

“まずは実績を取る”から始める製造DX
実績収集を起点に横展開・拡張へつなげるプロジェクト事例
自動車の内装部品を中心に事業を展開するしげる工業株式会社様(以下、しげる工業様)では、現場の実績を正確に把握し、在庫や原価管理の精度を高めていくことが重要なテーマとなっていました。その一方で、生産実績は手書きメモや日報転記が中心となり、入力や集計に手間がかかるほか、データ化や全社的な共有が進みにくいといった課題も。そこで同社は、製造現場の実績を確実に収集する仕組みとして、日立システムズの「実績班長」を導入。大規模なシステムを一度に構築するのではなく、まずは「実績を取る」ことに集中し、短納期かつスモールスタートで進めたいという意向のもと、日立システムズが現場の声を踏まえながら伴走支援しました。その結果、約2カ月という限られた期間での稼働を実現。実績データを継続的に積み上げることで、現場の見える化にとどまらず、改善活動や今後の業務変革を下支えする基盤としての活用が期待されています。
しげる工業様では、従来からERPを導入していたものの、製造現場で生じる生産実績を十分に捉え切れていない状況が続いていました。良品数や不良数、工数といった情報は、紙の記録や日報をベースとした運用が中心となっており、現場の動きをタイムリーに把握しにくい点も課題に。その影響は在庫や原価の管理面にも及び、現場改善にとどまらず、経営判断に関わるテーマとして位置づけられるようになります。同社では過去にも実績収集に取り組んだ経験がありますが、仕組みが複雑になったことで現場への定着に至らず、十分な成果につながらなかった経緯がありました。そこで今回のプロジェクトでは、多機能なソリューションを一気に導入するのではなく、まずは「実績を確実に取る」ことに目的を絞るという判断が下されます。この考え方が、プロジェクト全体の前提となりました。
その方針のもとで選択されたのが、日立システムズの「実績班長」です。実績収集に特化したシンプルな仕組みであることに加え、PoCからスモールスタートできる点が、しげる工業様の進め方と合致しました。1製品1工程といった具合に導入範囲を明確にすることで、短納期での構築をめざす方針も定まり、プロジェクトは約2カ月という限られた期間で進められることになります。一方で、実績管理は現場の負担増につながる側面もあります。そのため同社では、トップから現場まで、なぜ実績を取る必要があるのかを整理し、同じ方向性を共有することにも注力しました。日立システムズは、この方針に沿って操作教育や考え方の共有を支援。その結果、短期間での稼働を実現し、実績データを継続的に積み上げていくための基盤が整えられました。
しげる工業様では、生産管理や原価管理の精度を高めていく上で、製造現場の実績情報を一元的に捉えにくい点が課題となっていました。加えて、基幹システム上の数値と現場の実態に食い違いが生じ、在庫差異が発生する場面も見受けられていたといいます。背景には、良品数や不良数に加え、停止時間や工数といった情報が、手書きメモや日報転記などの紙ベースで分散し、情報が必要な時に集約しづらい運用実態がありました。また、集計の粒度や記入内容にばらつきが出やすく、確認や照合に手間がかかり、実績をデータとして活用しにくい状況も続いていました。それによって、原価計算の裏付けにも影響が及び、在庫差異の説明や原価の根拠整理に時間を要することも。さらに、現場で起きている事象を数値で示しにくいことから、棚卸しや現場の確認といった付随作業が発生する要因にもなっていました。こうした状況は、現場の効率化に関する論点だけにとどまらず、経営の課題としても認識されるようになります。適切な判断や改善につなげていくためには、まず実績を継続的に蓄積し、誰もが同じ数値を前提に状況を捉えられる環境の整備が求められていました。
実績管理のソリューション導入にあたり、しげる工業様が重視したのは、限られた期間で立ち上げることに加え、「実績を取る」ことに集中できるシンプルな仕組みでした。多くの機能を一度に取り入れるのではなく、まずは実績収集という目的に絞り、その効果を現場で確認しながら広げていく進め方が求められていました。そこで採用されたのが、1製品1工程を対象としたPoC(概念実証)として柔軟にスタートするアプローチです。まずは限定した範囲で実績を取得し、現場で無理なく運用できるか、データとして活用できるかを検証。その過程で、拠点や製造工程が異なっても同様に運用できるのであれば、そのまま本番稼働へと移行していく流れが整えられました。
こうした「実績収集」という目的のために選ばれたのが、日立システムズの「実績班長」です。実績収集を中心に、品質管理・トレーサビリティ等の製造現場向け機能を備え、PoCから本番まで同じ環境を継続して使える点が同社の方針と合致。また、過度なカスタマイズを行わず、標準機能を中心に運用することで、短期間で検証から本番への移行を中断することなく進められ、実績を継続的に蓄積するための基盤が整えられました。
本プロジェクトは2024年末に構想と導入方針が固まり始動されました。「実績班長」の標準機能を中心に活用いただいたことで、わずか2カ月という限られた期間で要件整理から設定や検証まで集中的に進め、現場でご活用まで到達する短納期を実現しました。

