引越し時の[転入・転出・転居]手続きのデジタル化をスタート
自治体DXの推進により、“書かない 待たない 迷わない” 窓口をめざす
兵庫県三木市様(以下、三木市様)は、引越しに伴う各種手続きのデジタル化をスタートしました。2021年10月から転入手続き、2023年10月から転出・転居手続きのデジタル化を開始しています。
従来の手続きでは、住民異動届を手書きで記入し、本人確認書類や転出証明書などの資料と合わせて受付に提出する必要がありましたが、デジタル化により、住民は庁舎内に設置されたタッチパネル端末などを使って本人確認書類や転出証明証などを登録し、簡単なアンケートに答えると、書類に手書きすることなく手続きが行えます。申請情報は住民記録システムに連携され、手続きに関連する医療保険課や子育て支援課などの11課にも即座に共有されるため、住民は関係各課でも同じ情報を提供する必要がなく、申請を進めることができます。
三木市役所の記載台に設置されたタッチパネル端末とスキャナー。
ここで手続きに必要な情報を登録します。
転入・転出・転居手続きのデジタル化により、入力処理の迅速化、他課への情報共有の効率化、手続き案内の漏れ防止、ペーパーレス化の推進など、さまざまな業務効率化が実現しています。「書かない 待たない 迷わない窓口」の実現に向けて、三木市様はこれからも自治体DXを推進していきます。
自治体職員の皆さまの声を反映したシステムをめざし、三木市様との共同研究を実施
三木市様の窓口業務改革を進めているのは、日立システムズ「ADWORLD デジタル窓口システム」です。本システムは、三木市様と日立システムズの共同研究により開発されました。日立システムズは、三木市様において住民異動に関連する業務を担当する職員さまと現行の業務フローや窓口運用について協議・検討し、業務改革を実現するための機能をシステムに実装しました。
本システムは自治体DXの実現を後押しするとともに、国が推進する「転出入ワンストップサービス」にも対応し、さらに「システム標準化」にも随時対応していくことで、住民の異動手続きの効率化を推進します。
書かない・待たない・迷わない3つの住民メリットをめざす
「何度も書かされる」「待たされる」「次にどこに行けばよいか分からない」など、異動手続きに関する住民の不満解消をめざして開発されました。住民サービスの向上に貢献します。
「非接触」「密の回避」を念頭においた業務フロー設計
「デジタルファースト」「ワンスオンリー」「コネクテッドワンストップ」の設計思想に基づき、非接触や密の回避を実現する、新しい窓口業務フローをシステムに実装しました。
属人性をなくすため業務を徹底的にシステム化
綿密な業務ヒアリングを行い、住民異動に関連する手続きや処理を徹底的にシステム化しました。職員の経験やスキルに依存しない、統一的なご案内が可能になります。
職員のスキル・経験に依存しない窓口対応が実現
タッチパネルでの事前アンケートのおかげで聞き忘れがなくなり、手続きに必要な情報を確実に把握できるようになりました。対面では聞きづらいセンシティブな情報も、アンケートなら漏らさず聞き取りができます。職員のスキルや経験に依存しないご案内ができるようになりました。
手続きにかかる時間が従来より約30%短縮しました
日本人3人世帯(世帯主・妻・子15歳)の特例転入の場合、手続き※にかかる平均時間が従来より約30%短縮しました。タッチパネル申請やOCRなどのデジタル技術を最大限に活用することで以前よりも「待たない窓口」が実現しています。
※市民課および関係各課の手続き(異動手続きおよび住民票交付・印鑑登録・マイナンバーカード関係・学齢簿・児童手当など)にかかる所要時間
市民の皆さまへ情報発信のきっかけができました
タッチパネルでの事前アンケートに、市が独自に取り組む施策の項目を追加したことで、新しく市民になるすべての方に施策をPRすることができました。その他にも、本人通知制度についての案内もアンケートを通じて広く周知できるようになり、住民サービスの向上につながっていると感じます。
書類への手書きが不要になり喜ばれています
タブレット端末を使った先進的な手続き方法に驚かれるとともに、異動届や申請書に手書きする必要がなくなったことで市民の方には大変喜ばれています。職員にとっても、各課の窓口で本人確認書類の提示や住所・氏名の記載を何度もお願いする必要がなく、デジタル化による効果を実感しています。
マイナンバーカードで手続きを簡潔に
マイナンバーカード持参による特例転入の場合、転出元からの特例転入情報を住民情報システムを経由してCS端末より自動取得します。その情報をもとに異動届を作成するため、スムーズな手続きが実現します。
