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お客さまの業務の深い理解をベースに、
デジタルトランスフォーメーション(DX)で
社会に貢献していく

株式会社日立システムズ
取締役 副社長執行役員
CTrO
デジタライゼーション推進統括本部長

宇川 祐行

副社長執行役員 宇川 祐行

昨今、企業を取り巻く環境の急速な変化やコロナ禍によるニーズも加わり、日立システムズのデジタライゼーションサービスが注目されている。その背景にあるのが、デジタル化による課題解決の実績と、お客さまの業務への深い理解、DXのアプローチ手法に長けた人財の存在だ。多様な分野でDXを展開する日立システムズの強みを、宇川祐行副社長に聞いた。

お客さまの事業への深い理解が、
デジタライゼーションビジネスの源泉

――コロナ禍でデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速するなか、日立システムズではどのような取り組みをされてきたのでしょうか。

宇川)コロナ禍は、私たちの生活、働き方、人々の価値観までを大きく変える変節点となりました。日立システムズが注力してきたデジタライゼーション事業も、そうした変化に応えるかたちで急拡大しています。テレワークのための初動的な取り組みにはじまり、お客さまのリモートアクセスの環境整備、さらには出退勤管理や現場作業支援、部品在庫管理といったさまざまな領域においてお客さまのデジタル導入の支援を行ってきました。

日立システムズでは、コロナ禍以前の2018年に本格的にデジタライゼーション推進統括本部を設置し、主に中堅企業・中小企業のお客さまを対象に、これまでアナログが主流だった現場の業務のデジタル化に取り組んできた経緯があります。例えば製造業の受注出荷であれば、在庫引当、生産計画、配送計画、出荷、入金決済といった一連のバリューチェーンがありますが、これらの各プロセスをきめ細かく把握し、可視化して改善していく、すなわちそれぞれの現場における部分最適化を通じて、お客さまの経営全体のDXに寄与するというのが、日立システムズがご提案するデジタライゼーションです。つまり、私たちが定義するデジタライゼーションとは、DXへのファーストステップであり、部分最適から全体最適へとDXを深化させていくために欠かせないプロセスになります。

さらに、それぞれのデジタライゼーションの取り組みを、日立製作所が掲げるデータの高度活用により変革を実現し、企業価値を向上していくためのDX戦略事業「Lumada(ルマーダ)」と連携することで、バリューチェーン全体のDXへつなげていくことも可能です。

デジタライゼーション図

こうした地道な取り組みとパンデミックによるDX化の潮流も相まって、2018年から現在までの短期間に、日立システムズのデジタライゼーション事業は急成長することになりました。

――デジタライゼーションにおいて、日立システムズがお客さまから選ばれている理由はどこにあるのでしょうか。

宇川)私どもでは「サービスインフラ」と呼んでいますが、コンタクトセンターをはじめ、データセンター、お客さまのシステムやネットワークのセキュリティを24時間365日、運用・監視するセキュリティ基盤、さらには全国約300拠点からエンジニアがすぐにお客さまのもとへ駆けつけることのできるサービス網を持つということが非常に大きいアドバンテージだと思います。つまり、日立システムズが多様な業務システムの構築だけでなく、運用・保守まで含めた物理的な基盤と、それぞれの専門に通じた人財を擁していることが、お客さまの信頼や安心感につながっているのではないでしょうか。

また、運用・保守に関しては、長きにわたり、公共、社会、金融、産業(医療を含む)などの幅広い領域で、現場の業務代行、すなわちBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を手がけてきた実績があります。こうした取り組みを通じて、お客さまの業務の理解を深め、いわゆる「ドメインナレッジ」(業種、業界ごとの専門的な知識)を培ってきたことにより、デジタル化に際しても、さまざまな改善策を継続的にご提案することができるのです。

いまや日立システムズでは、自治体の業務をはじめ、国民健康保険、生産管理、銀行為替、工事積算といった、多様なドメインナレッジを蓄積し、これらをサービスとして使いやすいかたちにプラットフォーム化してお客さまに提供することが可能になっています。

副社長執行役員 宇川 祐行

効果が一目でわかるショーケース*やシナリオの活用で、
スピーディーなデジタル化を実現

*
お客さまの現場業務プロセスをデジタル化した「デジタライゼーション」の事例集。
お客さまのお困りごとと解決内容を統一フォーマットで表現し、お客さまとのコミュニケーションツールとして活用。

