めた。
あすな「まず…御社がモリモリ青果店に提示したアイデアを確認させてください。あの店舗を取り壊して、1階にコンビニ、2~3階を住宅となる建物を建設します。2~3階の所有権は森社長、1階は大手コンビニチェーン店のF社に帰属する…」
安田「ええ、間違いありません。土地の持分はおおむね3分の2が森社長、残りがF社となります」
日比野「建物を新築する費用は、土地の売却代金でカバーできるということだな?」
安田「もちろんです。モリモリ青果店の実質債務超過も、これで解消できます。誰にも迷惑をかけず、会社を畳めるというわけです」

あすなは安田の話が途切れるのを待って、プレゼンを続けた。
あすな「確かに、このスキームであれば、森社長の債務は解消されます。そしてその後の生活費は、1階のコンビニのフランチャイズ権を購入させ、同店舗の収益金にてまかなう、ということですね」
安田「そうなりますね」
一見、非の打ち所のないスキームである。しかし、あすなはひるまなかった。
あすな「しかし、コンビニはあくまでF社が保有しているのですよね?それは森社長に賃貸するということですか?」
安田「ええ、そうです。フランチャイジーとして、森さんにはロイヤリティと同時に、賃借料もお支払いただきます…もっとも、コンビニが繁盛すれば何の問題もありません」

あすなの妙案とは

あすな「でも、それはウラを返せば、繁盛しなかったらその損失は森社長が負うということでしょう?」
あすなの口調が少し荒くなったのを、ナミが諭した。
安田「それはそうです。そして、その説明は十分にさせていただき、森さんも理解されています。だいいち、もともと八百屋を営んでいたのですから、赤字になったら損失を背負うのは今までと何ら変わりないでしょう?」
あすな「ぐっ…」

安田の意地悪な切り返しに、口ごもるあすな。ナミが優しく「あすなちゃん、気にしないであなたのアイデアを教えてあげて」と言う。
安田「あなたの言うとおりだ。道草あすなさん、といいましたね?あなたは、モリモリ青果店をコンビニに改装する以外に、森さんを救済する手段を考えたのですか?」
安田の冷徹な視線は、残酷なようでいて、どこか、日比野に似ている雰囲気があるとあすなには感じられた。日比野のほうを見ると、日比野は悠然とメガネをはずし、ハンカチでレンズを磨いている。「いつも通りやれ…」日比野はそう無言で伝えているようだった。あすなは気持ちを落ち着かせるようにひとつ息をつくと、安田にまっすぐ視線を向けた。

あすな「誤解があるようなので、はっきり申し上げます」
安田「誤解…ですか?」
あすな「はい…私は…いえ、株式会社ビジネス・キューピッドは、コンビニの建設には反対していません」
そう言うと、安田の表情が少し変わった。
安田「それは…白旗を上げたということかな?あすなさん…いや、日比野社長」
日比野は表情を変えず「あすな、続けろ」とだけ言った。あすなは「はい」といい、このプレゼンの核心ともいえるひと言を放った。
あすな「私たちは、コンビニを建設する一方で、森社長には引き続き、飲食店向けの野菜の販売を継続していただくことを提案します」
安田「…なんだと?」
あすなは資料の一部を示した。

  • 1階にコンビニ、2~3階の住宅のうち、一部を野菜用の倉庫として建設する。
  • 森社長はモリモリ青果店の事業を継続するが、一般消費者向けの販売はせず、近隣の飲食店や学校、施設等への販売を行う。このため、青果店としての店構えは必要ない。
  • 1階のコンビニのフランチャイズ権は森社長個人ではなく、モリモリ青果店が法人名義で取得する。

資料を食い入るように見つめる安田に、日比野が説明を補足する。
日比野「あの八百屋の売り上げは、実は近隣の飲食店や学校、病院といったところが大半で、普通の主婦が買い物に来ている分はあまりウェイトが大きくない。モリモリ青果店が閉店しても、主婦たちは新しいスーパーのほうに行けばすむが、施設はそうは行かない。つまり、モリモリ青果店が経営を終えてしまった場合、この街全体が困ることになる」
最後の「この街全体が困る」という発言に、安田の顔がぴくっと反応したのを、あすなは偶然見てしまった。