実績班長の導入によって「実績を確実に取る」運用を整えることは、生産現場にとって新たな作業が加わることを意味します。日々の業務で余裕の少ない現場に追加の作業が発生する点は、導入を進める上で避けて通れない道でした。特に、生産の計画や日々の段取りに追われる現場にとって、実績入力は“追加の作業”として受け止められやすく「その時間をどう確保するのか」という声もありました。そこで同社が重視したのは、トップダウンのプロジェクトとして方針を示しつつ、現場の中核層や作業者が違和感なく受け入れられる状態をつくることでした。トップだけが理解して進めるのではなく、なぜ実績を取る必要があるのかを丁寧に整理し、全社で共有しました。日立システムズは、この方針を踏まえ、操作レクチャーなどの教育面や、実績が取れなければ在庫や原価にズレが生じ、結果として現場の確認などの工数が増えてしまうことなど、実績を取る意義や目的を共有する支援を行い、現場の理解促進を後押ししました。
プロジェクトの推進においては、上層部からの方針提示と、現場の理解を両立させる体制が取られました。現場の負荷に配慮しつつ、実績を取る範囲を明確にし、運用を広げなかった点も工夫のひとつ。また、導入の目的と優先順位を整理し、現場に「やる理由」を理解してもらえる環境を整えたことが、短期間での稼働の原動力に。実績入力が定着することで、現況を共通の数値で語れるようになり、業務の改善や経営判断のスピードを高めるための基盤が整いつつあります。
しげる工業様では、実績班長の導入を単なるシステム導入ではなく、今後の業務改善やデータの利活用につなげるための起点と位置付けています。現在は、現場で確実にデータを取ることを最優先としていますが、その先には、収集した実績を生かした展開を見据えています。まずは、1製品1工程で始めたPoCをモデルケースとし、拠点や工程が異なる現場へと横展開し、データの粒度と継続性を高めていく考えです。実績が蓄積されていけば、現場の状況を共通の数値で把握できるようになり、改善活動の精度も高まります。また、不良の発生傾向や設備停止の要因を捉え、原因分析や対策検討に踏み込むことで、再発防止や生産性向上につなげていくことが可能になります。さらに、実績班長のオプション機能を活用し、実績収集の対象や範囲を段階的に広げていくことも検討されています。こうした実績データが整備されることで、現場ごとの判断にとどまらず、部門や工場を横断した議論がしやすくなる点も、効果として期待されています。
将来的には、全社的な展開を進めたうえで次期ERPやSAPとの連携を視野に入れ、計画精度の向上や管理業務の一体化を図っていく構想も描かれています。さらに、品質トレーサビリティの確立や、生成AI・分析技術の活用など、周辺領域への展開も検討。その土台となるのが、現場で無理なく継続的に取られた実績です。実績班長を起点に、段階的に活用領域を広げながら、業務の高度化と将来の変革につなげていく。その第一歩として、今回の取り組みが位置付けられています。


検討にあたっては、複数のメーカーやパッケージも含めて情報収集と比較を行いました。機能が豊富で幅広い領域までカバーできるといった選択肢もあった一方で、当社としては、まず現場の実績を正確に取れる状態を早期に作ることが先決と考えました。導入規模や費用感、現場へのインパクト、運用までのスピードを整理し、「まず実績を取る」に目的を絞れるかを重視しました。その結果、実績収集に特化し、大きなカスタムをすることなくスモールスタートで始めやすい点、そして短期間で稼働へ持ち込めるといった点が自社の状況に合致したため、日立システムズの「実績班長」を選択しました。
運用面でとくに意識したのは、最初から理想形を作り込むのではなく、まず実績収集のコアに集中して使い始めることです。実績班長は画面が見やすく、何ができるかが把握しやすい点もあり、初期段階でイメージを持ちやすいと感じました。使おうと思えばさまざまな機能を活用することもできますが、限られた期間で稼働させるためには、標準機能を中心に運用手順を固めることが重要だと考えました。分からない点だけ確認しながら進め、使ったからこそ見える課題に合わせて必要な改善を行っていく。そうしたプロジェクトの進め方によって投資と工数を抑えつつ、現場に定着しやすい形をめざしました。
従来からERPは導入していたものの、製造現場で生まれる良品数や不良数、停止時間、工数などの実績が十分に反映されず、システム上の在庫と実在庫に差が出ることが課題でした。記録は手書きメモや日報転記に分散し、集計の粒度や記入内容にもばらつきが出やすい状況でした。そのため、在庫差異の説明や原価の裏付けに時間を要し、棚卸しや現場の確認といった追加作業が発生する要因にもなっていました。こうしたズレは現場改善にとどまらず、経営判断にも関わるテーマです。まず実績を一元的に蓄積し、誰もが同じ数値を前提に状況を捉えられる基盤を整える必要があると考えました。
運用開始までのリミットが約2カ月と短かったため、既存の製品をできるだけカスタムせずに使用すること。そして範囲を広げすぎないことを徹底しました。モデル職場での実績収集を起点に、要件整理から設定、検証を集中的に実施しています。社内側で要望や質問を取りまとめ窓口を一本化し、論点を整理して日立システムズと連携しました。日立システムズ側が提示された論点に対して案を示し、必要事項をスムーズに返していただいたことで、現場への指示がぶれにくい状態を保てました。標準機能を中心に立ち上げ、必要な点のみを見極めながら手戻りを抑え、短納期での稼働へつなげています。
今後は、まず各プラントへの横展開を進め、実績データを継続的に蓄積していく方針です。今期中(2026年3月まで)に全工程へ広げる計画を掲げ、モデル職場で得た運用の勘所を展開先にも適用していきます。現時点では既存ERPへ実績を返す段階には至っておらず、まず取得行為を定着させることを優先しています。データが揃えば、不良や停止の状況を共通の数値で把握し、改善活動の議論に生かせるようになります。2026年4月以降は利活用も検討し、将来的には次期ERP (SAPを含む)との連携、品質領域のトレーサビリティ、分析・AI活用へ広げたいと思います。

しげる工業株式会社
群馬県太田市に本社を置き、自動車の内装部品を中心に事業を展開。インストルメントパネルやドアトリム、サンバイザ ー、ルーフ、シートなどを手がけ、開発段階から自動車メーカーと連携しながら高品質なものづくりを行っています。
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*本内容は2025年12月時点の情報です。
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