――多くの企業がDXの必要性を感じていると思いますが、何から着手したらいいのか悩まれているケースもあるのではないでしょうか。

宇川)実際に、DXのための予算を確保し、組織もつくったけれど、どこから手をつけたらいいのか分からないというお客さまがいらっしゃいます。バリューチェーンのそれぞれの段階のデジタル化から着手して、企業価値の向上にまでつなげていくためには、やはり何かよりどころとなるような事例やシナリオが必要でしょう。

そこでまず、私たちは2018年から日立グループでの取り組みを通じて実証を重ねることにしました。その際に活用しているのが「VC*ナビ」という営業支援のためのタブレット上のWebツールで、産業分野の場合には、バリューチェーンに紐づいた48のシナリオをご用意して、お客さまとWeb画面を共有しながら課題を整理していきます。

*
バリューチェーン

ここでお客さまのお困りごとを見つけ出すのに役立つのが、私たちが1ページサービスとしてまとめた「ショーケース」(実際の課題解決の事例)です。これは、1枚のシートのなかで、どういうお困りごとを、どのように解決したのかをビフォー/アフターで表現し、解決した課題と得られた効果を簡潔に示した図表になります。すでに228件(2021年12月時点)のショーケースを積み上げ、うち166については、より多くのお客さまにご活用いただくために、日立製作所のLumadaのユースケースとしても登録しています。

そのなかには例えば、統合資産管理(EAM)システムを活用した予備品管理の最適化により、部品の在庫数が把握できるようになって棚卸しの工数を83%も減少したケースや、プロセス製造業の生産設備稼働監視により、運転データから異常を検知してプラントの予期せぬ停止を半減したケースなどが含まれます。そのほかにも、海外の大型農業機器に対する保守技術について、熟練工の方たちの動きを動画に撮って分析し、どういう場面でどういう工具を使うのかといったことを、3Dで作成した訓練システムとしてご提案したケースなど、多数の事例があります。こうしたさまざまな課題解決の実証を、ショーケースとして一覧できるため、お客さまはそのなかから類似ケースを探し出し、これを適用できるというわけです。

また、ショーケースの組み合わせマップを用意し、製造業であれば、欧州で提唱されたIoTモデルに示される「機器・センサー」「制御系」「実行系」「経営・管理」という4つの階層別に、各ショーケースと商材をマッピングして一覧できるようにしています。このなかには、日立システムズの製品・サービスだけでなく、日立グループの製品も含まれていて、お客さまのご要望に即した適切なソリューションを素早くご提供できるように準備しているのです。

製造業のショーケースを視覚的に判断できるように工夫 - ショーケース組合せマップ
※図内の「SC」はショーケースの略です。

――1つのショーケースをさまざまなお客さまへ素早く導入して、横展開することが可能なのですね。

宇川)そうです。複数のお客さまへ展開できるだけでなく、お客さまの工場や事業所単位で横展開を図ることも可能です。実際にある大企業の場合、これまでお付き合いのあったIT部門を通じて、経営企画部から各工場長をご紹介いただいてショーケースをお見せしながらプレゼンをさせていただいたところ、各工場に共通する課題が見つかり、効率的に最適解へ導くことができました。ショーケースを見れば、ビフォー/アフターと効果が一目でパッと分かるので、事前にPoC(概念実証)を実施するまでもなく導入の検討ができる点も、時間・コストの両面でお客さまにとって大きなメリットになります。

一方、それぞれの事例を掘り下げ、シート1枚に重要なポイントを落とし込んでショーケースとしてまとめるのは容易ではありません。ポイントがズレていたり、効果が明確でなければ、お客さまに共感していただくことは難しいからです。

そこでわれわれが注力しているのが、ショーケースの作成をはじめ、お客さまとの協創により、現場のデジタル化から企業価値創造(DX)へと導くアプローチ手法に長けた人財の育成です。さらに、このアプローチ手法を実践できる人財を育てるための教育プログラムも開発しました。これをまずは日立システムズグループ内で展開してDX人財を増やすとともに、ここで得た評価と実績を踏まえて、日立グループ内へ向けて教育プログラムをサービス化しました。

