
製造業は、人手不足、熟練技術者の高齢化、複雑化する市場ニーズへの対応など、大きな変革期に直面しています。そんな中、生産性向上と新たな価値創出の鍵として期待されているのが「生成AI」です。しかし、その導入には「何から始めればいいのか分からない」「期待どおりの効果が出ない」といった多くの課題が横たわっています。
こうした製造現場特有の悩みに応えるべく「製造業向けアシスタントAI」がスタートしました。本企画では、サービスが誕生した背景や強み、そして既存の生成AIサービスと一線を画すポイントまで、深く掘り下げていきます。
株式会社 日立システムズ
産業・流通デジタライゼーション事業部
第一デジタライゼーション本部 主任技師
2010年4月日立情報システムズ(現・日立システムズ)に入社。製造業の顧客を中心としたインフラ領域の導入およびフルアウトソーシング事業を経験。2022年11月にChatGPTが登場したことで大きな変革が起こると考え当社内でいち早く、生成AI事業を推進。2024年7月より、日立Grのノウハウを活用した生成AIソリューションの必要性を考え、若手中心の組織(約40名)のリーダーとして主導。
株式会社 日立システムズ
産業・流通デジタライゼーション事業部
第一デジタライゼーション本部 担当
2022年4月日立システムズに入社。その後、製造業の顧客へクラウドインフラ基盤の構築を担当。2023年5月生成AI事業に参画し、技術検証を実施。2024年7月より、生成AIアプリケーションの開発リーダーを務める。2025年7月、日立システムズとしては二人目の日立グループの生成AIエキスパート「AIアンバサダー」に就任。
「製造業向けアシスタントAI」がスタートした背景には、どのような課題があったのでしょうか?
吹本:今後、日本は深刻な人手不足に直面します。日本の中核産業である製造業がこの課題を乗り越えるためには、生成AIの活用が不可欠です。現場では「人が減っていくのに、売上は上げなければならない」というジレンマもあり、早急にこの問題に対応しなければなりません。
そこで、日立グループが培ってきたOT(Operational Technology)に関するノウハウと日立で実際に活用されている生成AIの仕組みを、中小企業にも展開できないかと考えたのが、このプロジェクトの原点です。
架谷:製造業が常に追い求めているのは、原価低減と付加価値の創出です。しかし、人手不足が深刻化する中では生成AIを活用しなければ、これらの目標を達成するのは難しいでしょう。一方で、現場のワーカーは新しいツールに抵抗を感じることも少なくありません。そのため、せっかく導入しても定着しないという課題があります。私たちはこの点を意識し、ユースケースごとに使いやすいUIを提供することや、導入後の伴走型支援が不可欠だと考えました。この点も今回のサービスのポイントにつながってきます。
「製造業向けアシスタントAI」のサービスコンセプトを教えてください。
架谷:私たちが掲げるコンセプトは、「いつもそばに、頼れる製造業向けアシスタント」です。このサービスは生成AIを活用して、日本の製造業を元気にしたいという強い思いから始まりました。ものづくりは日本の強みであり世界に誇るべき産業です。しかし、深刻な人手不足によってその活力が失われつつあります。そこで私たちは、現場で働くフロントラインワーカーを支え続けるため、生成AIに不慣れな方でも導入しやすいサービス構成や内容をめざしました。
「製造業向けアシスタントAI」のサービス内容について概要を教えて下さい。
吹本:このサービスは、基本の生成AIツールと導入・高度化を支援するサービス群の2つで構成されています。
まず、1つ目のツールは、チャット機能に加え、ユースケースに特化した機能を多数搭載している点が特長です。これにより、導入後すぐに現場で活用をスタートできます。また、安全にご利用いただくためのセキュリティ機能も標準搭載しています。
2つ目のサービス群は、お客さまの導入から活用、そして高度化までを伴走型で支援するためのものです。生成AIのソリューションは汎用性が高いがゆえに個別見積もりが多く、お客さまによって選ぶのが難しかったり導入に踏み切りにくかったりするという課題がありました。そこで、私たちは3つのメニューに分け、お客さまが選びやすい仕様にしました。
まず、「スターターパック」ではお客さまにツールを気軽に試していただき、生成AIツールの特長を掴んでいただくことができます。また、自社業務への適合性を調査し効果を最大化させていく「アセスメントパック」や、自社環境に本サービスを構築しカスタマイズすることで、さらなる高度化をする「アドバンスパック」を用意しています。
特に「アドバンスパック」では、お客さまの業務に合わせてより細かくカスタマイズできるのがポイントです。他のベンダーでは難しい、特定の業務に特化した開発や既存の他システムとの連携なども柔軟に対応可能です。
「製造業向けアシスタントAI」の強みを、より具体的に教えていただけますか。
吹本:強みは大きく5つ挙げることができます。
1.日立グループで培われた豊富なユースケース
日立グループ内で実際に活用されている製造業のノウハウを凝縮したユースケースを多数詰め込んでいます。これにより現場のさまざまな課題に柔軟に対応でき、具体的な解決策を提供できます。また、すでに日立内での実績があることから、その導入によってどのようなROI(投資対効果)が見込めるのかをある程度提示できる点も強みです。
