2020年6月1日掲載
スマートフォンの対話的インターフェース(SiriやGoogleアシスタントなど)やスマートスピーカーの普及で、すっかりおなじみとなったチャットボット。RPA(Robotic Process Automation)と並んで、働き方改革の代表的ソリューションと言う人も多いようです。
チャットボットとはそもそも何なのか、どうやって導入したらいいのか、現場でどのように使われているのかを3回にわたって解説していきます。今回は、チャットボットとは何かについて解説します。
YMC電子工業(以下YMC)は、埼玉県にある従業員約280人のEMS(Electronics Manufacturing Service)企業だ。同社の顧問ITコンサルタントである美咲いずみは、毎週月曜日のシステム部の部内会議に同席し、そのあと山田昭CIOとのコンサルティング・セッションの時間を持っている。
今回の山田CIOからの依頼は、働き方改革を推進するに当たって、比較的簡単に導入できて、しかも効果的なソリューションを教えてほしいということだった。
「ビジネスサイド、特にCOOからもっと『働き方改革』を推進するための知恵を出せとやいやい言われているんだけど、そろそろ期末処理の時期でシステム部はみんな大忙しで、今すぐというのは難しい状況なんだ。そこで美咲さんの知恵を拝借したくて」
山田CIOは、定型業務の自動化についてはRPAの導入をすでに開始しているので、それ以外の、例えば経費精算のような細かいミスが多く、また収益を生まない業務を効率化できないかと言う。
「それならピッタリのソリューションがあります。チャットボットです」
「聞いたことがあるな。chat(対話する)+bot(ロボット)という意味だね?」
「ご明察! 人間と自動的に対話を行うソフトウェアです。LINEやFacebookメッセンジャーのような文字ベースのものが多いですが、スマートフォンやスマートスピーカーなどの音声アシスタントもチャットボットの1種と言っていいと思います」
「しかし世の中進歩したね。(スマートフォンを指さして)こんな小さな機械が話し相手になってくれるなんて、僕が子供の頃はSFの世界の話だったよ」
「山田CIOは何年生まれでしたっけ?」
「僕は昭和40年生まれ。西暦だと1965年だ」
「だとしたら、実は人間と会話するソフトは山田CIOが生まれた頃からあるんですよ」
いずみがいうソフトウェアとは、マサチューセッツ工科大学のジョセフ・ワイゼンバウムが1964年から1966年にかけてプログラミングしたELIZA(イライザ)のことである。
ELIZAは相手の発言を用意されたパターンがあればそれに応じた回答を返し、そうでなければ基本的にオウム返しするだけのソフトだった(このようなソフトを、人工知能をひねって「人工無脳」と呼ぶこともある)。会話の内容を理解しているわけではないのだが、ELIZAの原理を聞いても納得せず、知性があると感じてしまう人間が続出したと言う。ELIZAはその意味では成功したソフトであり、のちにオンラインセラピーなどに応用される。
そのずっとあと、PCの世界では、Office 97にカイルというイルカのキャラクターが登場した。ヘルプ表示などを行うアシスタントソフトである。しかしキャラクターが作業の邪魔になるということで非表示にするユーザーがほとんどで、Office 2007では完全に廃止されてしまった。
カイルと反対に大成功したチャットボットが、2011年にiPhone 4Sに搭載されることが発表されたSiriである。2012年にはGoogle Now、2017年にはGoogleアシスタントも登場し、スマートフォンやスマートデバイス(主にスマートスピーカー)の世界では音声チャットボットが普及した。
これらは従来の「人口無脳」とは違って、自然言語処理やパーソナライズ検索などAIを活用した機能を備えている。だが言葉の意味を理解していないという点では同じである。
2016年には、マイクロソフト、Facebook、Googleがそろってチャットボットに関するサービスや製品を発表し、アプリケーションソフトのUIとしてチャットボットが採用される動きが活発化し、現在に至っている。
また普及しているメッセージ・サービスであるLINEやFacebookメッセンジャーにチャットボットを組み込んで、業務に活用する企業が増えている。
まとめ
いずみの目
本文では機械学習ベースのチャットボットのイメージがつかみにくかったかもしれません。もう少し具体的に知りたい方は、例えばこちらをご覧になるといいでしょう。
日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。