

森林はCO₂の吸収源としてカーボンニュートラルの実現に欠かせませんが、日本では林業従事者の高齢化や人手不足により、間伐や保全活動の前提となる森林調査を従来の手法で継続することが難しくなっています。こうした背景から、日立システムズはドローンによる計測とAI解析ソフトウェアを組み合わせた「森林調査DXサービス」を開発。森林全体の状況を高精度に把握できる仕組みの提供を開始しました。これによって、安全かつ効率的に森林を管理できる体制の構築を支援し、持続可能な森林経営の実現を後押ししています。
社会への視点
林業の担い手不足と調査負荷が増大し、
適切な森林管理のための仕組みが必要に
森林環境税の導入やSDGs・脱炭素への関心の高まりを背景に、森林への注目度が高まっています。森林資源を持続可能な形で利用するには、長期的な計画と、現況状態の把握のための調査が必要です。しかし、実際に森林に入って行う調査は多大な労力と時間を要し、傾斜地での滑落など安全面のリスクも伴います。さらに林業事業体の高齢化が進む中、調査を担う人材の安定確保が難しく、管理の質を維持しながら調査を継続することが大きな課題となっています。
加えて、森林由来のカーボンクレジット創出をめざす場合、調査・解析・プロジェクト登録・モニタリング報告・認証・販売といった専門的プロセスが必要です。これらに自治体や森林組合が単独で取り組むには大きな負荷がかかります。
森林保全、林業生産性の向上、日本の脱炭素化という社会的要請が高まる今、安全で効率的かつ高精度な森林調査の仕組みを整え、持続可能な森林経営を支える基盤づくりが求められています。
日立システムズ
のアプローチ
ドローン計測とAI解析で森林調査を高精度化し、
調査工数を大幅に削減
日立システムズは、ドローン計測とAI解析を組み合わせた森林調査DXサービスを推進し、樹種・樹高・胸高直径・立木幹材積・CO₂固定量を単木単位で推定する技術を提供しています。宮城県女川町の実証では、従来19人日を要した調査が4人日に短縮され、約8割の工数削減を確認。北海道芦別市では、多様な樹種で9割以上の識別精度が示されるなど、精度面でも高い有効性が実証されています。
また、人が立ち入るのが難しい急傾斜地や奥山でも、安全に短期間でデータ取得できる点が大きな特徴です。取得したデータは施業提案や森林管理計画、微地形を含む高精度地形図の作成にも活用でき、自治体や森林組合が限られた人員でも効率的に森林を管理できる体制づくりに寄与します。さらに、AI 解析ソフトウェアを提供するDeepForest Technologies株式会社との連携によって、解析技術と現場知識を組み合わせ、森林調査の標準化と高度化を支えています。
AI解析結果(イメージ)

高解像度の地形図(イメージ)

支援拡大に向けて
「地域循環型の森林経営モデル」を構築し、
日本のカーボンニュートラル実現に寄与
日立システムズは、森林調査DXサービスで取得したデータを活用し、カーボンクレジット創出から販売まで一貫した支援を拡大しています。航空レーザーやドローンデータを活用した吸収量算定やJ-クレジット制度へのプロジェクト登録、モニタリング報告書作成、金融機関との連携によるクレジット販売支援までを包括的に提供していきます。
愛媛県では、久万造林株式会社と持続可能な森林づくりに向けたJ-クレジット創出のための協創プロジェクトを実施。県保有の航空レーザー測量データなどを活用した分析やモニタリング報告書の作成により、方法論FO-001に基づく愛媛県初の森林由来J-クレジットを創出しました。このクレジットは、株式会社伊予銀行を通じて、四国ガス株式会社へ販売しました。これらの取り組みは、森林調査の高度化が新たなスタンダードとして普及していく可能性を示しています。
今後は、全国300拠点のネットワークを活かし、森林調査DXサービスとクレジット創出支援を組み合わせた「地域循環型の森林経営モデル」を構築しながら、林業の担い手不足や技術継承などの課題解消に向けて、地域の脱炭素と日本全体のカーボンニュートラル実現に寄与していきます。