
多くの企業が営業現場で生産性向上などの課題に直面する中、生成AIが解決の糸口になると期待されています。しかし「本当にAIが営業の役に立つのか」と懐疑的な声も少なく、導入しても定着化していないケースも見られます。
日立システムズが提供する「営業向けアシスタントAI」は、そんな疑問に答えるべく、自社の営業現場での試行錯誤を経て生まれました。今回は、その開発の裏側と営業プロセスをどう変革できるのかをひも解いていきます。
株式会社 日立システムズ
産業・流通情報サービス第二事業部
データソリューション本部 第一システム部 第二グループ
主任技師
2008年入社。SaaSサービスの開発に従事したあと、2017年よりデジタルマーケティングソリューションの導入をリーダーとして推進し、2022年からは営業DX事業全体をけん引。営業現場におけるAI活用の需要の高まりを受け、2023年より生成AI事業に着手。現在はこれまでのノウハウを生かし「営業向けアシスタントAI」のアプリケーション開発プロジェクトを取りまとめている。
株式会社 日立システムズ
産業・流通情報サービス第二事業部
データソリューション本部
第一システム部 第二グループ
2021年入社。2023年から旅費精算システムのカスタマイズ案件を担当。2023年11月より生成AI事業に参画。営業DXを推進する部署にて、営業活動への生成AI適用に関する技術検証を中心的に実施。2025年7月からは「営業向けアシスタントAI」のアプリケーション開発を担当。
現在の営業現場が直面している具体的な課題は何でしょうか?
佐々木:IT技術の進化や労働力不足といった社会的な潮流の中で、営業現場はさまざまな課題に直面しています。特に深刻なのが人手不足です。限られた人数で業務を回さなければならないため、ひとりひとりの業務量は増加しています。企業としては業績向上を掲げており、営業部門に対しても新しい業務への対応やさらなる成果が期待されている状況です。しかし、企業全体のリソースとしては商品やサービスの「モノづくり」に注力する必要があり、営業担当者の大幅な増員は見込めません。その結果、現場の負担は大きくなる一方です。
加えて、営業活動に付随する事務作業も増加傾向にあります。報告書の作成や顧客管理などに多くの時間が割かれ、本来の営業活動である「顧客との関係構築」や「提案活動」に十分な時間を割けないこと。これが今、多くの現場が抱えている大きな課題です。
そのような課題に対して、生成AIの活用が期待されていますが、「営業活動」においては、AI導入は一筋縄ではいかない印象があります。それはなぜでしょうか。
七野:そもそも営業職は、お客さまとのコミュニケーションがあってこその仕事です。しかし、コロナ禍を経てそのスタイルは大きく変わりました。以前のような対面での商談から、オンライン会議が中心になり、画面越しではコミュニケーションが取りづらいと感じる場面も増えています。それでも、商談を成約に導くためには顧客ごとのニーズや状況に応じた柔軟な対応や信頼関係の構築が不可欠です。このように営業スタイルは日々変わっていくので、変化に応じた対応として生成AIサービスの利用が期待されています。
一方で、実際の導入には大きく二つのハードルがあると感じています。
一つ目は「回答の不確実性」です。生成AIがアウトプットする内容は、必ずしも現場の文脈に即しているとは限りません。「ハルシネーション(事実とは異なる情報)」のリスクも含め、本当に実務で使える精度なのか導入に慎重になるお客さまが多いのが実情です。
二つ目は「セキュリティとデータの機密性」です。営業が扱うデータは、顧客情報が多いです。特にお客さまからヒアリングした課題は、その企業の弱みや機密情報に直結する可能性があります。こうしたセンシティブな情報をAIに入力することへの抵抗感や、「情報漏えいにつながらないか」というセキュリティ面での懸念が、導入への課題なっていると考えられます。
そのような中で今回「営業向けアシスタントAI」がリリースされました。このサービスの概要や特長を教えてください。
