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AI自動回答サービスプロジェクト「AIアシスタントによるWeb見積システム画面操作に関する自動問合せ」AIの回答精度を高め、常に目指すのは100%。

日立グループの中核企業である日立製作所をはじめ、グループ企業内で幅広く活用されている「Web見積システム」。その画面操作などの問い合わせには、これまではサービスデスクの担当者がメールや電話で対応してきた。
ただ、寄せられる質問には同じようなものが多く、ちょっとしたアドバイスで解決するものが大半だ。しかもそういう問い合わせに忙殺されていると、実際に対話しながら問題点を探っていかないと解決できないようなケースへの対応が遅れてしまう。
労力とコストを少しでも削減し、迅速かつ適切な対応をするために、AIを活用できないか。そんな発想からスタートした「AIアシスタントによるWeb見積システム画面操作に関する自動問い合わせ」のプロジェクトは、2016年10月に、日立システムズが日立製作所の依頼を受けて着手し、2018年4月には初稼働に成功した。
その後も改良が続き、他の事業所への横展開も始まるなど、今もなお進化を続けている。

プロジェクト サマリー
現場で見つけた課題
  • 生産性向上がテーマになる際に当たり前のように聞くようになったAIだが…
  • AIの構造をひとつひとつ解析していく地道な作業がベース
  • 回答精度100%を目指すため、トライ&エラーの繰り返し
社会に届けたもの
  • 手の届く価格で高機能なAIの自動回答サービスを創出
  • グループ内の7つの事業所で導入され、業務の効率化が進む
  • AIのアルゴリズムへの理解・強化のノウハウを今後のソリューションに展開
桑原 奈央 産業・流通事業グループ産業・流通情報サービス第一事業部システムエンジニア

AIに教える難しさと、それを理解する楽しさ。

大学時代からAIに興味があり、いずれはそういう分野の仕事がしたいと思っていたところ、入社半年でこのプロジェクトの話が舞い込んだので、半ば志願するかたちで担当になりました。AIエンジンの解析や、AIに日本語文法の曖昧さを覚えさせる方法などはかなり苦労しましたが、入社早々に、とてもいい経験ができたと思っています。

まずはAIエンジンのプログラミング解析からスタート。ロジックがまるで分からないところから、構造を探っていきました。

このシステムは、画面上に吹き出しのように出てくるチャットボットという自動会話プログラムです。日立製作所の方で、サービスデスクに代わるチャットボットをつくりたいということと、どのAIエンジンを使うかということまでは決まっていました。オープンソースのエンジンなのですが、どういうロジックで動いているのかまるで分らないので、その解析からのスタートでした。具体的な作業のほとんどはプログラミングの解明です。フォルダ構成しか分からないので、一つずつフォルダを開いて、プログラムの関連性を調べていく。分からないプログラムはWebで検索する。そうやってAIエンジンの構造を探っていきました。そのときは開発担当というより、まるで研究者のような心境でしたね。解析のあとは「Web見積システム」用のQ&AをつくってAIに覚えさせていくのですが、これも予想した以上に大変な作業でした。


日本語の文法の曖昧さ・柔軟さを痛感。それをどうやってAIに理解させるか。まるで教師のような心境でした。

まず、サービスデスクから過去のメールの問い合わせデータをもらって、そこから質問文をつくっていくわけですが、そのメールデータが1,000件以上ありました。それを整理して、「お世話になります」「よろしくお願いします」などの定型文を全部除いて質問だけを抽出し、言葉を組み合わせたり、パターンを変えたりして、どういった文章が効果的かを探っていくわけです。大切なのはルールづくりでした。単語をAIに覚えさせるのは簡単ですが、難しいのは文法なんです。たとえば日本語の場合、S(主語)V(動詞)O(目的語)がVSOになることも多いし、主語が抜けることもあるので、それもAIに覚えさせる必要があります。そういう関係性を全部ルール化して、サービスデスクの方にそのルールで例文をつくってもらい、AIに覚えさせて正しい回答にたどり着けるかを検証するということのくり返しでした。最初は精度が低かったものの、ルールに基づいた文法の組み合わせをいろいろ覚えさせて、質問と回答がうまくリンクするようになってくるにつれ、AIシステムを開発するおもしろさが実感できるようになりました。


秋山 尚子 産業・流通事業グループ産業・流通情報サービス第一事業部技師 システムエンジニア

私たち人間も、AIと共に学んでいく。

「Web見積システムの使い方を教えてください」「次に押すボタンはどれですか」「このボタンを押したのに、何も画面が動かない」など、サービスデスクへ寄せられる問い合わせは、AIを活用すれば自動で回答できるものが大半です。けれどそのAIに質問と回答を覚えさせるのは、やはり人間。できるだけAIに自動で作業を任せるためには、常に人がAIを進化させていく必要があるのだと痛感しています。

3つのアルゴリズムを搭載しているのが、このシステムの特長。あえて複数の答えを提示することで、回答の精度を高めています。

私は、桑原がAIロボットの解析を終えて、「Web見積システム」用のQ&Aをつくる段階から、このプロジェクトに加わりました。具体的なプログラム作業は桑原に任せて、日立製作所との打ち合わせや、仕事の進め方、AIに覚えさせるデータの解析などを担当していました。このシステムの大きな特長は、日立独自の技術を含む3つのエンジン(アルゴリズム)を搭載しているところにあります。一つの質問に対して、それぞれのエンジンが検索した回答を複数提示できるので、言ってみれば三人から同時に回答やアドバイスをもらえるような結果になるわけです。アルゴリズムごとに個性がちがうので、相互補完によって正しい回答が提示できる確率が高まるわけですね。これによって、簡単な問い合わせはほぼAIチャットボットからの回答で解決できるようになりました。AIが対応しきれないケースだけはチケットを発行してメールで問い合わせる流れになっていますので、大幅な効率化と対応の適切化が実現できたと思っています。


このシステムは新たな段階へ。どう発展していくのかは、使う側とつくる側の思惑と力量次第だと思います。

このシステムには自動学習機能はないので、使うほどに精度が上がるわけではありません。AIが答えられなかったもの、メールで問い合わせが来たものから教師データをつくり、それをAIに学習させることで精度を高めていくわけです。ただ今後は、回答できなかったものに対して、自動で質問文をつくる機能をもたせられないか、検討していくことになるはずで、改善の余地はいくつもあります。でも、自動学習機能がないのは、「Web見積システム」用のシステムとしてスタートしたことも関係しています。当然、新製品がどんどん出てくるわけですから、それに対応するQ&Aを常にAIに覚えさせないと、自動学習機能があったところで質問や回答そのものが存在しないからです。そういう意味で、すべてを自動化させることは不可能なんです。しかし、今では横展開によって「Web見積システム」以外にも、このチャットボットが活用され、すでに7事業所で利用されています。私たち自身も、日常の中でこの業務はAIで効率化できそうだと、気づきや課題を見つけられるようになってきていると実感しています。これからは利用される現場ごとに、必要な機能をさまざまに加えながら、システムも私たちも進化・発展していくはずです。


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