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株式会社日立システムズ

日立システムズ・神奈川県・メドミライ・東京大学、生成AIを活用したヘルスケア分析基盤を構築

保健指導業務の効率化とデータをもとにしたひとりひとりに合った保健指導を実現、健康寿命延伸・医療費抑制に貢献

2025年9月2日
株式会社日立システムズ
株式会社メドミライ

生成AIを活用したヘルスケア分析基盤概要イメージ
生成AIを活用したヘルスケア分析基盤概要イメージ

株式会社日立システムズ(以下、日立システムズ)、神奈川県、株式会社メドミライ(以下、メドミライ)、東京大学は、2024年度のAMED*1公募事業「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業」の一環として、メドミライの「行動変容促進アプリケーション(MIRAMED®)」を活用した予防・健康づくり基盤(ヘルスケア社会実装基盤)の研究開発を実施しました。
本公募事業を通じて、神奈川県より提供を受けた匿名化された国保データベース(KDB*2)から抽出した約100万件のリアルワールドデータ(RWD*3)を活用し、「ダッシュボード」と「AIエージェント」機能を搭載した分析基盤をヘルスケア社会実装基盤*4の機能として新たに構築しました。
開発した分析基盤が有するこれらの機能を活用することで、従来、保健師等が手作業で多大な時間と労力をかけていた、特定保健指導の対象者の状況確認から、支援内容の提案、個別のリスクに応じた健康指導文面の自動生成までの業務を一貫して行うことができます。
具体的には、「ダッシュボード」機能により、健康指導対象者の健康状態の数値データをグラフや表などの形に自動で変換し、可視化することで、保健師の意思決定をサポートするとともに、「AIエージェント」機能により、対象者ごとの健康情報を理解し、適切な分析やレポートの作成をサポートします。
これにより、保健師等の業務負荷を軽減するとともに、データ利活用の推進で、地域ごとの健康課題に対応した、より個別化された健康増進施策の設計が可能となり、未病の改善や、人々の健康寿命延伸といった、次世代の保健医療に向けた新たな施策の検討につなげることができます。

*1
AMED:国立研究開発法人日本医療研究開発機構
*2
KDB(国保データベース):国民健康保険(国保)に関するデータを統合・分析するためのシステムのこと。国保連合会が保有する健診・医療・介護 の各種データを活用し、地域の健康課題を明確化や、保健事業の計画策定、評価を支援する役割を担っている。
*3
RWD(リアルワールドデータ):医療現場や日常生活で得られる実際のデータのこと。
臨床試験などの厳密な条件下で収集されたデータとは異なり、実際の診療や健康管理の中で蓄積される情報を指す。
*4
本サービスは、要配慮個人情報である医療情報を安心安全に運用できる3省2ガイドラインを遵守した形でアマゾン ウェブ サービス(AWS)を利用し、法規制に準拠したクラウド基盤上で提供しています。

背景

医療分野でのデジタル活用が進み、医療DXとRWD活用の潮流は自治体の現場にも拡大
一方、保健師の現場はデジタル活用も含めた業務効率化が急務に

日本は世界で最も高齢化率が高く*5、医療・介護費の増加が国の財政を圧迫しつつあります。こうした中、厚生労働省は健康寿命延伸プラン*6として、「健康無関心層も含めた予防・健康づくりの推進」や「自然に健康になれる環境づくり」などを推進しており、「医療DX推進ロードマップ」において、推進するためのアクションプランとして、生成AI等の医療分野への活用促進を明記*7しています。また、医療ビッグデータの利活用を支えるデータヘルス改革も進行しており、RWDによる施策評価や個別支援の重要性が高まっています。さらに、2025年6月には、デジタル庁から「データ利活用制度のあり方に関する基本方針」が発表され、医療データは、「デジタル公共財」として、今後さらなる利活用が見込まれます。
一方、人々の健康を支える市町村保健師の現場では、それぞれの健康課題に適した健康増進施策の設計が難しい、業務が特定職員に属人化しているなどの課題があります。

*5
*6
*7

特長

健診・医療データ約100万件をもとに生成AIを活用した分析基盤を開発
保健師の業務効率化とデータをもとにした対象者ひとりひとりにあった保健指導を実現

本ヘルスケア社会実装基盤は2024年度のAMED公募事業「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業(ヘルスケア社会実装基盤整備)」の一環として、メドミライの「行動変容促進アプリケーション(MIRAMED®)」を活用した予防・健康づくり基盤の研究開発において構築した分析基盤です。神奈川県が提供するKDB 2,400万件から抽出した約100万件の研究データを活用し、産・学・公で連携して構築しました。
本分析基盤は、大きく「ダッシュボード」と「AIエージェント」の2つの機能を有しています。これらの機能を活用し、市町村単位での傾向分析や、特定保健指導における健康上のリスクの抽出、支援内容の文案を自動生成する、といった一連の保健業務を支援できる設計となっています。
「ダッシュボード」機能は、健康指導対象者の健康状態の数値データをグラフや表などの形に自動で変換し、可視化することで、保健師の意思決定をサポートします。読み込んだKDBの健診結果をもとに、属性・基準・検査値・生活習慣などのさまざまなフィルタでデータを絞りこみ、該当データをグラフやフローチャートなどでアウトプットすることが可能です。これにより、保健師等が表計算ソフトなどを用いて、手作業で行っていた膨大な量のデータ集計に要する時間を、大幅に短縮することにも成功*8しました。この機能には、東京大学大学院工学系研究科個別化保健医療講座との共同研究が生かされています。