佐々木:「営業向けアシスタントAI」はフィールドセールスとインサイドセールス、両方の営業活動を支援する機能を提供する生成AIパッケージサービスです。特長としては、自社のWebサイト等の商品情報を活用して適切な提案を導き出す「商品ナビ機能」や、ブランドイメージを維持するためにガイドラインに基づいて文章をチェックする「コンテンツチェック機能」などを搭載しています。これらを活用することで、営業プロセスの改善を実現します。
このサービスの開発にあたっては、まず私たち日立システムズ自身の営業現場で課題を出し合い、実際に効果検証を行いました。そこで効果を実感した機能を実装しているため、お客さまの現場に導入いただいた際もお役に立てるのではないかと考えています。
導入にあたっての環境面やサポートについてはいかがでしょうか。
佐々木:生成AIの環境には、実績豊富なAzure OpenAI環境を利用しており、お客さま専用環境としてご提供します。
単なるツールの提供にとどまらず、PoC(概念実証)から本番稼働後の社内展開までサポートすることも可能です。お客さまが持っている課題などをヒアリングさせていただき、業務に沿うように個別カスタマイズのサポートもございます。
また、「使い方がわからず浸透しない」「想定した効果が出ない」といった、導入時によくある課題に対しても、私たちの知見を生かして伴走させていただきます。
「営業向けアシスタントAI」の各機能の具体的な内容と導入メリットを教えていただきたいです。まず「営業サポート機能」について教えてください。
七野:「営業サポート機能」では、日々の営業活動ですぐに使える実用的なプロンプト(指示文)を、あらかじめ標準装備として提供しています。具体的には、提案書や仕様書などのファイル(txt、pdf、pptxなど)を読み込ませて、要約や重要ポイントの抽出を行うプロンプトや、Web検索で取得した情報を利用した市場調査などがあります。
プロンプトはユーザー自身が登録することも可能で、それを他の営業担当者が使うこともできます。使えるようにすることで、個人のノウハウを組織全体で共有・活用できるようになります。
続いて「商品ナビ機能」について教えてください。
七野:お客さまからの反応の良さを特に感じるのが、この「商品ナビ機能」です。企業によっては、取り扱う商材が膨大で、情報がさまざまな部署や場所に分散していることがあります。そのため、営業担当者が自社の商材をすべて把握しきれないという悩みを抱えています。この課題をサポートできるのが本機能です。
その具体的な内容としては、チャット形式で商材を照会できる「商品チャット」と、特定の商材と営業目的を入力することで、トークスクリプトや想定問答集を自動生成できる「商品ナビ」があります。これらを活用することで、業務経験の浅い営業担当者でも、一定レベルの提案が可能になります。
「コンテンツチェック機能」についても教えてください。
佐々木:「コンテンツチェック機能」は、企業のブランド維持を目的として、Webサイトやカタログなどのコンテンツを生成AIが自動でチェックする機能です。多くの企業では、ブランドイメージを統一するために「ガイドライン」や「チェックリスト」を設けていますが、これらを人間が目視で一つひとつ確認する業務は、手間と時間がかかります。
この機能では、お客さまごとに異なるガイドラインを設定することが可能で、テキストだけでなく画像の表現までチェックできます。また、表記ゆれや誤りを指摘するだけでなく、生成AIが改善案を提案してくれる点も特長です。これらの機能により、チェック業務の工数削減が期待できます。
また、「コンテンツチェック機能」の活用シーンは今後広がっていくと期待しています。例えば分析レポートなどのドキュメント作成においても、この機能を通すことで品質を担保し、業務効率化に貢献できると考えています。
業種によって営業スタイルや営業現場の環境は違いますが、それに対し本サービスはどのように対応できるのでしょうか。
佐々木:現在実装している標準機能については、私たち自身が社内で課題を出し合い、効果を実感したものを製品化しています。そのため、どのようなお客さまであっても一定の効果は見込んでいただけるのではないかと考えています。