各プロセスのデジタライゼーションを全社的なDXへとつなげて深化させていくためには、単にシナリオやショーケースを示すだけでは不十分です。お客さまの企業のDX人財も育てながら、DXを加速させるために経営戦略にまで踏み込んで協創していくことが肝要です。この取り組みはまさに、日立グループが展開するLumada事業の一環であり、グループ全体でDX人財の育成に努めているところです。

このように、われわれ日立システムズのデジタライゼーション事業は、実績に基づくショーケースを数多く持つことと、スピーディーにDXを可能にする人財育成まで含めたエコシステム*構築のための方法論を備えていることが、大きな強みと言えるでしょう。

*
生態系の意味で、ビジネスにおいては、同じ業界、または別の業界の複数の企業が協業して、それぞれのプロダクトやサービスを連携させることで、社会や顧客の課題を解きながら、収益につなげていく社会ネットワークのこと。

公共、社会、金融、産業(医療を含む)など、
さまざまな分野で「OT」と「IT」を融合した取り組みを展開

――デジタライゼーション事業について、具体的にはどのような取り組みをしているのでしょうか。

宇川)複雑化する現代社会では、「OT(制御・運用技術)」だけでも「IT」だけでも解決できないことに加え、業種を跨るような課題が増えています。例えば、カーボンニュートラルを実現するためには、エネルギーの供給者や需要者だけでなく、金融業も融資先のグリーン化(脱炭素)を先導しなければならない立場となっています。また大規模な構造物を建設するゼネコンでは、建設現場における作業員の身体情報や位置情報の管理が工事計画の要になっていますし、金属加工や化学などの製造現場では、溶接技術やプロセス制御の技術の伝承にITを活用できないか知恵を絞っている状況です。さらには、ビル事業者であれば、不動産価値を向上させるために、デジタル技術を駆使して人流を把握・制御することで、共用施設の使い勝手の向上を図っています。このように非常に多岐にわたる分野で、OTとITの融合による課題解決に取り組んでいるところです。

なかでもコロナ禍で露呈したように、自治体のDXは喫緊の課題です。そうしたなか国は「スーパーシティ構想」を掲げ、各自治体において行政手続きや移動、物流、医療・介護、教育、防災などの幅広い分野にAIやビッグデータを活用した先端的サービスを提供して利便性を向上し、住民参画による未来社会を築くことをめざしています。

この構想では行政手続きをはじめ9つの先端的サービスが掲げられていますが、日立システムズはこのすべてに関わるべく、チームを編成して取り組んでいるところです。例えば、住民の方が窓口に来なくても手続きできるシステムの構築、自治体職員も在宅勤務で公共サービスが提供できる仕組みづくり、下水の水位管理による災害予兆・減災への貢献などを手がけています。また、今後はすべての自治体サービスを共通的な基盤である「ガバメントクラウド」上で提供していかなければならない時代であり、2025年までにクラウドにシフトできるよう、その開発にも注力しているところです。

そのほか、地域を活性化させてより暮らしやすい生活環境をつくるためには、遠隔医療や健康管理、子育て支援、MaaS(マース:Mobility as a Service)、観光などにも、デジタライゼーションの余地がたくさんあります。

こうした背景のもと、日立システムズでは、2020年より社員の健康をテーマに、「健康経営の推進」に取り組んできました。ここで、22年度に導入検討しているのが、東京大学センター・オブ・イノベーション(COI)が開発した健康予測システム「MIRAMED(ミラメド)」です。これは、健康診断の結果を入力して自分のからだの状態を可視化し、行動変容を促すというアプリケーションです。日立システムズでは従業員に対して、MIRAMEDで自身の健康状態を把握して健康意識を高めてもらい、受診勧奨が必要な従業員には2021年11月より、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)に蓄積された日々の健康データを医師に共有し、効率的に受診できるオンライン診療を試験的に開始しました。

医薬ヘルスケア図

また、健康・未病の方には、日立製作所で実証された、リストバンド型のセンサーと生活リズムを記録できる携帯用アプリケーションを活用して、活動量や睡眠の状態などを分析する「コンディショニングマネジメントシステム(CMS)」を、22年度に日立システムズでも導入していきます。これにより、社員一人ひとりの健康状態を把握して、健康経営を強化していきます。こうした実証をベースに、今後はMIRAMEDに、AIによるリコメンド機能(AIアバター)を搭載するなど、利用しやすいユーザーインタフェースを備えた健康支援サービスとして、各自治体などに展開していきます。