*8
従来16時間かかっていた検査結果からある検査項目組み合わせでの一定値以上の人の集計をわずか2分で完了。

「ダッシュボード」機能のイメージ
「ダッシュボード」機能のイメージ

「AIエージェント」機能は、生成AIがユーザーのリクエストを理解し、適切な分析やレポート生成をサポートします。保健師がひとりひとりの対象者の情報に応じて、都度考えていた対象者へのアドバイスの内容を、読み込んだデータをもとに生成AIが自動生成し、その後、対象者に送るメール文面の作成をサポートします。このように、特定保健指導の計画立案から、健康指導対象者へのメール作成までの一連の保健指導業務を効率化します。

「AIエージェント」機能のイメージ
「AIエージェント」機能のイメージ

解決する社会課題

人手不足や属人化に悩む保健師を生成AIを用いた分析基盤でサポート
データをもとにしたひとりひとりに合った保健指導で、健康寿命延伸・医療費抑制に貢献

今回構築した分析基盤は、これまで人の手に大きく依存していた保健指導の現場業務をより効率的に行うことを可能にします。また、自治体の住民それぞれの健康リスクをデータに基づいて把握し、的確かつ持続可能な予防施策につなげることができる点が特長です。これにより、保健指導の現場が抱える人手不足・属人化といった課題に対し、分析コストを下げながら施策の質を向上させることに寄与します。さらに、データ解析だけでなく、保健指導の効率化を図るためにデジタルを活用したデータ駆動型の特定保健指導への基盤づくりが可能となります。

今後の展望

今後、日立システムズは、本分析基盤を自治体・医療保険者・健診機関に展開するとともに、勤怠データなどの人事データと組み合わせた企業向けの活用にも取り組み、ヘルスケア社会実装のさらなる発展に貢献します。また、本分析基盤を用いて、ひとりひとりに合った健康指導を提供し、対象者が効果を実感することを通じて、特定健診の受診意義の向上や行動変容につなげ、受診率の向上にも寄与します。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 パブリックセクター ヘルスケア事業本部長 大場弘之 様のコメント

私たちアマゾン ウェブ サービス(AWS)は株式会社日立システムズ、神奈川県、メドミライ社、東京大学による行動変容促進アプリケーション(MIRAMED®)を活用した予防・健康づくり基盤の研究開発を歓迎いたします。3省2ガイドラインに準拠した堅ろうなヘルスケアプラットフォームをAWS上に実装し、生成AIサービスであるAmazon Bedrockを使って「ダッシュボード」と「AIエージェント」機能を提供することで、保健師の業務効率化と県民の疾病予防・健康づくりに共に貢献できることを光栄に思います。

関連情報

株式会社メドミライについて

東京⼤学の医⼯連携の枠組みから⽣まれたメドミライは、「世界の人々に、明るく健やかな“ミライ”を」を理念に、テクノロジーとサイエンスの融合で、個人に寄りそう新しい医療を創造し提供します。そして、あらゆる健康情報(日常生活)と医療情報(診察・処方)を生活者の手元に繋げるデジタルヘルスを基盤に、生活者がいつでも医療者とつながることができる社会を実現します。
メドミライ社は、AMED公募事業「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業(ヘルスケア社会実装基盤整備)」の中で本分析基盤を活用して、東京大学、日立システムズと協働してリアルワールドデータと「行動変容促進アプリケーション(MIRAMED®)」のデータの掛け合わせ解析により、行動変容要因の解析、個別化された保健指導の構築を行います。更には生成AIを活用して、個人の未病段階における生活習慣病の発症リスクとその原因を解説する基盤構築を行い、『健康の自分ごと化』を推進します。また、この研究開発の中から生まれるAI保健師を活用して未病領域における健康指導にも貢献していきます。

日立システムズについて

日立システムズは、強みであるさまざまな業種の課題解決で培ってきたお客さまの業務知識やノウハウを持つ人財が、日立グループ各社やビジネスパートナーと連携し、One HitachiでLumada事業を中心に展開することにより、お客さまのデジタル変革を徹底的にサポート。日立グループのサステナビリティ戦略の下、環境・社会・企業統治を考慮した経営を推進することで、国連が定める持続可能な開発目標SDGsの課題解決に向けた価値を創出し、企業理念に掲げる「真に豊かな社会の実現に貢献」してまいります。

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