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株式会社 日立システムズ

【第2章】第4回 あすな、美容室を救うアイデアを考える

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(マンガの続き)

あすな:「は、はい…売り上げの減少要因は、近隣にできた新しい美容院のせいで、来客数が減少したことにあります」
日比野:「ふん、それで?」
あすな:「は、はい…原因としては、立地が悪いからでして…」
あすなが説明を続けようとすると、日比野が突如さえぎった。

日比野:「立地が悪いというのはどういうことだ?具体的に説明してみろ」
あすな:「えーっと…『セゾン・ド・ボーテ』は競合2店舗よりも駅から遠いですよね?それって立地が悪いんじゃ…?」
日比野:「結論は正しい。しかしそんな理由付けではクライアントは納得しない。もっと考えることだな」
あすな:「は…はい…」
日比野:「それで、対策について何かアイデアはあるか?…ナミ、どうだ?」

ナミの提案は一見完璧。だが…

日比野はナミに視線を移した。ナミは緊張の面持ちで
ナミ:「はい、私が今考えているのは2点です。1つは価格の改定。もう1つは販促活動です」
ナミが説明を始めようとしたのを「ちょっと待て」と制し、日比野はあすなのほうを向いた。
日比野:「…あすな、4つのPを知っているか?」
あすなは知らない。
あすな:「はっ?」

日比野:「経営学で習わなかったか?…まあ良い。ナミ、ここからはこいつに分かるように説明してやれ」
ナミ:「…はい。あすなちゃん、4つのPというのはね…」
ナミはそう言いながらホワイトボードに4つの英単語を書いた。

  • Product(製品)
  • Price(価格)
  • Place(販売チャネル)
  • Promotion(販売促進)

ナミ:「最初のProductは文字通り、製品よ。今回は主にヘアカットよね?この部分では、美季さんの腕前に申し分はないみたい…ですよね?」

「美女バージョン」のナミがそう言ったせいか、日比野は照れくさそうに咳払いをして、
日比野:「早く説明しろ」
と促した。
ナミ:「はい。2つ目のPriceは価格。さっき店頭のメニューをみたら、どの店もそれほど違いはありませんでした」
あすな:「そ、そうでしたっけ?」
あすなは、そこまで見ていなかった。
ナミ:「ええ、間違いないわ。それで、3つ目のPlace。普通は販売チャネルという意味で使われるけど、美容院の場合は立地のことだと考えていいと思うわ。そして4つ目は、Promotionね。お客さんを呼び込むためにどんな工夫をしているか、ということよ」

ナミの言葉を、日比野が引き取った。
日比野:「4つのPのうち、『サロン・ド・ボーテ』が優位に立っているのはProductで、劣っているのはPlaceだな。そしてナミは、残りの2つで優位を作ろうと考えた…というわけか」
ナミ:「はい、そういうことです…どうですか、社長?」
ナミがそう訊くと、社長はしばらく沈思した後、
日比野:「…価格はどう変えるんだ?」
とナミに質問をした。
ナミ:「例えば、ですが…カットとシャンプーで5,000円かかっているところを、4,500円にしてはどうでしょうか」

日比野:「値段を下げるのか…?」
ナミ:「ええ、原価率は上がってしまいますが、とにかく集客をするためには、価格を売りにするしかありませんよね…?駅前でビラを配って地道にリピーターを増やします」
ナミの答えに、日比野は首を横に振った。
日比野:「確かに教科書どおりの考え方だが…今回はだめだ。美容院は、腕と値段が比例する世界だ。…少なくとも、消費者は高級な店か否かを値段で判断するしかない。つまり値段を下げるということは、『その程度のカットしかしません』と宣言していることに等しい。それではあの店の強みであるProductが生きてこない。Priceではなく、Product、つまり、美季社長の実力を前面に出していくべきだ」
あまりに厳しい指摘。あすなは血の気が引く思いがしたが、ナミは慣れているのか、
ナミ:「じゃあ、もっと別のやり方を考える必要がありますね…」
と言った。

すると、日比野は「まあ待て」と言い、あすなのほうを向いた。
日比野:「今度はお前のアイデアを話す番だ」
あすな:「ええっ?」
あすなは2人の話を聞いているのに精一杯で、自分のアイデアなど持っていない。
日比野:「俺が欲しいのは、あくまでアイデアだ…思いついたことを言えば良い」
でもどうせ、適当なこと言ったら、怒るんでしょ?あすなは心の中でそう思っていたが、自分の考えを述べるほかなかった。

あすなの思い付きが、急展開に!!

