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株式会社 日立システムズ

2023年2月9日
国立大学法人東京医科歯科大学
株式会社日立システムズ

共同研究の概要図
共同研究の概要図

国立大学法人東京医科歯科大学(学長:田中 雄二郎、所在地:東京都文京区)と株式会社日立システムズ(代表取締役 取締役社長:柴原 節男、本社:東京都品川区/以下、日立システムズ)は、東京医科歯科大学病院(病院長:内田 信一、所在地:東京都文京区)のがん患者の電子カルテデータの連携・利活用に関する共同研究を行いました。具体的には、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を利用した医薬・ヘルスケアプラットフォーム上で、がん患者の電子カルテデータを医療情報の交換・共有の標準規格であるHL7 FHIR*1形式に変換し、分析、保管、利活用することの有用性について検証しました。その結果、医療情報を統合的に解析し、診療に役立つ情報が得られることを確認できました。

*1
HL7 FHIR(HL7 Fast Healthcare Interoperability Resources):HL7(電子医療情報の交換のための標準化団体)が医療情報の相互運用性を実現するために開発した標準規格。

背景

  • 世界では医療情報の交換・共有の標準規格であるHL7 FHIRを活用した電子カルテデータの標準化および他医療機関とのデータ連携・利活用が進んでいる。日本国内でも電子カルテデータに関連する「診療情報提供書」、「健康診断結果報告書」、「処方情報」などについては、HL7 FHIRを活用した標準化が進んできており、今後、電子カルテデータを編集・管理・記録などを実施するシステムについてもHL7 FHIRを活用した標準化が見込まれている。
  • 医療情報を一元的に管理するプラットフォームにクラウド基盤を利用することで、大規模な医療データが保存でき、今後のシステムの拡張性やコスト削減が可能となる。
  • 標準規格に統一した医療情報をクラウドへ保管することで、病院内および他医療機関で保有している医療情報も共有することができる。それらの膨大な医療情報を共有・分析することで各医療機関での治療計画などへの活用が可能となる。
  • 患者に関する診療行為の記録(電子カルテデータ等)とPHR*2などを組み合わせることで、疾患自体の研究に加え、医薬品、医療機器の安全性、有効性、適応等に関する研究などへの活用が期待できる。
*2
PHR(Personal Health Record):個人の健康診断結果、服薬履歴、日常生活でのバイタルデータ等の保健医療情報。

研究内容と結果

厚生労働省、総務省、経済産業省の3省が定めた2つのガイドラインに準拠した*3日立システムズが提供する医薬・ヘルスケアプラットフォーム上で、東京医科歯科大学病院の頭頸部がん患者約200名を対象にデータ使用を拒否しなかった患者のデータを仮名加工化し、HL7 FHIR形式に変換したうえで、データ分析を実施しました。分析した結果については、治療計画の作成など実際の診療に役立つよう、異なる治療法や薬剤の違い、リンパ節転移の有無など、複数の条件によってその後の生存期間がどのように変わったかなどをグラフ形式で表示しました。これにより、病院内で統合した治療情報の確認がタイムリーにできるようになりました。
なお、今回の研究にあたっては、日立システムズが提供する「医療情報ガイドライン 準拠アセスメント・構築支援サービス」を活用し、HL7 FHIR形式に変換する際に必要となるコード体系やフォーマット変換をデータパイプライン処理により、自動化したことでデータ生成の期間や工数を短縮することができました。さらに、医薬・ヘルスケアプラットフォーム上で保管するデータについては多要素認証、ゼロトラスト*4、WAF*5等のセキュリティ対策を施しており、サイバー攻撃等からも保護します。
今後、病院内だけでなく、他医療機関で保有している医療情報についても連携させることで、治療計画などへのさらなる活用が期待できます。東京医科歯科大学と日立システムズは、今回の共同研究の結果をもとに、さらなるデータの利活用を推進します。

