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株式会社 日立システムズ

政府のIT戦略に見るデジタル変革のポイント

【第5回】デジタルデータの利活用が進むことで、国民はどのようなメリットを得られるのか?

世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、経済・社会や私たちの価値観に大きな変容をもたらしました。これまで日本政府は「世界最先端のデジタル国家」になることを掲げ、IT戦略を推進してきました。しかし、コロナ禍でのさまざまな変化を受け、その戦略を見直しています。

本コラムでは、政府が掲げるIT新戦略のポイントを紹介していきます。現在、政府は感染拡大抑制後の経済再興に向けて、ピンチをチャンスに変え、デジタル化を社会変革の原動力とする「デジタル強靱化」を掲げています。
今回は、「デジタル強靱化社会を先導する社会実装」と、コロナの経験から新IT戦略に盛り込まれた視点の1つである、国民の生命を守り経済を再生するための「データ利活用」を取り上げます。

デジタル強靱化社会を先導する「社会実装」の取り組み例

新型コロナウイルスの感染拡大によって、現状の日本が抱えるさまざまな課題が浮き彫りになりました。新IT戦略では、あらゆる分野に共通した社会的課題として「少子高齢化に伴う労働力不足、働き方改革」「国民の利便性向上」「サプライチェーンや各種サービスなどの社会基盤の維持」の3点を挙げています。また、「経済の持続的発展」「新型コロナウイルス対策」「自然災害への対応」の3点を今後重点的に対応する必要があると説いています。

そのため、「デジタル強靱化社会」の実現によって、持続可能な次世代社会基盤の構築・活用を加速化し、各分野におけるメーカーやベンダーの枠を超えてさまざまなデータを連携や分析、活用することで社会的課題を解決していくことをめざしています。さらに、各分野にとどまらず枠を超えて活用可能なデータを、最大限活用することを掲げています。
具体的にどのような社会実装が先導されているのか、見ていきましょう。

健康・医療・福祉

従来の疾病・介護予防に加え、感染予防にも役立つ平時からの健康状態を把握することで、リスクの早期発見・予防を促進する。オンライン診療など、国民の利便性向上と、医療・福祉現場の負担軽減や働き方改革を実現する。

食関連産業

データ駆動型の経営を実現するため、農林水産施策のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する。多様な情報を利活用して、スマートフードチェーンの構築などで食関連産業の安定的かつ持続可能な発展をめざす。

港湾

港湾関連データ連携基盤を活用して企業間の情報連携や作業手配業務を遠隔で実施できる事業環境を整備する。ITを活用し、荷役機械の遠隔操作や非接触業務を導入することで、現場のリスク低減やセキュリティの向上を実現する。データ連携を拡張した「港湾の電子化」を実現する。

信号

5Gエリアの拡大など、新技術を活用した交通信号機によって渋滞の緩和を実現する。防災や安全・安心、介護、産業振興など既存のソリューションを革新する次世代社会システムを構築する。

運転免許

システムの合理化・高度化によって国民の利便性の向上と負担の軽減を図る。共通基盤の構築やシステム集約などで他システムやデータとの連携を強化する。

国民の誰もが「データ利活用」による便益を実感できる社会の実現をめざす

デジタル化がさらに進展すると、多種多様なデータが日々大量に生成されることになります。新IT戦略では、そうしたデータを国民の生命を守ったり、日本経済を再生することに役立てることに注力する方針を掲げています。

従来進められてきたデータ利活用の促進施策に加えて、感染症対策の支援などに官民のデータを活用することが盛り込まれています。個人や法人の権利利益を保護しながら、官民が連携したデータ利活用を促進するための各種制度・環境の整備を進め、国民の誰もが、データ利活用による便益を実感できる社会の実現をめざしています。

新IT戦略におけるデータ利活用では「安全・公正なデジタル市場のルール形成」「円滑なデータ流通に向けた環境整備」「オープンデータのさらなる深化」「シェアリングエコノミーのさらなる推進」が柱となります。

安全・公正なデジタル市場のルール形成では、2019年のG20大阪サミットで各国と合意した「Data Free Flow with Trust(DFFT)」のコンセプトに基づき、国際的なデータ流通の枠組みやルール策定を進めます。また、データ取引の透明性や公正性の向上を図るため、2020年5月に成立した「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(デジタルプラットフォーム取引透明化法)によって、デジタル市場の透明性・公正性の確保に向けて取り組んでいます。

データ流通・利活用環境の整備では、個人データの流通基盤となる「情報銀行」の社会実装の促進やビジネスモデルの国際標準化などの検討を進めています。また、2021年2月には、「個人情報保護法」「行政機関個人情報保護法」「独立行政法人等個人情報保護法」の3つの法律の規定を集約・一体化する改正案が閣議決定されました。さらに、IoTやAIを活用した新たなモビリティサービスの利活用促進に向けた取り組みを進めています。

その他、国民の誰もがインターネットなどを通じて容易に利用できる、公開されたデータである「オープンデータ」について、政府による各種制度整備を充実させることで、「公開」フェーズから「利活用」フェーズへのシフトをめざしています。

シェアリングエコノミーのさらなる推進では、非常時などにおける共創・共助による新たな公共サービスを円滑に提供するため、防災分野を含めたモデル連携協定などにも取り組んでいきます。

次回は、コロナの経験から新IT戦略に盛り込まれた、もう1つの視点である「デジタル・ガバナント」を取り上げます。

※ コラムは筆者の個人的見解であり、日立システムズの公式見解を示すものではありません。

日立システムズは、システムのコンサルティングから構築、導入、運用、そして保守まで、ITライフサイクルの全領域をカバーした真のワンストップサービスを提供します。