あすな:「私…『セゾン・ド・ボーテ』は立地で不利だ、っていう仮説をたてて、今日現場に行って、事実その通りだと思ったんです。でも、美季さんは素敵だし、カットも上手いし、話も弾んだし…立地以外に負けている部分なんてないんです…だったら…」
日比野:「…だったら、何だ?」
あすな:「…引っ越しちゃえば、いいんじゃないですか?駅前のもっといいところに!」
あすなは、本当に思いついたことを言っただけだ。だが、同時に自分の中で確信があった。自分のアイデアは却下されるに決まっている。
ナミ:「あすなちゃん、それは午前中にも言ったことだけど、やっぱり無理が…」
そのとき、日比野が2人の会話をさえぎった。

日比野:「いや…案外そうでもない」
あすな・ナミ:「え?」
あっけにとられる2人。日比野はタブレットを取り出し、2人にテナントビルの画像を見せた。
日比野:「このビルの2階、テラス付きのスペースに、あるカフェを出店しようという計画があったんだが、オーナーの資金繰りがついていない。実は午前中は、その相談を受けていたんだ」
ナミ:「このビルって…駅から直結している、あの?」
日比野:「ああ。立地は申し分ないが、なにぶん少々広すぎてな。…だが、美容室とカフェ、半分ずつの面積でオープンさせることができるなら、話は別だ」
あすな:「えっ…それができたら…」
ナミ:「美容院の待ち時間をカフェで過ごすことができたり、カフェのお客さんがシャンプーや整髪料を買ったり、色々とメリットがありそうですね」
ナミはすでに日比野の考えを理解しているようだ。

日比野:「ああ、こちらのカフェにも、美容院にもメリットがある。うまくつないでやれそうだな…。『セゾン・ド・ボーテ』の店舗は、母親の代からずっと個人所有だったな?」
ナミ:「はい、そうですが…」
日比野:「売却、もしくは改装して賃貸に出そう。駅からは少し歩くが、通りに面しているから値はつくだろう。そしてその売却資金で借入金を圧縮し、テナントの入居に関する費用は、事業計画を元に追加融資を申し入れれば良い…よし、行ける!」
日比野は勢いよく立ち上がり、
日比野:「ナミ、早速、美容院側の事業計画の素案を作成してくれ。こっちはカフェのオーナーに話を持ち込んでみる」
というと、そそくさと会議室を出て行った。

とたんに静かになる会議室。あすなはあまりの急展開に、体中の力が抜けてしまっていた。
あすな:「…通っちゃった…私のアイデア」
ナミはいつもの通り、胸元で手をパチパチと叩いた。
ナミ:「お手柄じゃない。バイト初日とは思えないわね」
あすな:「でも、ナミさんは『引っ越すわけには行かない』って…」
ナミ:「それが、偶然できちゃいそうなのが凄いのよ…社長が得意にしている、マッチングでね」
あすな:「マッチング?」
ナミ:「前にも話したでしょ?ビジネスとビジネスを、つなぐのがこの会社の仕事なの」
あすな:「そ、そっか…キューピッド、だもんね」
ナミ:「そういうこと。…さぁ、大変なのはこれからよ!」
ナミが意気込んだその時、日比野が会議室に戻ってきた。カバンを持ったままだ。

日比野:「カフェのオーナーと電話がつながった。詳しい説明をこれからしにいくが、乗り気の様子だから問題はなさそうだ。話を進めていこう。ナミはさっき言ったとおり、事業計画の素案を作れ…あすなはそのヘルプを頼む」
あすな・ナミ:「はい」
ナミとあすなは引き締まった表情で、そろって頷いた。日比野はそれを見届けるようにすると、急に態度がおかしくなった。
日比野:「それから…その、なんだ」
ナミ:「社長、どうかしましたか?」
ナミはきょとんとしていたが、あすなは感づいていた。
あすな:「…分かった!社長、今更ナミさんに見とれちゃってるんだ!!」
キャーッとはやし立てるように言うと、日比野は顔を赤らめながら机を強く叩いた。

日比野:「そうじゃない!今回は調査の名目で経費で落としてやるから、領収書を出せといいたいんだ!」
社長のせりふは照れ隠しに違いない。
ナミ:「ありがとうございます」
ナミがにっこりと笑ってお礼を言うと、日比野は「ふん」と言って、
日比野:「…今回だけな。用件はそれだけだ、俺は出かける」
いってらっしゃい、と見送った2人は、顔を見合わせて笑った。
ナミ:「あすなちゃん、改めておめでとう!これで明日に弾みがついたわね」
あすな:「へ、明日?」
ナミ:「あら、自分のことでしょ?明日はH社の面接じゃない。ココへ来るのは用事がすんだらで良いから、頑張っていらっしゃい」
そう、あすなの就職活動の最後のチャンス、H社の面接がいよいよ明日に迫っていた。

つづく

【クイズ問題】

あすなは幸運にも、美容室「セゾン・ド・ボーテ」の立て直しに一役買うことができたようです。会議の場で日比野が「4つのP」を紹介していました。これはマーケティングの世界では非常に基本的な考え方であり、さまざまな場面で活用できる便利な考え方です。

  • Product(製品)
  • Price(価格)
  • Place(販売チャネル)
  • Promotion(販売促進)

それでは、次に挙げる事例のうち、Product(製品)を見直すことで成功した事例はどれでしょう。

  • ア)フィルム会社が化粧品を作ってみた
  • イ)高級アパレルブランドが低価格帯のブランドを立ち上げた
  • ウ)映画館が毎週水曜日をレディースデーとし、値引きをするようになった

クイズを解く

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この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。
 

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