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株式会社 日立システムズ

専門家コラム:非常識な人材育成の旅

【第8回】働きがいを科学する(2)
~高業績組織に見る非常識マネジメント~(後編)

皆さん、こんにちは。場活師西村です。私は、企業の人事・育成部門に所属しながら、職場・現場の活性化を実現する場活師としてさまざまな取り組みを行っています。
本コラムでは、「非常識人材育成論」として組織における人材育成について連載し、掘り下げます。それは、「非常識」な「現場事例」「意見」「視点」の切り口にこそ、変化の著しい環境下での人材育成のあり方、があるのでは?という問題提起でもあります。

常識外れの紺野社長の働きがいマネジメント

前号では、(株)こんの、紺野社長の非常識と思えるマネジメント

  • 「社員、みんな大好き!」と公言
  • 社員が活き活き働くことを重視
  • 目標管理を厳しくしなくても成熟市場にあって好業績
  • 社外からも認められる「いい会社」
    (*第5回「日本で一番大切にしたい会社大賞」 「審査委員会特別賞」受賞)

を作り上げている、そのスタイルをご紹介しました。そして職場にあふれるキーワードは「働きがい」「やりがい」です。
使い古された言葉ですが、取材を通して改めて感じたのは、従業員の働きがいが、かくも業績向上に直結するのか?という驚きです。
今号では、なぜ紺野社長は、このようなスタイルをとれるのか?
社長自身へのインタビューを通じ、非常識マネジメントスタイルを生み出した背景を深堀りし、組織リーダーのあり方を浮き彫りにします。
また、働きがいを担保し、人材育成を支える従業員主体の社内制度や仕組みづくりについても詳しく伺います。

~紺野社長インタビュー(後編)~非常識マネジメントを生んだ壮絶人生


インタビューに応じていただいた紺野社長

いきがっていた若手時代

筆者)社長の経歴をご紹介いただけますでしょうか?

紺野)私は、学校を卒業後、2年間のサラリーマン生活を経て、この会社に入社しました。(株)こんのは、祖父の代から数えて私で3代目になります。

筆者)ずっと、この地元で事業をなさっているのですね?

紺野)はい。そうです。時代の変遷と共に、リサイクルする商品は変わりますが、基本、リサイクルを主業として事業を展開しています。

筆者)最初から、今のようなマネジメントだったのでしょうか?

紺野)いや、全く違っていました。正直、若かりし頃は、とてもいきがっていたと思います。3代目として、事業を拡大しようと躍起になっていました。と言いますのも、当時はバブル崩壊で不況になっていましたから、必死でした。
この業界は、人が定着しにくく採用してもすぐ辞めていくのが当たり前の傾向にありましたが、不況のせいもあって、それなりに人は採用できていました。
ですから、業績を上げるには、業績に貢献できる社員をいかに確保するか、逆に言えば、そうでない社員には、「嫌なら辞めろ」くらいの強権的マネジメントがほとんどでした。男の成功はいい仕事に、いい車、そんな感じでした。

筆者)今からは、想像もつきませんね。

紺野)当時の私は、役員として3代目として社員になめられないように、相当背伸びしていたと思います。この業界は、さまざまなキャリアを持った社員が入社しますので、その中には、強面の社員もいましたので、「こいつらをキチンとマネジメントしなければ」という思いが強かったと思います。


社長室にある創業当時の「前掛け」と
「手ぬぐい」

筆者)それで、うまくいきましたか?

紺野)いいえ、社員の定着率は低く、業績も低迷し、結果的には誰もついてきませんでした。自分のマネジメント観がガラガラと崩れ落ちていく感じです。おまけに、身体を壊し2週間ほど入院しました。踏んだり蹴ったりの29歳でした。

筆者)一番、辛い時期でしたね。

紺野)今から思うとそうですね。ところが、その入院中、たまたま「マーフィーのゴールデンルール」という本に出会いました。この本をキッカケに、「ひょっとして、自分の考え方は根本的に間違っていたのではないか?」という思いが芽生えはじめました。

経営者、リーダーとしての「あり方」の模索と得られた大きな「気づき」

紺野)それをキッカケに、経営者のあり方について模索しはじめました。実は、退院後も原因不明の微熱が続き、体調的にはしんどかったのですが、何か突き動かされたように、経営の勉強をしはじめました。

筆者)どのようなことを学ばれたのでしょうか?

