我が国では、高度経済成長期に道路や橋梁、空港、港湾など、社会インフラが集中的に整備され、これらのストックは建設後すでに30~50年の期間を経過していることから、今後急速に老朽化が進行すると想定されています。社会インフラの老朽化は人々の安全な暮らしを脅かし、そのまま放置するとテロ行為などにも悪用されるおそれがあります。こうしたなか、日立システムズは、パートナー3社と連携して全国に無数にあるマンホールの防犯・安全対策ソリューションの開発、普及をめざしています。
建設後50年以上経過する社会資本の割合(国土交通省)
H25年3月 | H35年3月 | H45年3月 | |
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道路橋約 40万橋※1(橋長2m以上の橋約70万のうち) | 約18% | 約43% | 約67% |
トンネル 約1万本※2 | 約20% | 約34% | 約50% |
河川管理施設(水門等) 約1万施設※3 | 約25% | 約43% | 約64% |
下水道管きょ総延長 約45万km※4 | 約2% | 約9% | 約24% |
港湾岸壁 約5千施設※5(水深-4.5m以深) | 約8% | 約32% | 約58% |
社会への視点
社会インフラの老朽化を背景に
機能維持・更新ニーズが高まるなかで
日本国内で進むさまざまな社会インフラの老朽化は、安全・安心な暮らしを確保するうえで大きな脅威となっています。国土交通省によると、2013年度に約3.6兆円だった社会インフラの維持管理と更新にかかる費用は20年後に最大5.5兆円へと増加する見通しです。また、近年は気候変動に伴うゲリラ豪雨への備えやテロ行為に悪用されにくい仕組みづくりにも大きな関心が寄せられています。こうしたなか、社会では今、社会インフラの保全・防犯コストを圧縮しつつ、どのようにしてその機能の維持・更新を進めていくかという課題に対する解決策が求められています。
社会インフラの維持管理・更新にかかる費用と予測(国土交通省)
年度 | 推計結果 |
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2013年度 | 約3.6兆円※ |
2023年度(10年後) | 約4.3~5.1兆円 |
2033年度(20年後) | 約4.6~5.5兆円 |
日立システムズ
のアプローチ
3事業者をパートナーに
全国各地のマンホールの保全・防犯をめざす
社会インフラの保全・防犯対策に関して、当社が注目している分野の一つが、上下水道やガス、電気設備に関わるマンホールです。マンホールは全国どの地域にもあり、排水処理能力を上回るゲリラ豪雨や老朽化などによる蓋の破損や飛散の対策などが急務となっています。また、蓋の窃盗やテロ行為の対象にマンホールが利用される懸念があり、人々が安心してより安全な生活を送るためには、マンホールに起因する問題に対する取り組みが求められています。
こうした課題を解決していくために、当社は、日立グループがもつ各種センサーやIoT(Internet of Things)技術をベースに、各分野で高い専門性をもつ㈱トミス、㈱イートラスト、シスコシステムズと連携。自治体・公益企業向けのマンホールの保全・防犯対策ソリューションを共同開発し、2016年5月からトミスの敷地内で実用化に向けた実証実験を開始しました。
担当者の声
今回のプロジェクトでは、センサーなどの機器をはじめ、ネットワーク、分析ソフトなど、さまざまなメーカーから多くの製品が個別に提供されています。しかし、単純にそれぞれを組み合わせて使うだけではデータ量が膨大になったり、運用していくなかでコストが想定以上に膨らんだりすることが考えられます。そこで日立システムズでは、センサーからプラットフォームまでを一気通貫で全体を最適化し、導入・運用しやすいIoTを提供するようにしています。今後は、実証実験を通してセンサネットワークやセンサーへの給電方法の改良などの開発を進め、年度内にサービスとしてリリースすることをめざしていますが、ゆくゆくはマンホール以外のさまざまな社会インフラにも拡大していきたいと考えています。目標は“IoTのトータルコーディネーター”として、まだ誰も考えていないような新しいビジネスをお客さまと創っていくことです。
サービス・ソリューション
事業統括本部
プラットフォームソリューション事業推進本部
FIMS推進部 IoT推進グループ
技師上川 恭平(前列右)
ソリューションの
概要
センサーやIoT技術を活用して
マンホールの状況をリアルタイムに監視
マンホール内に危険物を設置されることを防ぐため、センサーやIoT技術を活用して蓋の開閉状態を常時監視・通知するほか、有毒ガスの発生有無、水質・水量などの状態を監視し、設備点検作業前の作業員を事故から守ります。センサーで収集した情報は当社のデータセンターにあるクラウド型遠隔統合監視基盤上で監視しています。また、コンタクトセンターでの監視代行や通報代行、全国300か所のサービス拠点に常駐するカスタマーエンジニアを活用した点検・作業代行などもオプションサービスとして提供することで、マンホールの保全・防犯対策をトータルにサポートしていきます。こうしたサービスによって、お客さまはマンホールの蓋の開閉状況を監視ポータルを通じてリアルタイムに確認することが可能になると同時に、事件や事故に対する早期対策が可能となります。
マンホールの安全・防犯対策ソリューション
各社の役割
日立システムズ | センサーからデータを収集するプラットフォームの運営や、サービス拠点を活用したBPOサービスの開発・提供 |
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トミス | マンホールの蓋の製造・販売においてシェアが高く、2013年から水道設備の保守や管理を目的に当社とICタグを利用したマンホールを開発している実績を生かし、本ソリューション実現に向けたマンホールを製造・開発。 |
イートラスト | 公共分野での監視ソリューションやセンサー開発の知見を生かし、ソリューション実現に有益なセンサーの開発などを担当。 |
シスコシステムズ | 収集した情報をクラウド環境へ接続するための通信機器・ゲートウェイ機器の開発・提供。(当社とは2015年6月よりIoEエコパートナーとして連携) |
パートナーの声
シスコは、日立システムズ、トミス、イートラストと共同で手掛けるマンホールの保全・防犯対策ソリューションの実証実験を歓迎いたします。スマートシティをはじめとする街づくりの概念において、センサーネットワークは、社会インフラを維持・安全に支えるシステムの重要な基盤であると捉えています。シスコは、引き続きIoEエコパートナーである日立システムズと協調し、IoTの新たなソリューション分野も推進して参ります。
シスコシステムズ合同会社 執行役員
最高技術責任者(CTO) 兼 IoEイノベーションセンター担当
濱田 義之様
将来展望
社会インフラ維持管理システムとの連携で
人々と社会の安全を確保
当社およびパートナー3社は、2016年12月までを予定している実証実験で得た知見やノウハウをもとに、上下水道やガス、電気に関するマンホールを保有している自治体・公益企業に対して2016年度中にサービスを開始する計画です。
また、当社では、すでに製品化している公共構造物の台帳管理機能や長寿命化計画、補修計画策定支援機能を備えた「CYDEEN社会インフラ維持管理システム」との連携や、マンホール以外の公共構造物や設備の防犯対策やメンテナンス時の安全確保を支援するサービスの提供も検討していきます。
日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。