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株式会社 日立システムズ

【第2章】第1回 あすな、ビジネス・キューピッドに入門する

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(マンガの続き)

あすな:「でも…」
不安げなあすなを見て、ナミはくすっと笑った。
ナミ:「ふふふ、言いたいことは分かっているわ。『そもそも、この会社って何をしている会社なんですか?』でしょ?」
ナミの言ったことは図星だった。何となく日比野やナミが凄い人らしいということは分かったが、彼らがどういう商売をしているかが見えてこない。もしかしたら怪しい仕事かもしれない。
ナミ:「一言で言うのは難しいのだけど…ビジネスとビジネスをつなげることが、私達の仕事よ」
あすな:「つなげる…?」
ナミ:「そう。日本には小さなビジネスをしている会社がたくさんあるわ。彼らがより大きくて強い会社になるために、ほかのビジネスとのコラボレーションを持ち掛けたり、お客さんを紹介したりするの」
あすな:「ビジネスとビジネスをつなげる…だからキューピッド?」
ナミ:「うふふ、そう言うことね」
あすな:「でも…つなげるってどういうことなんだろう?」
あすなが心の中でそうつぶやいたとき、資料を持った日比野が部屋に戻ってきた。
日比野:「…待たせたな。課題はこれだ」
日比野はプリントアウトしたばかりのA4用紙を数枚、テーブルに並べた。
あすな:「ちょっと…まだやると決めた訳じゃ…」
日比野:「話を聞いてからでいい。…前回はラーメン屋だったが、今回は美容室だ」
A4用紙を見ると、美容室のホームページを印刷したものと、美容室の場所を表す地図、そして美容室の損益計算書と貸借対照表が置いてあった。損益計算書は「龍流」で作ったことがあるが、今回は最初から答えをもらえるということだろうか?それに、もうひとつの貸借対照表も気になった。
あすな:「貸借対照表…?」
日比野:「ああ、それくらい分かるだろう?」
あすなは商学部の4年生だから、簿記の知識はある。しかし実物を見たのは初めてだった。
日比野:「見れば分かるが、この美容室『セゾン・ド・ボーテ』は最終利益がマイナスだ。このままだと来期は債務超過に陥ってしまう」
あすな:「はあ…」

はじめての仕事。あすな、美容院を救え!

最終利益、債務超過…そういう言葉が本当のビジネスの世界で飛び交うこと自体、あすなにとっては初めての経験である。
あすな:「それで…私の課題って?」
日比野:「簡単だ。この美容室を、お前が救うんだ」
あすな:「は、はあっ!? な、何言ってんの?」
日比野のあまりに突飛な課題に、あすなは思わず大きな声を出していた。
日比野:「ああ、これはすまん…説明が足りなかったな。『セゾン・ド・ボーテ』はこれで3期連続の赤字になってしまった。なぜそうなったのか、まずは原因を把握しろ。その上で、それを解決する策を提案し、向こう3年間の予想損益計算書を作ってもらう。もちろん単なる努力目標ではダメだ。当社が具体的な施策を提案して、現実的な予想が立つようでないといけない。…それがないと、銀行がこの美容室に融資を継続してくれないそうだ…つまり」
そこまで言って日比野はメガネを上げ、
日比野:「『セゾン・ド・ボーテ』は、倒産する」
とあっさり言い切った。
あすな:「倒産…ですか?」
日比野:「ああ。どうする?」
あすな:「どうするったって…私なんかに」
日比野:「できるわけがない…そう思っているのか?」
あすな自身「できるわけないじゃん」そう思っていたが、日比野があまりにオブラートに包まない言い方をしたせいで、それを認めたくなくなっていた。
あすな:「だ、だって…」
日比野:「難しい話じゃないさ…考えてもみろ。美容室だぞ?お前だって日頃から利用している場所のはずだ」
あすな:「それは、そうですけど…」
あすなはそれでも心配だった。社会人経験もない、それどころか就職活動がうまくいくかも危ういあすなにとって、他人のビジネスを救うなんてことはあまりにも大それている。
あすなも、そして日比野も黙り込んでしまった。膠着状態になった場の空気を、明るい声で打ち破ったのは、ナミだった。
ナミ:「あすなちゃん、『私にできるかしら?』ではなくて『やりたいかしら?』で決めてみたら?私たちはもちろんサポートするから」
あすな:「それは…」
やってみたい、あすなはそう思っている。いや、どちらかというと「やりたい」というより、ここにいる2人のように「なりたい」のだった。
1分ほど考えて、
あすな:「分かりました…やってみます」
あすなはそう決心をした。
日比野:「よし、そうと決まれば、欲しい資料を言ってみろ…当社にあるデータを俺が探してやる」
あすなの返事を待ちきれなかったかのように、日比野はそう言った。
ナミ:「俺が…?」
意外そうにそういったのは、ナミだった。
日比野:「なんだ、問題でもあるのか?」
怪訝そうに日比野が訊くと、ナミは
ナミ:「いえ…何も。あ、新しいお茶お持ちしますね」
と言って、部屋を出て行った。

