パッケージ型生産管理「HICORE-Products Ex」
2013年4月、「TENSUITE(旧HICORE-Products)」は、日立 製造・流通業向け基幹業務ソリューション「FutureStage」に
統合しました。
※本事例に記載の商品情報は初掲載時のものです。
日本伸管株式会社 代表取締役社長 細沼直泰氏(右)、製造部生産管理課主任 本多孝征氏(左)
日本伸管が日立システムズのパッケージ型生産管理システム「HICORE-ProductsEX」を導入して約2年。導入前に比べ、「リードタイムを5~10日から4~7日に短縮」、「製品在庫を約3分の1に削減」などの成果をあげているといいます。
なぜ、日立システムズを選んだのか、「HICORE-ProductsEX」がどのように使われているのか、同社の導入事例を紹介します。
主力商品のコピー機・プリンターなどの
感光ドラム部品
-日本伸管について紹介していただけますか。
アルミ引抜管・棒、アルミ部品の製造、硬質アルマイト処理を行っている会社です。例えば、材料としてアルミパイプを調達し、寸法や真円度(*)、曲がり具合といった精度を高める加工を施して提供しています。
当社の強みは、「引抜き加工」というアルミ管に熱を加えず、金型に通して引抜くアルミ加工技術と、アルミ材料の調達、加工、表面処理までの生産全工程を一貫体制で請け負うことができる点で、低価格と柔軟な納期対応がウリです。
主な製品としては、レーザプリンタや複写機などの中にある感光ドラム部品、カメラのレンズ周りのアルミ管です。今年4月には、コピー機に使われる「自動複写機用V型溝付きマグネットロール」が、第22回「中小企業優秀新技術・新製品賞」で優秀賞を受賞しました。
創業は1967年で、現在の従業員数は約140人です。本社のある埼玉県の新座市と、福島県の西白河の2か所に工場があります。
-「HICORE-ProductsEX」の導入を担当された本多さんは、どのような業務をされているのか教えていただけますか。
営業がとってきた受注に対し、アルミ素材の購買から、製造現場との調整、製造指示、配車手配、さらに、営業支援業務を行っています。また、そこから得られる情報をもとに経営層や管理職への情報提供も行っています。
-2005年、生産管理システムの切り替えを考え始めたころの状況を教えてください。
当時、当社ではISO対応や、お客さまからの要望が増えていた納品時情報の提供など、以前にはなかった業務が増えてきていました。このため、社内的には管理業務の強化と効率化、タイムリーな情報の提供が求められていたのですが、そのころのシステムでは対応しきれなくなっていました。
一番の問題はシステム上の在庫データと現場の在庫が合わないという点でした。オーダメイドで作った旧システムは、受注から製造指示にタイムラグがあったので、システムで管理されない例外処理も多くなり、在庫情報が当てにならなくなっていました。
このため、コンピュータ上の在庫情報で不安のあるものについては、現場に行って数を確認し、それから製造指示を出しており、非常に手間がかかっていました。また、在庫が明確ではなかったために、お客さまからの急な注文をお断りしたものの、実は在庫があった、といったような機会損失も起こっていました。
「製造業に強い」と言われるパッケ
ージ製品は、組立加工業を前提に
した製品が圧倒的に多かったです。
-候補のリストアップはどのように行ったのですか?
まずはパッケージ製品をいろいろ見てみました。その中から6製品ほどピックアップして、具体的な検討作業に入ったのですが、そのときに感じたのは、「製造業に強い」と言われるパッケージ製品は、組立加工業を前提にした製品が圧倒的に多いということでした。組立加工業であれば、「パッケージ製品に合わせる」ということも可能だと思いますが、材料加工の工程がメインの当社が組立加工業向けのパッケージ製品を使おうとすると、どうしても組立の工程を入力するという運用面でのムダが出てきます。
-御社の業務は特殊な仕様が多いのですか?
当社の場合、例えば受注はメートル単位(長さ)で、見積・請求時にはキログラム単位(重さ)の単価を使いますし、同じ製品でも条件によって値段が違います。そういう商習慣に対応していないと、「受注入力が合わない」、「製品マスタ登録ができない」といったことも起こります。
そうは言っても、今申し上げたような特殊な仕様は業務全体の1割で、残りの9割は一般的な仕様なので、可能な限りはパッケージ製品に合わせるつもりでした。ただ、受注入力や製品マスタ登録といった部分は、当社の核心です。ここを変えるということはこれまでのビジネスのやり方を変える、あるいはムダを包含し続ける、ということになってしまいます。
他の仕様はパッケージ製品に合わせるとしても、この核心の部分だけは、情報の入力や取り出しやすさを重視して、100%こちらの意向に合わせていただきたいと考えていました。スーツでいえば、袖が多少長いくらいは気にしないが、ズボンのウエストが大きすぎて合わないのでは“走れない”ので困る、というところですね。
-なるほど。ところで、「受注はメートル単位(長さ)で、見積・請求時にはキログラム単位(重さ)の単価を使う」とは、どういうことなのでしょうか?
