議員と市職員100名以上に研修！　システム導入前、SE最後の大仕事

大津市が提示した仕様書には、システム要件とは別に、特記事項としてこのような条件があった。「大津市に対して複数回、研修を行なうこと」。今回、タブレット端末を実際に使用するのは、大津市議会に所属する議員と大津市職員、約120名。全員が滞りなく会議を進行できるよう、システムの使い方をレクチャーしてほしいという要望だった。大人数の議員や議会関係者に研修を行うという大仕事に抜擢されたのが、SEの長谷川だ。

「お客さまに提案は行っていますが、講師の経験は、もちろんありません。未知の業務でしたが、社内メンバーに協力してもらって何度もシミュレーションも行い、手さぐりながらも念入りに準備を進めました」（長谷川）。

研修は全3回。受講後にはすぐにでもシステムが使用できるよう、端末の操作方法から体系立ててカリキュラムを組んだ。

そして迎えた、研修初日。予想を超える状況が、長谷川を待っていた…。

全員が理解できるには？ 顧客視点の研修で信頼関係を深める

「それぞれのタブレット端末経験が、予想以上に大きく異なる」―それが、研修スタート直後から、長谷川が感じたことだった。

「例えば、タブレット端末を触るのも初めて、『タップ』といった言葉自体を初めて聞いたという方から、基本的なことよりも早くシステムの使い方について知りたいという方まで、さまざまでした。研修の内容だけでなく、話し方や資料の見せ方も一律だとうまくいかない。ゆっくりとしゃべるように心がけていましたが、それでも『早い！』って言われたりして（笑）年齢や経験が幅広い100名以上の方々に対し、3回の研修で全員が理解できる進行方法が課題となりました」。

そこで、第1回目は予定を変更し、タブレット端末の使い方を説明して終了。第2回は「前回の復習」「議会運営システムについて」「グループウェアについて」の3部構成に組み直し、希望の時間帯のみ参加してもらうことで効率化を図った。社内メンバーも協力し、スマートデバイス初心者の方には、マンツーマンで徹底的にフォロー。そして最終回では、議場内、委員会会場で本番同様にシミュレーションを行い、タブレット端末のデビューとなる2014年秋の通常議会に備えた。

そして迎えた当日は、「議員の方たちがお互いにサポートし合っていて、使い方についてのトラブルはありませんでした」。研修に協力した営業の北村も、感心する。「一人ひとりの状況に合わせて、研修の場でも内容を調整しながら柔軟に対応してくれた。顧客視点に立ち、信頼関係をさらに深めてくれる、とても良い研修でした」。

「議会ICT化プロジェクト」を全国各地へ！

通常議会での初登場後から、議員、議会局の好評を得たタブレット端末による運営システム。「膨大な資料がデータ化され、１台の端末からすべて楽に取り出せる」「スケジュール管理ができる」「コミュニケーションツールとしても役立つ」など議員活動をサポートする機能が集約され、「モバイルセクレタリー」として活躍している。

大津市議会におけるICT化プロジェクトは、システムの運用、保守という第2フェーズに入ったが、多くの自治体から引き合いがあるという。今後のプロジェクトへの意気込みについて、40年来のベテランSE・今田が語った。

「『議会ICT化プロジェクト』は、大津市議会でまず成功をおさめ、現在は多数のお問い合わせや引き合いをいただいており、うれしい限りです。私は長年、インフラ系のシステム開発に携わってきました。製造業や医療業など他の業界と比較すると、公共案件はスケジュール、納期を重視した業務遂行が求められます。その限られた期間の中で、いかにお客さまの要望に応えられるか。自分が今まで培ってきた技術を公共案件の場で生かし、一つひとつのプロジェクトを確実に進めて、全国規模で貢献したいと思っています。

大津市議会の要望と営業の熱意に全力で応えたSEたちは、もう次のプロジェクトに向かって動き出している。彼らの議会ICT化プロジェクトが全国各地で展開される日も、遠くないだろう。

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