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講演レポート
株式会社アスコム
取締役
柿内 尚文
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1968年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学文学部卒業。株式会社読売広告社を経て出版業界に転職。現在、株式会社アスコム取締役。長年、雑誌と書籍の編集に携わり、これまで企画した書籍やムックの累計発行部数は1000万部以上、10万部を超えるベストセラーは50冊以上に及ぶ。現在は本の編集だけでなく、編集という手法を活用した企業のマーケティングや事業構築、商品開発のサポート、セミナーや講演など多岐にわたり活動。著書『パン屋ではおにぎりを売れ』『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(かんき出版)はともにベストセラーに。
会議などでアイデアが出ない、そんなことはありませんか。今回、株式会社アスコムの柿内尚文氏に、編集者として培った「考える技術」を軸にマーケティングや商品開発にすぐに活かしていける思考法をご紹介いただきました。「考える技術」は、誰でも学び・実践できること。ベストセラー『パン屋ではおにぎりを売れ』に書かれた内容をベースに、課題解決のためのアイデア出し、価値創造、「伝わる技術」など、すぐに使えるメソッドの講演を行いました。
「考える」を改めて考える。「考える」の構造を4つにまとめ、そしてプロセスを3段階に分け、あらゆる課題解決に向けた思考法のフレームワークを紹介されました。普段のコミュニケーションから仕事に生きてくる内容まで、さまざまな実例をベースに新しいアイデアや価値を創造する問題解決力を学ぶ内容が詰まっていました。
「考える技術」を身につけると得られるもの
「考える」は技術なので、「クリエイティブな人にしかできない思考法」ではないと言います。「考える技術」を身につけることで、誰にでもアイデアを生み出すことができるようになる。今回の講演会の肝は、ここにありました。
「考える技術」の構造は以下の4つに分けられます。
この4つの構造の相乗効果でつくられていくため、まずは各パターンについてフレームワークを押さえていきます。
▼考えを「深める」
前)「編集者の仕事は、本をつくる仕事です。」
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後)「編集者の仕事は、価値を発見し、磨き、届けることが仕事です。」
(その価値で人の幸せに寄与することがミッションです。)
このように、ある対象(キーワード)に対してより解像度を上げて、考えを「深めて」いくことが課題解決のための入り口になります。
▼考えを「広める」
次に「深めた」考えを軸にしながら、関係する「仕事」で編集の定義を広げていきます。柿内氏自身もキーワードの定義を変えただけで、いろいろなところにチャンスがあることに気づくことができたのだそうです。そして、もうひとつ深いポジション(=潜在的な無意識を見つけたポジション)の創造が、新たな市場を生み出すことにつながるのだといいます。
ロジカルな思考の積み重ねではなく、非論理的な思考から生まれるヒット商品もあります。「論理的」、「非論理的」の思考は分けて考えるべきだと言います。意識的に非論理的な思考をする時間をつくることで、論理的な思考だけでは見えてこない発想が生まれるのです。
非論理的思考から生まれたヒット商品例)「ガリガリ君リッチ コーンポタージュ」、「うんこかん字ドリル」など
「考える」と「思う」、「調べる」を同じものだと捉えている人は意外と多いのだとか。例えば、部下に「○○を考えてきて」とお願いしたとき、「思いつかなかった!」、「○○を調べてきました!」という報告を受けたときのようなことが挙げられます。これでは「考える」の手前で止まっている状態なのです。「考える技術」は、何かしらの仮説を生み出すことができる思考法。なによりも「思う」、「調べる」の次に「考える」を使って言語化し、理解することが「考える」上では大切なのです。
「考える」の3つのプロセス
具体的に「考える」3つのプロセスを使った事例から「考える」の本質を見ていきます。
イノベーティブな商品 福袋の事例
中に入っているものは売れ残ったもので新しいものではないが、新しいイノベーティブな商品を開発した事例です。
続いて、「考える」の3つのプロセスを使うためのハウツーを紹介されました。
1)課題の見つけ方