その点は、システムエンジニアの方にもなかなか理解していただけなかった部分です。我々の業界では、注文はメートル単位で受け、それを加工して売るときには、加工後の重さ(キロいくら)で売ります。
アルミパイプは加工の具合によって長さが変わるので、例えば、アルミパイプ100メートルの注文があった場合、加工後にそれが101メートルになっても、99メートルになっても、その長さのままキロいくらで計算して引き取ってもらいます。このため、同じメートルを注文しても、納品時の長さも値段も違ってくるのです。
肉の量り売りみたいなものですね。はかりに載せた肉は、少々量が前後してもその量をグラム換算して料金を出しているのと同じ感じです。
-ピックアップした6社を、どのように絞り込んでいったのですか?
6社の製品を比較した中で、候補としてダントツの1位だったのはA社でした。理由は、導入実績が豊富な上に、データの可視化に非常に優れていたからです。当時、私が作業していた中で一番大変だったのはデータの可視化でした。PCの中にデータはあっても、必要な形にするのに、とても時間がかかっていたのです。A社は、この作業を、大幅に軽減できそうな点が魅力でした。
A社とは導入に向けて話を詰めていったのですが、1つ大きな問題が生じていました。A社が先述の組立加工業向けをベースにしていて、受注入力処理で、組立の工程を必ず入力しなければならず、カスタマイズで機能を減らすことはできないとのことでした。
可視化という点では非常に魅力的でしたが、運用面に問題が残るという点で割り切れず、かといって代案もなく、思案していたところ、日立システムズから連絡がありました。
<社長談>実は数年前、私が社長になる以前ですが、私自身で生産管理システムを探そうとしていた時期がありました。関連の展示会で日立システムズを知り、その後も何度かお電話をいただいていました。生産管理システムの件は本多に任せることにした後、熱心なお電話をいただいたので、担当者として本多を紹介したのです。
-日立システムズのパッケージ型生産管理システム「HICORE-ProductsEX」はいかがでしたか?
日立システムズの製品は、カスタマイズの柔軟性に優れていた点に魅力を感じました。一方で、A社の可視化機能も捨てがたかったので、A社、日立システムズ、そして従来から使っているB社(オーダメイド旧システムの改修)の3社に絞って、再度検討することにしました。それぞれのメリット、デメリットにつきましては下表で説明させていただきます。
■最終選考に残った3製品のメリット、デメリット
企業名 | メリット | デメリット |
---|---|---|
A社 (パッケージ製品) |
・データの可視化に優れていて、標準で必要な各種帳票がそろっている ・実績豊富 |
・自社の運用に合わせた機能を減らすカスタマイズができない |
日立システムズ (HICORE-ProductsEX) |
・自社の運用に合わせた機能を減らすカスタマイズができる ・汎用検索機能でデータのハンドリングがしやすい |
・3社の中で一番コストがかかる |
B社 (旧システム) |
・プログラムの追加、改修で要求仕様に対応できる ・マスタ登録などの移行作業が簡単 →低コストで短期間導入が可能 |
・自社で全てのシステム機能要件を考えなければならない。 |
-最終選考に残った3社をどのように絞り込んでいかれたのですか?
最初に除外したのは旧システムでした。旧システムは、従来プログラムに機能追加、改修するという形で対応できるため、導入コストや期間の面で最もメリットがありました。ただ、オーダメイドであったため、機能は要望したものしか入りません。将来性を踏まえた設計にしたいと考えていたのですが、それを当社で考えて要望を出すとなると、システム専任者のいない当社では対応が難しいと考えました。
-残るはA社と日立システムズですが、最終的に、日立システムズを選んだ理由は何だったのですか?
日立システムズを選んだ一番の理由は、A社で「できない」と言われていた当社の核心の部分のカスタマイズもできるという点でした。6社から絞り込む作業をしていた際には「これだ」と思っていたのですが、結局A社はあきらめました。
-日立システムズは、加工工程向けだったから、核心の部分のカスタマイズも可能だったということでしょうか?
加工工程向け、組立加工工程向けというよりは、もともとカスタマイズに対して許容範囲の広い設計になっているようです。日立システムズは製造業向けシステムの構築経験が長いそうで、そのためなのか、製造現場や生産管理の多様性に配慮された設計になっていると思いました。
絶対あってはならないのは、新たに生産管理システムを導入しても、結局従来どおりエクセルやアクセスを使っていたり、製造現場に負荷をかける状況だと考えていました。日立システムズは、パッケージ型でも機能追加だけでなく、機能を減らすという、かゆいところまで手が届くカスタマイズ対応をしてくれました。
-では、A社が御社のカスタマイズ要望に対応できていたら、A社を選んでいた可能性が高かったわけですね?