「営業向けアシスタントAI」では、いきなりツールを入れるのではなく、まずお客さまの業務課題に対して、生成AIがどのような効果を発揮できるかを検証するフェーズからスタートします。その結果に基づき、お客さまの現場に合わせてカスタマイズを行うことも可能です。今後は、お客さまからのさまざまなフィードバックを取り入れながら、幅広い営業スタイルに柔軟に対応できるサービスへと進化させていきたいと考えています。
「営業向けアシスタントAI」は、実際に日立システムズ社内でも活用されていますが、具体的な事例を教えていただけますか。
佐々木:1つ目は「問い合わせ窓口業務」です。HPのフォームなどから届くお客さまの問い合わせ内容を生成AIに入力することで、提案可能な商材や、その商材の営業部署を照会させることができます。これにより、業務効率化はもちろん、回答までのリードタイムを短縮し、新規顧客や引き合いの獲得機会を増やすことにつながります。
2つ目は「コンテンツ審査業務」です。先ほど紹介した機能ですが、これまでは人が手動で行っていました。チェック観点の一覧を用いて生成AIに網羅的に確認させることで、審査担当者の作業時間を短縮するだけでなく、ヒューマンエラーによる確認漏れも防止できています。
3つ目は「テレマーケティング」の準備です。営業担当が電話をかける際、事前にトークスクリプトを作成しますが、それには手間がかかります。そこで、スクリプト作成機能を活用することで、準備時間を効率化できています。
導入を検討する場合、どのようなフローが望ましいですか。
佐々木:まずは、「営業向けアシスタントAI」について理解してもらうためのハンズオンの受講をおすすめしています。
その後、業務の整理から伴走させていただき、「この業務なら生成AIが適用できる」というポイントを見極めます。そしてPoCを行い、本当に業務で使えるのか効果検証します。その後、本番導入へと進んでいきます。なお、標準機能だけで対応できない場合はカスタマイズも可能ですし、本番稼働後の他業務への展開やさらなる活用支援までサポートさせていただきます。
生成AIは、単に「ツールを導入して終わり」ではなかなか現場に定着しません。だからこそ、私たちはお客さまに寄り添い、伴走することを大切にしています。これが、日立システムズの強みだと考えています。
「営業向けアシスタントAI」の今後の展望を教えて下さい。
佐々木:「営業向けアシスタントAI」は営業プロセス全体をサポートするサービスをめざしています。実際に現在も社内でPoCを進めており、さまざまな場面で利用できる機能の展開を予定しています。
また、営業スタイルや悩みは、企業ごと、あるいは営業担当者一人ひとりによって異なります。導入いただいたお客さまからの「こんな機能が欲しい」というご要望も積極的に取り入れ、カスタマイズや機能拡張に反映させていく予定です。
最後に、営業現場のDX推進に一歩踏み出せずにいる企業や、AIの活用に悩んでいる担当者の方々へメッセージをお願いいたします。
佐々木:「モノづくり」が企業を支える土台だとするならば、営業職はまさに会社を支える「柱」です。だからこそ、営業の皆さんが事務作業に忙殺されるのではなく、本来やるべきことであるお客さまとのコミュニケーションに注力できる環境を作りたい。そのために私たちが良いツールを作り、それを活用していただくことで、営業現場を支えて行きたいと考えています。
営業が本来の業務に取り組んで活躍すれば、会社は成長し、さらに新しい挑戦ができるようになるはずです。日々の業務に追われる中で、変化への一歩を踏み出すには勇気がいりますが、ぜひ一度ご相談ください。
七野:このサービスは、構想から約2年をかけて開発しました。社内の営業部署と連携し、現場へのヒアリングと試行錯誤を繰り返しながら作り上げてきたので、私自身強い思い入れがあります。
世の中では生成AI活用の動きが活発ですが、実際には現場でうまく使いこなせていない企業も多いのではないでしょうか。私は、DXやAI活用とは、単に新しい技術を導入することではないと考えています。それをきっかけに「自分たちの働き方」そのものを見直し、進化させる絶好のチャンスだと捉えています。「営業活動に生成AIを使うのは難しそうだ」「自分たちの会社にはまだ早い」と躊躇されている方もいるかもしれませんが、まずは私たちにご相談ください。
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