どんな資料が必要なのか?

その後姿を見届けるようにしてから、日比野はあすなのほうに向き直った。
日比野:「で、どうなんだ?欲しい資料は?」
あすなは少し考え込んでから、言った。
あすな:「あの…3年連続で赤字、って言いましたよね?なんでそうなったのかを知りたいんですが…」
日比野:「なんで、だと?」
日比野の目がギラリと光る。
あすな:「だ、だって…その前はちゃんと儲かってたんでしょ?なんで赤字になったんだろう、って」
日比野:「…俺の質問は、欲しい資料があるか?だ。理由はお前が考えろ。それを考えるために必要な資料は、何だ?」
あすな:「は、はあ…」
そういわれても、あすなにはその「資料」が想像もつかない。むっつり押し黙ると、日比野は「やれやれ」と言って、
日比野:「まあ、まだ早いか。…とりあえず、5年前までさかのぼって損益計算書を探してやる。毎年の推移を並べて、グラフにでもしてみるんだな…そうすれば見えるものもあるだろう。あとは?」
あすな:「いえ…あとは特に思いつきません…」
あすながそう答えると、日比野は「ふむ」とうなずいた。
日比野:「資料は明日朝までに用意しておく。明日から基本的に毎日、朝9時に出社しろ。就職活動の都合で来られないときもあるだろうから、欠勤したいときは前もって伝えるように」
そこまで言うと、ナミが新しいお茶を持って入ってきた。
日比野:「ほかに、何か質問はあるか?」
あすな:「え、えーと…」
あすなは何かを言おうとして言葉を探していたが、
日比野:「じゃあ、細かいことはナミから聞いておいてくれ。俺はこれで…ああ、悪いがお茶は社長室に持ってきてくれ」
そう言って、ソファから立ち上がった。
あすな:「あ、あの…っ!」
あすなは慌てて、日比野に声をかける。日比野は少しいらだたしげに、
日比野:「…なんだ」
と聞き返した。
あすな:「私…め、名刺もらえたりするんですか?」
日比野:「は?」
あすな:「だって、これから私ここで…」
ナミは思わず吹き出して「可愛いわね…」と言った。
日比野:「まぁ、今回の件をやりきったら、な」
日比野はそう言って、部屋を出た。

つづく

【クイズ問題】

あすなはいよいよ始めてのコンサルティングに挑戦しますが、最終赤字、債務超過…耳慣れない言葉に戸惑っているようです。ちなみに、銀行などの金融機関ではよく「デフォルト」という言葉が使われます。最終赤字や債務超過と同様、経営が思わしくない企業に関連する用語ですが、その意味するところは次のうちどれでしょう?

  • ア)会社が倒産してしまうこと
  • イ)会社が自らの債務を弁済できなくなってしまうこと
  • ウ)会社の格付けを下方修正すること

クイズを解く

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この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。
 

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