紺野)「掃除に学ぶ会」をご存知でしょうか?株式会社イエローハットの創業者である鍵山秀三郎さんがはじめられた、「掃除を通じて人格形成、職場、地域をより良くしていく活動」です。当時、鍵山さんの講演を聴く機会があり、講演に感銘を受けたものの「掃除だけで職場が良くなるのか?」と素朴な疑問を持ちました。そこで、講演後、講師控え室にアポなしで訪問して、鍵山さんご自身に直接その疑問をぶつけてみました。

筆者)ずいぶん、思い切ったことをしましたね。

紺野)そうですね、すると、鍵山さんご自身から「○月○日の朝7時に、目黒にある本社に来なさい」と言われたのです。その日、約束の時間の7時前、10分か15分くらい前に本社へ伺うと、黒塗りの社長車らしい車を洗っている老人がいたのです。最初は、「秘書か総務の人か、運転手かな?」と思っていたら、なんと、鍵山さんご自身が車を洗っていたのです。1部上場企業のトップがですよ。

筆者)すごいですね。

紺野)驚いている間もなく、鍵山さんから「ついてきなさい」と言われるままに行くと、公園のトイレに連れて行かれました。そこで、スポンジを一つ渡されて、「はい、掃除しましょう」と。

筆者)また、驚きですね。

紺野)私が、躊躇(ちゅうちょ)している傍らで、鍵山さんご自身が素手でスポンジをつかんで、小便器に頭を入れながら真剣に掃除されているのです。まだ、躊躇している私を見かねたのか、「目は臆病でも、手には勇気がありますから」と一言。それから、私も必死に無我夢中で公園のトイレを一緒に掃除していました。1時間も経つと、黄ばんだ便器がみるみる綺麗になっていく、そのような作業を午前中一杯させていただきました。
すっかり綺麗になったトイレを眺めながら、ふと私は、経営者として、謙虚さもなければ、従業員への感謝もないことに気づき、終わった瞬間にボロボロと止めどなく涙があふれ出て、しばらくの間、泣いてました。いかに自分が小さな人間であったかを掃除を通じて思い知った瞬間でした。
掃除の大切さは、綺麗にすることだけでなく、綺麗にする=本来に戻す過程を通じて、人間の傲慢さや自分たちの驕(おご)りに気づけるか?だと思いました。この時に気づいていなければ、私の会社は倒産していたと思います。当時は、離職率100%が当たり前で、そんな危機的な状態にもかかわらず自分は強がっていました。従業員の多くが、強面の面々でした。そんな彼らに対抗しようと、自分は弱いくせに強い自分を演じようと、必死に背伸びしていたのです。そのことに気づかされたました。

社内の猛反発を乗り越えた契(ちぎり)とチームの一体化


紺野社長と筆者

筆者)そこからどのように組織を改革されていったのでしょうか?

紺野)そこから、「掃除」をキッカケにマネジメントを変えていこうとしました。これを「愛ある強制」として、社内に取り入れようとすると、社内から猛反発されました。それはそうです。今まで、「イジメの強制」が社内で当たり前でしたので、「掃除」とは言え社員からすると、また同じような強制に思えたのも仕方ないことです。

筆者)どうやって乗り越えたのでしょうか?

紺野)多くの反発や不満を抱える中、幹部の1泊2日の合宿がありました。私のやり方に不満を持つ幹部のほぼ全員が、辞める気満々で辞表をポケットに忍ばせて、合宿に臨んできました。それほどの覚悟を持って私に対峙してきたのです。合宿では、夜を徹して、これから会社をどうしていくか、喧々諤々(けんけんごうごう)の議論をかわしました。
ちょうど、1泊目の夜(2日目の朝)ですかね、議論の末に意識がもうろうとしている中、一番私に反発している幹部が私に「社長にとって、俺らは、何なんですか?」と凄んできたのです。その時の私は、素直に「宝だよ。だから、大切にする」と約束しました。
このやりとりをキッカケに、私と幹部とは打ち解けはじめました。この時、凄んだ幹部は、現在、一番の中核になって私と会社を支えてくれています。

筆者)すごいやりとりですね。まさに、トップと社員との「契(ちぎり)」と言えますね。

紺野)そうですね、この時の合宿がターニングポイントとなって、トップと従業員との関係が急速に改善していきました。そして、平成19年より「掃除に学ぶ会」に幹部社員を中心に参加し、人材育成の基本を「掃除」においています。

人材育成の基本としての「掃除」と「他喜力」


紺野社長自作のコップ(コメントに注目)
「あなたのコップが上を向いているならば、私はいつでも満杯に注ぎます。」

筆者)なぜ、掃除に着目したのでしょうか?

紺野)このコップをご覧ください。コップは、当たり前ですが上向きになって、中身が入ります。下向きでは入りません。下向きでは気づきのスイッチがOFFになっているため、何かを教えても入らないのです。なので、何を教えるかの前に、コップを常に上向きにしておくことが、とても重要なのです。その基本動作が、掃除なのです。
掃除を通じて、謙虚であることを学び感謝し素直になる。この一人ひとりのあり方の醸成こそが、人材育成の基本になると私は考えています。まさに人間力の向上が鍵だと思っています。

筆者)なるほど、理にかなっていますね。掃除以外に何か取り組んでいらっしゃることは、あるのでしょうか?

紺野)「他喜力」ってご存知でしょうか?「他喜力」とは、目の前の人を喜ばせる力とも言います。私どもの事業は、人材の力がすべてであり、そのプロセスとしてのチームワークが大事ですので、組織の中での情報共有はもとより共感し合うことに気をつかっています。

筆者)具体的には、どのような取り組みを意識されているのでしょうか?

