ページの本文へ

Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
株式会社 日立システムズ

【第1章】第4回 あすな、課題を発表する

4ページ中3ページ

(マンガの続き)

あすな:「アルバイトの時給を900円と仮定して、営業時間と店員さんの人数を掛け算したのが、それです」
日比野:「人数というのは、何人だ?」
あすな:「…6人ですけど」
あの店では、ホールに2人、厨房に4人の店員がいると、馴染みの店員から聞いていたのである。

日比野:「その6人のうち、正社員はいないのか?全員が本当に、同じ時給か?単なるアルバイトにあれほどの味が出せるわけがないだろう」
あすな:「うっ…」
確かに、厨房内の人たちがどういう働き方をしているかは、知ることができなかった。いや、あすなは調べようともしていなかったのだ。
日比野:「…秘書のヒントを生かすのは良いが、お前は詰めが甘いよ…そもそも人件費には給料以外にも、社会保険とか色々な費用が乗っかるもんなんだ。そのことは知ってたか?」
あすな:「す、すみません…」

結局、あすなの作った損益計算書は殆ど見当違いの金額を羅列したものだった。一通り説明し終わったあすなは、気がつけば涙ぐんでいた。短時間にこんなにダメ出しをされたのは初めてだったし、何より就職活動の糸口をつかむという目標も達成できなかった。

涙をこぼさないようにこらえながら、書類を片付け、
あすな:「すみませんでした…これで、失礼します」
そう言って立ち去ろうとすると、「待て」と声がした。もちろん、日比野の声だ。
あすな:「何ですか?」
日比野:「座れよ。お前が損益計算書を作ったんだから、俺もこの間の答えを教えてやる」
あすな:「えっ…でも」
自分の作った損益計算書はデタラメだったじゃないか。あすなはそう言おうとしたが、
日比野:「正解じゃなかったことは問題じゃない。まあ待ってろ」
日比野はそう答えて、いったん席を立った。

なぜ日比野はこの課題を出したのか?

ぽかんとしているあすなに、秘書のナミがくすくすと笑いながら、
ナミ:「日比野は多分、あなたのことを褒めたいのよ」と言った。
あすな:「えっ?」
ナミ:「店にずっと張り付いたり、求人票から人件費を推測したり…普通の大学生ならここまでやろうとしないわ」

あすな:「でも…損益計算書は間違えだらけでしたよ?」
ナミはコーヒーをすすってから、こう答えた。
ナミ:「いいのよ。間違えた人は、次は立て直してくる…何もしない人は、そのままよ」
あすながその言葉の意味を問い直そうとしたとき、日比野が会議室に戻ってきた。

日比野:「古い資料だったが、見つかったよ」
そう言うと、日比野は古臭いチラシを机の上に置いた。「テナント募集!新規物件!飲食店OK!」と書いてあるチラシである。
あすな:「これ…あの『龍流』の?」
確かにチラシをよく見ると、地図の中で「現地」と書かれた赤いマークは、今あの店がある場所を指し示している。
日比野:「そうだが、それだけじゃ50点だな。もっとよく見てみろ」
あすな:「えっ?…あっ!」
チラシの隅に本当に小さい字で書いてあるのは、来週面接を控えているH社の名前だった。

日比野:「あの店はもう20年以上、あのテナントビルの1階で営業を続けている。何でだと思う?」
日比野の問いは、「龍流」の常連のあすなにとっては愚問のように思えた。
あすな:「それはやっぱり美味しいからです!それが一番じゃないですかね。値段も安いし」
日比野:「それだけか?まだ思いつくものがあるだろう?」
あすな:「えっと…そうか、駅前の表通りにあるから目立ちやすいってのもありますね。駅の反対側はオフィス街だから、昼休みになるとビジネスマンも来ます」

日比野:「最初にお前が言った『美味しくて、安い』。これはあの店の企業努力の成果だな?」
あすな:「そうです。あの店にしかない味ですから」
日比野:「うむ。一方の立地はどうだ?これは『龍流』を誘致したH社の成果だと、考えることはできないか?」
あすな:「確かに、そうですね!」

相場と目利き

日比野:「つまり『龍流』があそこで長く繁盛している影には、優良な物件と優良なテナントを引き合わせた、H社という存在があるわけだ」
あすな:「じゃあ、あのお店の損益計算書を作らせたのには?」
日比野:「お前が作ったのは、あくまでも『相場』を現そうとした数字のはずだ。あの場所で飲食店をやるとしたらどれくらいの来客が見込め、どれくらいの収益が上がるか…その目利きができれば、不動産賃貸業のビジネスは成功する。できなければ、ただの博打さ…その違いをお前にわかって欲しかった」

あすなはようやく、日比野の出した課題の意図を理解した。
あすな:「目利き…そんなこと、考えたこともありませんでした」
以前日比野が言っていた、就職活動で「集団を一歩抜け出す」企業分析ということが、あすなには少しだけ理解できた気がした。
あすな:「わたし、もう少しH社が関わっているビジネスを調べてみます。お二人に教わった『相場』と『目利き』を、自分でもっとできるようにならなきゃ」

あすなは何の気なしにそう呟いた。しかし、その言葉があすなの今後を大きく変えることになる。その変化の引き金を引いたのは、もちろん日比野だ。
日比野:「よし、そこまで言うなら次の課題を出してやる」
あすなの呟きを聞いた日比野は、そう言ってニヤリと笑った。
あすな:「え、えっ、でも…」
日比野:「いいじゃないか。自分で調べるよりそのほうが勉強になると思わんか?」

あすなは救いを求めるように、日比野の隣に座るナミに視線を向けた。するとナミはクスリと笑って、
ナミ:「社長…ちゃんと説明してあげないと、あすなちゃんも困っちゃいますよ?」
と言った。あすなには訳が分からない。日比野はいったい何を考えているんだ?
日比野:「だったらお前が説明しろ。俺は資料を取ってくる」
日比野はそう言うとそそくさと部屋を出ていった。その後ろ姿を見届けてから、ナミはあすなの目をまっすぐ見つめ、
ナミ:「単刀直入に言うわ。あなたこの会社で働いてみない?」
と言った。

つづく

【クイズ問題】

あすなは課題への取り組みを通じて、不動産賃貸業では「相場観」と「目利き力」が必要であることを学びました。
しかしこのような力が必要なのは、不動産賃貸業の従業員だけではありません。以下の業種のうち、「相場観」と「目利き力」が要求されるものはどれでしょうか?

  • ア)ファーストフード店を全国チェーン展開する会社
  • イ)銀行
  • ウ)自動車メーカー

クイズを解く

*
この物語は、筆者の見解をもとに構成されています。
日立システムズの公式見解を示すものではありません。
 

メールマガジン

最新のイベント情報、商品情報など、お役立ち情報をご紹介するメールマガジンをお送りしております。

メールマガジン登録

  • Webから直接、クラウドサービスの注文・導入ができるオープンクラウドマーケットプレース

データセンター紹介ページへ

データセンター紹介
ゆるぎない信頼のパートナー 日立のデータセンター

ハイパーダイヤの専用サイトを別ウィンドウで表示します。

交通のことならハイパーダイヤ
乗換案内・路線情報検索サイト。英語・中国語にも対応。

日立システムズの
Microsoftソリューション
Microsoftとの力強い協力体制で、お客さまのソリューションを支えます。

日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。