そうですね。ただ、日立システムズを選んだ理由はもう1つあるのです。概算見積もりの作成を依頼したとき「概算見積もりを作成する前に工場を見学させてほしい」と言ってこられたのは日立システムズだけだった、ということです。
私も、もともと現場にいたのですが、製造の現場にいる人は、「現場を見ないで指示を出すな」という気持ちを持っています。「工場を見学させてほしい」と言われて、机上の論理ではなく、会社の核心や現場を理解しようとしている姿勢が感じられて、よい印象を受けました。
実際に工場を見学していただいた後、しっかりとした要件定義書をまとめていただけたことも、よかったと思います。
-概算見積もりを作成する前に日立システムズが要件定義書をまとめたのですか?
はい。工場を見学し、要件定義書をまとめた上で概算見積もりを作成していただきました。正直、私はシステムベンダをあまり信じていないところがありました。カスタマイズ対応をうたっていても「カスタマイズはしたくない」という感じのところがほとんどでしたので、「カスタマイズができると言っても、本当にやってくれるのか?」という気持ちがあったのです。
でもこういう資料を見積もりする前に作成していただいたおかげで、いろいろな面で非常に安心感がありました。こちらが言って忘れていたことも確認できますし、書いてあることは確実にやっていただけます。行き違いがあった場合も、記録と共に「依頼は出しています」と説明できたので、気が楽でした。
システム会社とのトラブルでよく聞く、概算見積もりと実際の費用も大きくぶれないですみました。
正確な情報が見える化されて、効果を
感じています。
-2008年の本稼働から2年が経ちますが、どのような効果を実感されていますか?
リアルタイムで発生した情報が入力されるようになりましたので、正確な情報が見える化されて、効果を感じています。それぞれご説明します。
「見える化によるリードタイムの短縮」
材料在庫や製造現場の作業負荷が見える化されたことで、製造指示を出すまでの無駄が減り、例外処理やバッチ処理もなくなってきたため、全体のリードタイムは、5~10日から4~7日に短縮しています。
また、当社では割り込みや特急などの注文も多いのですが、以前はシステムがそれに追いつかず、現場で行き違いや混乱が発生していました。今はそうした例外処理にもシステムが追いついているため、混乱なく、安心して対応できるようになりました。当社は納期をウリにしているだけに、この点は大きなポイントです。
「見える化による在庫削減」
在庫データと現場の在庫が合うようになったことで、余剰在庫を持つ必要が少なくなり、製品在庫は約3分の1に削減しています。材料在庫も生産計画に基づいた手配ができるようになりました。
「見える化による予測精度向上」
「HICORE-ProductsEX」の導入効果のうち、最も評価できるのはこの点です。特に売上計上見込みなどの予測が正確になった点や、作業負荷量から残業見込みを把握できる点を評価しています。さらに、歩留まりと採算性から作成した品質改善対策のプライオリティリストは、当社の品質会議で重宝しています。
-一番の問題だと話しておられた在庫管理に限らず、さまざまな場面で、効率化が進んだという感じですね。
実感ベースですが、同じ作業での作業効率は、確実に上がっています。また、効率化により生まれた余力は、以前よりレベルの高い新しい仕事、本来やりたかったけれどできなかった仕事につながっていると感じています。
本多がそのよい例だと思います。旧システム時代は、データに不安があるために、現場に在庫確認に行ったり、生産管理のもろもろの調整や、各部署からの問い合わせなどに追われ、資料作成などを依頼する状況ではありませんでした。今では、そういった作業が効率化できた分を、経営に必要なさまざまな資料作りにあて、その資料は、実際の経営判断に役立っています。
-先ほどお話のあった、品質改善対策のプライオリティリストなども、そうした資料の1つなのですね。
改善対策プライオリティリストを出すことで、今まではわからなかった、採算に問題のある製品や顧客を、特定できるようになりました。そういった製品から対策していけるので、改善効果が出しやすくなりました。
また、経営戦略上の判断材料としての新たな武器となりました。
情報はリアルタイムに更新されているので、次の品質会議のときには改善後の結果を見ることができますし、改善後の状況がきちんと持続できているかどうかもわかります。意識付けだけで、一時的に状況が改善されることもありますから、効果が継続しているかどうかがわかるという意味でも、品質会議が確実に成果を生むようになりました。
-日立システムズのアフターフォロー面はいかがですか?
ソースコードまで理解したシステムエンジニアの方とじかに連絡が取れる点がよいですね。旧システムを使っていたころは営業担当者を通してやり取りしていたのですが、その差は大きいです。私もちょっとしたプログラムでしたら書くことはできるので、システムエンジニアの方と話すほうが、細かい話やニュアンスなども伝わりやすく、話が早く済みます。
-最後になりましたが、日立システムズに対し、今後期待されることはありますか?
いつになるのかはまだわからないのですが、新座工場と福島工場との連携を、いずれやりたいと考えています。福島工場もまた独特の文化を持っており、生産管理の部分では2つのシステムを使っています。そこを踏まえてどうするかといった点など、いろいろとお力をお借りできればと思います。
ありがとうございました。
担当者から一言 |
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※ 取材日時 2010年6月
日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。