また、ヘルスケアや医薬に関しては、医療・ヘルスケアプラットフォームの構築にも取り組んでいます。例えば医薬品のサプライチェーンをデジタル基盤で結んで、製薬会社から医薬品卸、医療機関、調剤薬局、患者さままでをつなぐような、法規制の要件を取り込んだクラウド環境の整備を進めているところです。こうした取り組みを通じて、年間四十数兆円にもなる国民医療費の削減に貢献していきたいと考えています。

なおこうした取り組みでは、従来のような数年越しの大規模システム開発ではなく、短期間で仮システムまで立ち上げるような「スピードを実現する回転率の高いアジャイル」と「シンプル化」が肝になります。そのために、各法規制に準拠したAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)などをはじめとするメジャーなパブリッククラウドをうまく活用しながら、標準化も意識しつつ取り組んでいく。これにより、業種や業界を超えたエコシステムを素早く実現していきます。

副社長執行役員 宇川 祐行

パートナリング(協創)により、
共存共栄のエコシステムを築きたい

――今後は2024年までの中期経営計画を踏まえて、日立グループとのさらなる連携を強化されていくということですが、どのような未来社会を築いていきたいのか、展望をお聞かせください。

宇川)事業の柱に共通するのが、1)デジタライゼーション、2)モダナイゼーション、3)マネージドサービスで、いずれもわれわれの強みであるデジタル技術です。

これらの3つの事業について詳細を説明いたします。
1)のデジタライゼーション事業についてはさらに拡大していくというのが大きな目標になります。

さらに、2025年の崖ということばをお聞きになったことがあると思いますが、老朽化や複雑化、ブラックボックス化した既存の基幹システムを、2)のモダナイゼーションによって新しいシステムへ更新していくことも、日立システムズの大きな使命です。その際に、日立の計画最適化サービスである「Hitachi AI Technology/MLCP(Machine Learning Constraint Programming)」などを使って、従来の冗長なプロセスを分析し、最適化により計画を高速に立案していく手法は高い評価をいただいています。

さらに、3)のマネージドサービスは、ビッグデータを蓄積して可視化できる処理基盤を構築し、30年にわたり培ってきたデータセンター運用の実績とノウハウをもとに、監視・運用・セキュリティ対策などの支援を強化していきます。

今後の社会や産業は、各業種間の垣根がさらになくなり、技術面においても、OTとITの区分点が融合して、計画から実行までの時間軸がどんどん短くなっていくと見ています。そうしたなかで、日立システムズは、公共・社会、金融、産業グループと、それらをデジタルで横串に通すビジネスクラウドサービス事業グループが一丸となって、さらには日立グループとの連携を強化することで “Scale by Digital” (デジタル技術による伸長)を実現していきたいと考えています。このときに、2024年と言わず、2027年の次々期中期経営計画からバックキャストするかたちで、今やるべきことを実行していかなければなりません。

そうしたもののなかには、災害時に、地中に埋設されたガス管、水道管、電話回線などのインフラ網の機能をセンサーで確認して、デジタルで管制するといった「国土強靭化」の施策など、極めて公共性の高い取り組みも多く含まれています。パートナーとの協創により、社会課題をはじめ、社会・環境・経済のそれぞれの価値創出に寄与する取り組みを行っていく所存です。

私自身は、これまで仕事の信条として、「CS(Customer Satisfaction:顧客の満足度)」、すなわちお客さま第一主義を貫いてきました。また、「ES(Employee Satisfaction:従業員の満足度)と「Profit(お客さまと分かち合う利益)」、すなわち顧客と私たちに利益をもたらすエコシステムこそが、ビジネスを展開していくうえでは不可欠だと考えています。SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に代表される社会課題を解決に導き、持続可能な社会を築き、そのなかで生き抜くというのは、決して1社だけでできることではありません。これからも自らの信条を大切にしながら、パートナリング(協創)によって、国内のみならず海外も含めて互いに利益を共有し、共存共栄を図っていきたい。これこそが日立システムズのミッションだと考えています。

  • * 本内容は2022年2月時点の情報です。
    本ページに記載の情報は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。

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