私たち自身社内で生成AIの徹底活用を推進しており、このサービスを共通のプラットフォームとして活用することで、さらなる進化をめざしています。
2.間接業務から全社的な業務効率化を支援
製造業特有の業務だけでなく、議事録作成、文章校正、メール作成といった間接業務にも対応しています。特定の部門だけでなく、全社的に活用できるシステムとして設計されているため、幅広い業務の効率化を実現します。これらの機能は、日々ユーザーの声を取り入れて追加・更新しています。
3.強固なセキュリティ機能
安心して生成AIを利用できるよう、強固なセキュリティ機能を標準で提供しています。個人情報のような機密性の高いワードを自動で検知し、安全に利用できる仕組みにしています。管理者側で特定のキーワードを禁止設定することも可能です。また、SaaSではなくお客さまのAzure環境内に構築するため、外部への情報漏えいリスクを回避します。そしてお客さまのデータが生成AIの学習に利用されることはありません。
4.使いやすいUIで操作が簡単
説明書を読まなくても直感的に操作できるシステムを意識しました。年齢、性別、国籍を問わず、誰もがスムーズに使えるようなツールにしています。複雑な指示文(プロンプト)を入力する必要はないため、ITやAIに不慣れな方でもすぐに使いこなせるシンプルな設計です。
5.製造業と生成AIに精通した日立システムズによる伴走型支援
製造業の現場は多岐にわたるため、汎用的なツールでは業務に深く適用させることは困難です。私たちは生成AIと製造業の双方に精通しており、お客さまに寄り添ってチューニングをサポートします。どのシステムと連携させるか、どう業務に組み込むかといった詳細な調整を支援することで、定着率を高め、より高い効果を生み出すシステムの導入を実現します。
また、生成AIの技術は進化が非常に速く、企業が常に最新の情報を追い続けるのは難しいでしょう。だからこそ日立システムズがお客さまのパートナーとなり、進化する技術を取り入れながら、お客さまの業務に適した形で生成AIを使いこなしていただけるよう伴走いたします。
標準機能もさまざま兼ね揃えていますが、特に紹介したいものなどはありますか?
架谷:はい、文書問い合わせ機能です。多くのサービスが社内文書の検索機能を備えていますが、本サービスではさらに一歩進んだ機能を提供します。
回答の根拠となる引用元の文書をプレビューで明示するため、情報の信頼性を確認できます。また、過去の優れた回答を蓄積できるQ&A機能や辞書機能も用意しており、回答の精度を常に高めています。さらに、今後は、お客さまの既存システムとの連携も視野に入れ、常にアップデートを続けていきます。
どのような導入フローが望ましいですか?
吹本:まずは「スターターパック」で、気軽に本サービスを試していただくことをおすすめします。このパックは、約20万円という比較的低価格な費用で、お客さまのデータを使いながらクイックに生成AIを導入することができます。導入の判断材料を得たい企業や、他社のツールと比較したい企業、特定のユースケースのみを試したい企業など、さまざまなニーズに対応できます。
そのうえで「アセスメントパック」や「アドバンスパック」を通じて、より深く業務に合わせたカスタマイズや活用を進めていただくのが理想的です。お客さまに本サービスを継続的にご利用いただくことで、将来的には多くのユースケースを蓄積し、最大の効果を実感していただけるよう伴走してまいりたいと考えています。
架谷:実際にツールを導入していただくと、「議事録作成機能の出力を自社のExcelフォーマットに合わせたい」といった具体的なご要望が出てくるかと思います。こうしたお客さまからのフィードバックを基にカスタマイズのご提案を行うことで、より深く業務に寄り添い、お客さまの状況に適したシステムへと進化させていきます。
最後に、「製造業向けアシスタントAI」に対する担当者としての思いや、将来のビジョンについてお聞かせいただけますでしょうか。
吹本:このサービスは、A4の紙に手書きで描いた構想から始まりました。そこから多くの人々と連携し、情熱を持って推進してようやく形になりました。お客さまのお役に立てるものと強く感じていますし、将来的にはさまざまなシステムと連携してより大規模なソリューションへと発展させていく計画もあります。
また、最初にお伝えしたように、このサービスを通じて日本の製造業が直面する人手不足を解消し、この業界を元気にしていきたいです。今後は、他の産業への展開も視野に入れ、日立システムズが中心となって社会全体をより良くしていくことをめざします。
架谷:世の中には「この会社といえば、このシステム」という代名詞のようなサービスが存在します。私の目標は、この「製造業向けアシスタントAI」を日立システムズの生成AIサービスの代表格になるまで成長させていくことです。
単にサービスを有名にしたいわけではなく、製造業の現場で生成AIの活用が当たり前になる未来を実現するための架け橋となりたい、という強い思いもあります。
このサービスは、私たちのチームだけでなく、営業担当者や他の事業部の開発者など、多くの人々の知識や技術、そして情熱が詰まっています。たくさんの方に使っていただき、日本の製造業に貢献していきたいです。
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