紺野)とにかく「対話」ですね。例えば、職場ごとにお菓子タイムを設けていますし、私も暇さえあれば、現場に行って社員と対話しています。対話することで、お互いの考えや価値観を共有する機会になっていると思います。また、当社では、各営業所が点在していますので、組織を超えたタテ・ヨコ・ナナメをつなげる仕掛けとしATM(明るく楽しく前向き)塾を作って、メンバーが参加しながら、学習できる機会を作っています。
ほかにも、本の読書会やダイバーシティ研修など、社員の自主的な研修参加を支援しています。当社では、社員第一の証しとして、売り上げの一定割合を育成費用に当てています。これは、儲かっていない時代から実施しています。

筆者)すごいですね。

紺野)これも、合宿の時に約束した「社員は宝」との約束の一つでしかありません。また、当社では、売上利益目標の競争はありませんが、感動(CAN DO)大賞(*)を設けて結果ではなく、プロセスや姿勢を評価するようにしています。

*前号で紹介(「親孝行お食事券」など賞品もユニーク)

愛されるリーダーの条件~修羅場と気づき

  • 社員の新婚旅行のホテルにフルーツバスケットを届ける社長
  • 奥さんから「絶対辞めるなよ」と言われる従業員
  • 離職率が1~2割が当たり前の業界で、なんと一昨年退職者ゼロを達成
  • 日本で一番社員を大切にする社長
  • 社員のことが一番大好き!と公言してはばからない社長、、、

など、常識外れのマネジメントに行き着くまでには、壮絶な人生体験を抜きに語れないことが、インタビューを通じて分かってきました。また、この人生経験があったからこそ、このようなマネジメントができている。まさに、体験と実践が表裏一体となっているのではないでしょうか。


従業員から社長への誕生日プレゼントのチャンピオンベルト


お菓子をイメージした素敵なプレゼント

紺野社長のインタビューを通じて、リーダーシップの育成という視点で、以下に私見を述べます。
数々の経営賞を受賞している紺野社長のマネジメントスタイルの確立には、以下の条件があったと思われます。

  • リーダーとしての挫折という修羅場体験:倒産の危機とマネジメントの絶望感
  • そこ(体験)から学んだ大きな気づき:掃除を通じて学んだ謙虚さ
  • リーダーの謙虚さをマネジメントスタイルで実践:言動一致のマネジメント

という3つの要因です。

修羅場体験とは、従来の自分の方法論や枠組みでは通用せず、打ち手も分からずに絶望感に苛まれる過酷な中長期的体験と言い換えられると思います。それは、まさに、自己否定であり、最悪倒産に至る非常に高いリスクとストレスにさらされる辛い体験です。読者の皆さんは、どれくらいの修羅場体験を経験されたことがあるでしょうか?
私たちは、ビジネスシーンにおいて、特に大手企業ではリスクを避けることを最優先に考えるため、多少のトラブルはあったとしても、我が身や組織が危なくなるような高リスクの体験をしようにも、なかなかできないのが実態です。その意味では、リスクへのコントロールがしっかりしている反面、修羅場体験ができにくくなっている、と言えると思います。

また、気づきという点でも、研修などのトレーニングでの知識やフレームワークの習得はもちろん大事ですが、そのような「スキル」「ナレッジ」「考え方」というより、リーダーとしての「あり方」「信念」を問うような気づきは、昨今、あまりないように思いますが、いかがでしょうか?
紺野社長は公園のトイレを掃除するという、常識的には考えにくい経験とご自身の修羅場体験を掛け合わせて、「大きな気づき(謙虚さ)」を得ることができました。逆に言えば、大きな気づきとは、研修やトレーニングなどの学習ではなく、自らに起きた体験を掛け合わせた体験の連続でしか得られないのかもしれません。
ちなみに、昨今、マスコミで話題になっている素晴らしい組織運営をされている中小企業の経営者には、紺野社長同様の壮絶な修羅場体験を経験されている方が少なからず、いるように感じています。また、リーダーシップの重要な要素として「謙虚さ」を挙げられているのも、非常に興味深いと思います。


経営者としての表彰状が数多く社長室に。
こちらも、その一つ

最後に、言動一致の振る舞いです。修羅場体験で得た気づき(謙虚さ)を、自分自身の信念としてマネジメントに活かしていくには、リーダーのブレない言動一致のスタイルが必要になります。「社員=宝」と、メンバーと契をかわした紺野社長は、全くブレずに徹底して実践しています。名刺やメールでの署名は、すべて「社員の幸せ向上担当&代表取締役社長」との肩書きで貫いています。紺野社長のこのブレないスタンスそのものが、メンバーとの関係性・信頼関係を生み、目標管理をしなくても自主的にチームワーク良く連動する働きがいの高い組織を作り出しているように思います。
紺野社長のあり方からは、よく語られるマネジメントやリーダーシップのスキルや思考力とは少し様相の違う、人間臭い部分を感じます。この人間味、人間とは何か?自分とは何か?を探求する姿勢こそが、不透明な時代に組織を率いるリーダーが持つべき素養ではないでしょうか?

今号の独り言

「修羅場こそ 己を磨く 気づきの場」
「謙虚さに 気づく機会が 修羅場かな」

※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

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