カーボンニュートラルお悩み相談室は、カーボンニュートラルやGX(グリーントランスフォーメーション)に関するお悩み・お困りごとに、専門家がアドバイスをするQ&Aコンテンツです。回答を通じて皆さまの脱炭素経営をバックアップします。
今年からサスティナビリティ担当になった入社2年目の可児 裕(かにゆう)・通称「か~にゅ~」が、皆さまのアシスタントとして疑問・質問を一緒に解決します!
今回は、GHG排出量算定に使用するシステムに関するお悩みをご紹介します。回答するのは日立システムズの田熊なつ子です。
株式会社日立システムズ
金融DX事業部 第一本部 プロセスマイニングサービス部 第二グループ
技師 田熊なつ子
* カーボンニュートラルお悩み相談室では、読者の皆さまからの疑問・質問を募集しています。詳しくは本記事の最後をご覧ください。
温室効果ガス(以下、GHG)排出量算定の実務を担当する部下から、GHG排出量算定・可視化システムを導入したいと相談を受けました。私としてはExcelでなんとか代用できるのではないかと思っているのですが、やはりExcelじゃダメでしょうか?
(運送業・Aさん)
GHG排出量算定に使用するシステムについての質問をいただきました。あの、そもそも話で恐縮なんですけど、GHG排出量算定・可視化システムって一体どんなシステムですか?
GHG排出量算定・可視化システムは、企業やサプライチェーン全体のGHG排出量を算定することに特化したシステムです。必要なデータを投入すると、GHG排出量を算定してくれるだけでなく、それをグラフとして可視化したり、削減目標達成のためのシミュレーションや分析を行ってくれるものもあります。
へえー!GHG排出量算定に特化したシステムがすでに世の中にあるんですね。知りませんでした。
結論から言いますと、ExcelではGHG排出量の算定ができない、ということはありません。しかし、GHG排出量算定・可視化システムを利用すると、特化したシステムならではのメリットが数多く得られますので、本格的にGHG排出量削減に取り組む企業はシステム投資を検討すべきと思います。
例えばですが、決算書などの財務諸表を作成するのに、ほとんどの企業はExcelではなく財務会計システムを使っていますよね? これと同じように、GHG排出量算定も専用システムを使うことで、ミスなく効率的に算定作業を行うことができるのです。
なるほど。では、GHG排出量算定・可視化システムには具体的にどんなメリットがあるんですか?
Excelでは実現できない、システムならではのメリットをご紹介しましょう。
GHG排出量は「活動量×排出原単位(排出係数)」の計算式で求めます。排出原単位には膨大な種類があることに加えて、その数値が頻繁に更新されています。GHG排出量算定・可視化システムは、常に最新の排出原単位をシステムに取り込んでくれるので、古い排出原単位で計算してしまうことがありません。Excelで計算を行う場合、最新の排出原単位データを自分で収集しなければならないので、非常に手間がかかると思います。
GHG排出量を求める計算式には、「簡易的に行えるけど算定精度が低いもの」から「手間はかかるけど算定精度が高いもの」まで、さまざまな計算式があります。GHG排出量算定・可視化システムは計算式のライブラリを備えているので、ユーザーはその中から自社にふさわしい計算式を選んで利用することができます。GHG排出量算定では、少しずつ算定精度の高い計算式へとステップアップしていくことが理想とされていますが、システムを利用することで、別の計算式を利用する時にもミスなく正しい計算を行うことができます。
GHG排出量算定に使う排出原単位は国によって異なります。海外拠点のGHG排出量算定を行う場合、その国で認められている排出原単位データセットを利用しなければなりません。GHG排出量算定・可視化システムの中には、世界各国の排出原単位データセットを備えた製品もあるので、そういったものを利用すれば、海外に複数の拠点を持つグローバル企業もスムーズにGHG排出量算定を行うことができます。
Scope3のGHG排出量算定を行う場合、社内の各部署や子会社、関連会社、サプライチェーンに属する取引先企業などから、GHG排出量算定に使用するデータを収集する必要があります。GHG排出量算定・可視化システムの中には、クラウド経由で簡単に関係者からデータ収集ができる機能を持つ製品もあるので、そういった製品を利用すればScope3のGHG排出量算定を効率的に行えます。
GHG排出量算定の取り組みがある程度定着すると、今度は「いかにしてGHG排出量を削減するか?」という視点に切り替わります。その時に大きな効果を発揮するのが可視化・分析・シミュレーション機能です。システムを使い、GHG排出量が多いScopeやカテゴリを視覚的に明らかにすることで、削減手段の検討がスムーズになります。また、GHG排出量の削減目標を設定することで、現状と目標の乖離を可視化できるので、削減目標の達成により近づくことができます。
GHG排出量算定は1度行ったら終わりというものではありません。5年前、10年前と比べてGHG排出量がどれぐらい減ったかなどのモニタリングを行いながら、長期スパンでGHG削減目標を達成していくものです。GHG排出量算定・可視化システムはExcelと比べて経年比較がしやすいので、GHG削減目標の達成により近づきます。また、過去データはどのような計算式で、どのような排出原単位を使って算定したかなどのエビデンスが残せるため、データの信ぴょう性も向上します。
GHG排出量算定・可視化システムにはメリットがたくさんあるんですね。
冒頭にも申し上げましたが、Excelを使ってはGHG排出量算定ができない、ということはありません。しかしExcelには、最新の排出原単位を取り揃えてくれるようなデータベース機能がありませんし、経年比較などの分析・シミュレーションにもかなりの手間がかかります。カーボンニュートラルの推進をコミットしている企業は、推進のためのプラットフォームとして、GHG排出量算定・可視化システムへの投資検討を行ってもよいのではないかと思います。
田熊先生、わかりやすいご説明ありがとうございました!今回の学びを最後にまとめておきます。
脱炭素経営の実現に向けて、これからもたくさんの質問にお答えします。次回もお楽しみに!
日立システムズは、GHG排出量算定・可視化システムとして、炭素会計プラットフォームサービス「Persefoni(パーセフォニ)」を提供しています。「Persefoni」は、本記事でご紹介したGHG排出量算定・可視化システムのメリットをすべて機能として搭載しています。ご興味のある方は、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。
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