*3
厚生労働省、総務省、経済産業省の3省が定めた2つのガイドライン: 「医療情報システム安全管理関連ガイドライン」「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」。
*4
ゼロトラスト:社内外すべての通信を信頼しないことを前提に講じるセキュリティ対策。
*5
WAF(Web Application Firewall):Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃を防ぐためのファイアウォール。

クラウド上に保存・分析したデータは治療計画などの診療に活用できるような形式で表示
クラウド上に保存・分析したデータは治療計画などの診療に活用できるような形式で表示

なお、日立システムズでは2021年8月に発表した医薬・ヘルスケア領域における中期事業計画にもとづき、健診から治療支援、介護までを包括するサービスの提供をめざしています。これを実現するためには、医療情報を一元的に管理するプラットフォームの整備やアプリケーションの充実、PHRの連携に加え、電子カルテデータなどの医療機関での診療記録の連携等が必要です。今後も、医療情報の標準化の推進および他機関とのデータ連携・利活用を進め、さらに、医薬・ヘルスケアプラットフォーム上にパートナーとの連携を含めた各種サービスを組み合わせることでエコシステム*6を構築し、健診から治療支援、介護までを包括したサービスの提供をめざします。

*6
エコシステム:各業界・製品が相互連携、知識や技術を提供することで経済成長を図っていくビジネス構造。

本共同研究の意義について

医療データの利活用は盛んに叫ばれていますが、実際に行うのには技術的なハードルがありました。今回の研究において東京医科歯科大学では、AWSに精通し医療DXを推進する日立システムズと共同で、医療データを世界標準形式になりつつあるHL7 FHIR形式に変換し、クラウド上でデータ解析の実証を行いました。小規模のデータではありますが、これらの方法が実証された本研究の意義は大きいと思われます。今後、各医療施設に眠る医療データが統合され利活用されることで、新たな診断や治療の開発に繋がることが期待されます。

関連するニュースリリースについて

医療情報ガイドライン準拠 アセスメント・構築支援サービスについて

医療情報ガイドライン準拠 アセスメント・構築支援サービスは、医療情報システムの構築・運用を行う上で準拠すべき法律および「3省2ガイドライン」を正しく理解し、AWS上での適切な設計・実装・運用を支援するサービスです。

日本臨床腫瘍学会学術集会での発表について

本年3月16日から18日まで、第20回日本臨床腫瘍学会学術集会(2023 JSMO)が開催されます。今回の電子カルテデータを用いたHL7 FHIR対応医療情報利活用研究について、同学術集会(2023年3月16日(木)14:50-15:40 「臨床試験推進プログラム2(その他)」において発表を行う予定です。

東京医科歯科大学について

東京医科歯科大学は、1928 年10 月12 日に官立歯科医学教育機関として設置され、学問と教育の聖地である湯島・昌平坂において、医学と歯学の融合を通じて、先進的な医療の実践に従事する日本で唯一の医療系総合大学院大学として「知と癒しの匠」を創造し、人々の健康と社会の福祉に貢献しております。

東京医科歯科大学病院について

東京医科歯科大学病院は、「世界最高水準のトータル・ヘルスケアを提供し、人々の幸福に貢献する」を理念に掲げ、医学部附属病院と歯学部附属病院という2つの病院が一体化することにより全身をトータルに診ることで、今まで以上に患者さんの健康に貢献できる医療を提供してまいります。

日立システムズについて

日立システムズは、企業理念に掲げる「真に豊かな社会の実現に貢献する」ために、日立グループの社会イノベーション事業を支える一員としてサステナビリティ経営を推進しています。強みであるさまざまな業種の課題解決で培ってきたお客さまの業務知識やノウハウを持つ人財・サービスインフラを活用したデジタライゼーションサービスと、日立の先進的なデジタル技術を活用したLumadaやパートナーと連携した独自のサービスによりお客さまのデジタル変革を徹底的にサポート。社会課題を解決するだけでなく、社会価値、環境価値、経済価値の3つの価値向上に貢献し、人々のQuality of Lifeの向上とお客さまの価値向上を支援してまいります。

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