見えていることではなく、潜在的な不満や喜びを探すことが大切だといいます。言い方を変えると、理屈や論理ではなく「本能」を探す!ことになります。つまり、本能に刺さるかどうかです。
柿内氏のこれまでの編集者としての実感では、売れる企画は頭(論理)ではなく、本能(感情・心)に刺さったもの。あらゆるジャンルで使える課題解決のきっかけを発見するためには、本能を見いだし、理解するプロセスが大事です。
2)考えの磨き方
考えの種(仮説)を見つけたらアイデアの価値を高めていくプロセスです。考えを「広げる」、「深める」の構造をベースに12個の「考える技術」のフレームワークを提案されました。
▼考える技術の広げ方と深め方
今回のレポートでは考えを「広げる」方法から3つ、「深める」方法から2つをご紹介します。
考えを広げる方法1|「かけあわせ法」
「発見した課題」と出会ったことがないキーワードをかけあわせる方法です。「論理的」+「非論理的」に考え(【構造2】)ながら、新しい価値を生み出すことができます。かけあわせる数はいくつでも良く、課題を解決するときは課題解決の方法をかけあわせていくのです。
例)あんぱん、「乳酸菌ショコラ」、「カレーメシ」、「うんこかん字ドリル」、「ガリガリ君リッチ コーンポタージュ」、フルーツ大福、回転ずしなど
考えを広げる方法3|「ずらす法」
目的を達成するために魅力をずらしたり、ターゲットをずらしたり、価値の再定義をする方法。いまあるポジションを発見してから横にずらして、価値を見出していきます。
例)「使い方」をずらす、「機能」をずらすなど
※カギ括弧内には、「発見した課題」を入れる。
考えを広げる方法5|「まとめる法」
『ゆるキャラグランプリ』、『パンフェス』、『葉っぱビジネス』に共通する思考法は、ひとつの共通点でグループにまとめたことです。これを「まとめる法」と呼び、それぞれの価値をひとつのグループにまとめることで新たな価値を生み出す「考える技術」になります。
考えを深める方法3|「自分グッド×あなたグッド×社会グッド」
自分にとって、大切な人にとって、社会にとって価値があることを織り交ぜていくとより伝わりやすい内容になるそうです。世界的に注目されている「三方良し」の近江商人の考え方。持続可能な社会には搾取し合うのではなく、誰にとってもグッドを重ねていくことが新しい価値の創造につながります。
考えを深める方法6|「キャッチコピー法(ネーミング)」
柿内氏が関わった書籍も、タイトルとデザインを変えただけでベストセラーに生まれ変わったものが多くあるのだとか。例えば、手帳に予定を書くときにも、「○○さんアポ」と事実を記載するのではなく、「○○さんと仲良くなることを目的とした会議」のようにゴールに到達するための名前をつけることで価値の見える化が図れます。
最後に、ここまで考えてきた「考える技術」に「伝わる技術」を使い、実践テクニックにつなげていきます。
3)考えの伝え方|Communicate
ある行動を実践するためには、相手と考えを共有する必要になります。しかし、一方的に「伝える」のではなく、双方向に「伝わる」が重要なのだと言います。この「伝わる技術」で大切なことは、伝えたい相手の頭の中に「見える化」させることです。例えば、言葉で説明するだけではなく、言葉で絵を描くように相手の頭の中に伝えたいことを描けたとき、初めて自分の考えが「伝わる」のです。
伝わる技術|フリオチの法則
お笑いで使われる「伝わる技術」。ビフォーを見せることでアフターとのギャップが生まれ、変化が明確になり伝えたいことが伝わるのだといいます。
伝わる技術|ファクトとメンタルの法則
ファクト(事象、事実):■
メンタル(感情):■
ファクトとメンタルをかけあわせると強い言葉(伝わりやすい言葉)ができる。ファクトをしっかりと伝えたいと思ったら、メンタルの言葉を足すことで「心に残る強度」が高まるそうです。これは、日常会話の中でもすぐに使える「伝わる技術」です。
例)吉野家「うまい、やすい、はやい」、ニトリ「お、ねだん以上ニトリ」、チキンラーメン「すぐ
おいしい、すごくおいしい」、「人間は1日に6万回、なにかを考えているという説があるそうです。寝ている時間を除くと、ざっくり1秒に1回は思考していることになります(すごい!)。」など
「考える」ことを改めて考え直し、相手に対して「伝わる」工夫をしていくこと。課題解決のための思考法のエッセンスが凝縮した講演会でした。仕事で壁にぶつかった時に思い返して、「考える技術」をぜひ実践してほしいと思います。数多くの具体的な事例をもとに思考の展開メソッドを紹介された気づきの多いセミナーとなりました。
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