安田「しかし…コンビニの店長は、いったい誰がやるんですか?青果店の業務とコンビニの業務を森社長が兼ねることは難しいのでは?かといって店長を任せられる人を雇うのはリスクが高い…それに、」
安田はひきつった表情のまま、続ける。
安田「倉庫を新たに建設するとなったら…建設には原案よりもお金が必要になる…それではフランチャイズ権を購入する時に足が出てしまうかも知れない」
そこまで言い切るのを待ったかのように、日比野はあすなに目配せをし、続きを促した。

あすな「実は、その件も手を打ってあります」
そう言ってあすなは、資料のページをめくるよう指示した。そこにはこう書かれていた。

  • モリモリ青果店は資本金を300万円増額する。出資は森社長の長男、健三氏が行う。
  • 健三氏はコンビニのオーナー兼店長として、同社の経営に携わる。

安田「しかし、長男は事業を継ぎたくないと聞いていたが…」
日比野「八百屋という商売が苦手だったんだろうな。しかし、コンビニならやってみたいといっているらしい。まだ経営者としては使い物にならないだろうが、あの社長のことだ、一緒に働きながらちゃんと二代目を育てていけるだろう。もっとも、コンビニに建てかえるというお前のアイデアがなかったら、息子を呼ぶことはできなかった。そこは文句なく、安田…お前の手柄さ」
日比野の鮮やかな切り返しに、「ふっ」と笑う安田。
安田「…まいったよ、俺の負けだ…。あすなさん、これで、プレゼンは終わりですか?」
あすなはニッコリと頷いた。
あすな「はい…以上で、発表を終わります」

決着、そして

プレゼンを終え、日比野と安田、あすなの3人は、森社長に新たな案を伝えた。森社長は自分が青果店を続けられること、そして、何より長男が跡継ぎとして帰ってくることに、涙を流して喜んでいた。

そして、青果店から駅に向かう途中。
日比野「安田…図らずも、お前とこんな風に仕事ができて楽しかったよ」
日比野がそう話しかけると、
安田「俺もだ…。俺は依頼人を喜ばせることに全力を注いでいる。それが間違っているとは思わない。今回だってそうさ…でも、お前は依頼人の利益だけじゃなく、俺や、この街全体のことを、いつも考えているんだな」
そう言って、安田もすがすがしい笑顔を返した。あすなはその笑顔にハッとした。日比野に似た面影を再び感じ取ったからだ。そしてそれこそが、安田の本来の姿であることも、あすなには分かっていた。
安田「今回は俺の負けだ…お前を呼び戻すことは諦めるよ。もっとも、一緒の会社にいなくても、こうやって仕事で関われるんだよな」
日比野「そうだな…また、声をかけてくれ」
そういうと、2人は固い握手を交わした。

安田「それで…あすなさん。あなたのことだが…」
あすな「はいっ!?」
あすなはこの瞬間まで、自分の内定のことなど全く覚えていなかった。
安田「あなたには近日中に、良い報せが届くはずです」
それが何を意味するかは、言わなくても分かった。
日比野「安田…お前の手で、こいつを一人前にしてやってくれ」
安田は小さく、頷いた。

駅の改札口の向こうから、安田は何度も振り返り、こちらに手を振った。それを最後まで見届けた日比野とあすなは、会社に戻るべくきびすを返した。
日比野「…また、俺の思い描いた通りになったな」
あすなに向かって不敵な笑みを見せる日比野。その目の奥には、いつもの通り、暖かいものが灯されているように思えた。
あすな「社長…ありがとうございます。おかげさまで、内定をもらえたみたいです」
日比野「へっ、大丈夫か?あいつの指導は、俺みたいに甘くないと思うぞ?」
あすな「えーっ!?」
日比野「あっはっはっ、冗談だよ…さあ、ナミを誘って龍流で打ち上げでもやるか」
あすなの「やったー!」という声が街中にこだました。秋の夕陽が一日の終わりを惜しむように、少しずつ、沈んでいった。

つづく

【クイズ問題】

ついに、あすなは念願のH社内定を決めたようです。あすながビジネス・キューピッドで得た経験は、きっと就職したあとも活かされることと思います。さて、以下のうち、この「Biz-Qpid」であすなが学んだものはどれでしょう?当てはまるものを全て選んでください。

  • ア)ビジネスには相場が大事であるということ。
  • イ)ビジネスのデッドスペースを見つけることで、さらに収益を拡大できる可能性があること。
  • ウ)4つのPというフレームワークで、今後のビジネス上の戦略を検討できるということ。

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この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。
 

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