システム標準化に伴うQRコード活用に対応
転出証明書持参による通常転入の場合、転出証明書に印字のQRコードをもとに、異動届の記載に必要な情報を取得します。(QRコードのない転出証明書については、OCR処理により入力の簡素化を図ります)
6か国語対応の申請アプリでグローバル化に対応
住民が利用する申請アプリは英語、中国語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語に対応。グローバル化により多様化した住民ニーズに対応します。
市民課 申請ブース
住民は申請ブースで異動手続きを行います。タッチパネルで申請内容を入力し、スキャナーで本人確認書類や関連資料などを読み取ります。情報入力が完了した後、引き続きアンケートにタッチパネルで回答します。
市民課 執務室
住民からの申請を市民課職員がシステムで確認します。申請内容の確認や、本人確認書類の画像データとOCR読み取りテキストの突合せチェックなどを行います。申請内容を確認し、本受付の準備を進めます。
市民課 受付カウンター
住民と対面し、本受付を実施します。受付時に、職員はタブレット端末で情報を確認し、ヒアリング内容を記録します。手続きが完了すると、異動届の発行・手渡しを行い、住民は異動届を確認してサインをします。
関連手続きのため他課へ
市民課以外での必要手続きがある住民にはシステムから案内表や申請書を出力します。住民は案内表の指示に従い、他課窓口で手続きを行います。関連する他課にはシステムを経由して当該住民の情報が共有されており、住民はあらためて本人確認書類を提示する必要がありません。
住民が申請をする際には、今のところ職員が近くに立ってご案内をするようにしていますが、タッチパネルでの操作なので、年配の方や機械の操作に不慣れな方も利用できています。私たち市民課職員はシステム稼働前に1カ月ほどのテスト期間を設け、業務時間の合間に操作方法を確認するなどの準備を行いました。
システム導入による手続きの時短効果については、市民課における手続き時間だけで考えるのではなく、転入・転出などに伴い必要となる関係各課を含んだすべての手続きが終わり、住民が庁内に滞在する時間をいかに減らせるかだと思っており、その効果は出ていると思います。
住民の方への事前アンケートにより必要な情報が確実に把握できるので、聞き忘れやご案内する手続き案内に漏れがなくなったことも大きなメリットです。属人性がなくなり、職員の誰が対応しても同じ応対が担保できることは住民サービスの向上にも大きなプラスと言えます。
窓口業務の煩雑な手続きには住民の方が不満を抱きやすく、職員にとっても事務処理の負担が大きいことが問題でした。この問題を自治体DXで解決できないかと検討していた中で、日立システムズから今回の共同研究の提案がありました。
ゼロベースからの開始でしたが、すでにある仕組みや処理に捉われず、窓口業務のあるべき姿を徹底的に考えたことで、住民サービスの向上と職員の業務効率化を同時に実現するシステムをめざせたと思います。他の自治体からの問い合わせや視察依頼も数多くあり、「窓口業務改革」への期待、関心の高さを実感しています。
この共同研究をきっかけに、庁内のDX化への関心が高まり、今後さらに自治体DXへ向けた取り組みを進めていきたいと考えています。
三木市
三木市は、古い歴史と自然に恵まれ、「金物のまち」として全国に誇れる伝統文化を保有しています。また、西日本一のゴルフ場数を誇るほか、山田錦(酒米)の主生産地としてもさらに発展が期待されています。
三木市様との共同研究を通し、窓口業務でのきめ細やかなご対応や正確に事務を行っていく上での留意点など、今までなかった視点を獲得することができ、非常に有益なノウハウと経験を得ることができました。これもひとえに本共同研究にご賛同いただきました三木市様の多大なるご協力によるものであり、本当にありがとうございました。
本共同研究の成果を十分に活用し、三木市様における自治体DX、窓口業務改革へ尽力させていただきたいと考えております。また、ここで培った経験をもとに、今後も新しい取り組みにチャレンジするとともに、国の施策にもタイムリーに対応し、多くの自治体様へ向けて、自治体DXのご支援を続けていきます。
今回の取材にご協力いただいたお客さま
ご協力ありがとうございました。
*本内容は2024年3月取材時点の情報です。
本事例に記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。
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